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農政:2020年を振り返って

コロナ禍の脅威「ともあれ、私は存在する」 山本太郎 長崎大学熱帯医学研究所教授【特集:2020年を振り返って】2020年12月8日

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山本教授は、今回の新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、社会のあり方や、科学の意味、政治の役割などに対する、考え方や理解の仕方に大きな影響を与え、何より、何を大切なものとしてこの世界を作っていくのか、あるいは来るべき世界を想像すべきなのか、そんな問いかけを私たちに投げかけていると指摘しています。

コンゴ民主共和国で子どもたちと話す山本教授コンゴ民主共和国で子どもたちと話す山本教授

2019年末に突如、中国武漢に出現し、新型コロナウイルスは世界中に伝播した。1年経って明らかになったことは、私たちは、好むと好まざるとにかかわらず、このウイルスと共に生きていかなくてはならないということ。そして、この汎世界的流行(パンデミック)が引き起こした様々な影響を長く社会に内包しながら、これからの世界を考えていく必要があるということだった、と思う。
感染症は戦争や、地震、津波といった自然災害と異なり、私たちが見る日常的風景を変えないが故に、常に忘却の彼方に押しやられてきたという意見がある。しかし、今回の新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、感染症が、私たち人間の社会のあり方や、科学の意味、あるいは政治の役割といったものに対する、私たち自身の考え方、接し方、理解の仕方に大きな影響を与えるということが明らかになった。そして、何より、何を大切なものとして心にそっと抱き、私たちはこの世界を作っていくのか、あるいは来るべき世界を想像すべきなのか、そんな問いかけを今回のパンデミックは私たちに投げかける。

人災や天災が山歩きのきっかけに

そんな時にふと思い出すことがあった。山を歩き始めた頃のことだ。
山を一人歩き始めたのは、2011年初秋のことだった。
2010年1月にハイチで起きた地震で30万人の命が失われた。2003年から4年にかけて、ハイチに1年間滞在して、エイズ研究を行っていたが、最後は、クーデターに押されるようにハイチを後にした。それから6年後のことだった。地震の2日後、日本を出発し5日後から震災後の医療支援を開始した。かつて暮らしていたアパートは全壊し、アパートの前には十数本のローソクが夕闇に揺らいでいた。アパートで亡くなった人の数だと現場の人が教えてくれた。夜、空を見上げた。停電で光を無くした街から見る空には、星が満ちていた。
翌2011年3月には、東日本で地震が起きた。出張中の東京で地震にあった私は、長崎に帰ることなく東北に向かった。地震の後の津波が襲った三陸海岸の街は、跡形もなく破壊されていた。引き続く余震は大地の咆哮のようにも聴こえた。明日が来ることさえ信じられないようななかで、ふと見上げた夜空には、しかし満天の星が輝いていた。それは今までみたどの星空より綺麗だった。破壊され尽くした地上との対比。その事実に震えるような戦慄を覚えた。東北での医療支援はそれから1ヶ月に及んだ。

一人の人間として身を竦めた言葉

山を一人歩くようになったのは、それから半年が過ぎた頃だった。あの星空をもう一度見たいと思ったのが理由だと今となっては、その理由がわかる。一時期は憑かれたように山を歩いた。そうしないと、どこか自分の精神が壊れそうだった。そしてそんな時には、必ず一冊の本を抱えて山に入った。夜、テントのなか、ヘッドライトの光を頼りに本を読んだ。静寂があたりを占めるなかで時間は無限ともいえるほどあった。そんな本の一冊に、クロード・レヴィ=ストロースが書いた『悲しき熱帯』があった。
クロード・レヴィ=ストロースは、フランスの社会人類学者で、構造主義の創始者とされる。1960年代から80年代にかけての思想界で活躍した人物である。構造主義とは、あらゆる考え方あるいは社会のあり方を発展的なものではなく、相対的なものとして捉えようというものである。その本の終わりに近いところで「世界は人間なしに始まったし、人間なしに終わるだろう」という言葉に、当時、出会った。自然の脅威の前に身を竦めた一人の人間として、その言葉が心に沁みた。

こんなことでは決して消えないと確信

2020年、新型コロナウイルス感染症のパンデミックに世界は震撼した。非常事態が宣言された。そんななかで『悲しき熱帯』を再読した。自粛生活のなかで久しぶりに自分の時間がもてたからだ。そしてもう一度あの言葉に出会いたいと思ったからだ。
あった――。人類学者らしく人類学者らしくないその言葉が。
「世界は人間なしに始まったし、人間なしに終わるだろう」
一方で、その時まで心に留めなかった言葉もあった。クロード・レヴィ=ストロースは、そのうえで「ともあれ、私は存在する」と書いていた。そう、私は存在するし、私たちの世界も、こんなことでは決して消えないと、その時思った。2020年の秋のことだった。また、山を歩きたいと思った。そして2021年に想いを馳せたいと。

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