【クローズアップ】カメムシが全国的に大量発生 31都道府県で注意報 果樹・米の被害防止へ早期対応を2022年8月19日
今年は全国的にカメムシが大量発生し、米や果樹など作物への影響が懸念されている。果樹に被害をもたらす果樹カメムシ類や米の品質を低下させる斑点米カメムシ類に関する注意報が発令された地域は31都道府県に上る。果樹カメムシ類はもともと2年に1回の「表年」に増えるが、今年は過去と比較しても発生数が多く、各地の病害虫防除所は、果樹や米の収穫を前に早期対策を呼びかけている。今年の大量発生の背景と改めて注意すべきポイントについて取材した。

果樹カメムシ類の1種「チャバネアオカメムシ」(兵庫県病害虫防除所提供)
昨年の2倍 全国31都道府県で注意報
農水省のまとめた資料によると、今年のカメムシに関する注意報は、5月24日に香川県が果樹カメムシ類について発令したのを皮切りに、同月中に茨城県や奈良県、愛媛県でも同様の注意報を発令。7月以降は斑点米カメムシ類への注意報も相次ぎ、出穂期に備えて北海道や富山県、秋田県などが立て続けに発令した。
最近では兵庫県病害虫防除所が8月12日、果樹カメムシ類の発生が平年を大きく上回っているとして、県内全域に果樹カメムシ病害虫発生予察注意報を出した。今年は果樹カメムシの発生が増える「表年」に当たるが、同県朝来市で誘引装置を使った調査では、過去の表年と比較してチャバネアオカメムシの捕獲数が約5倍に上ったという。
担当者は「6月後半ごろから発生が多いことを把握し、7月8日に『防除情報』を出したが、その後も発生の多い状態が続き、梨などの収穫期を前に本格的に注意していただこうと発令した」と話す。
8月18日までに果樹カメムシ類の注意報は21都府県、斑点米カメムシ類の注意報は15道府県で出され、両方の注意報を発令した自治体は5府県、どちらか一つでも注意報を出した自治体は31都道府県に上り、昨年の2倍に達している。
「表年」に加えて高温少雨も影響か
果樹カメムシ類の発生が増える「表年」は、スギ、ヒノキの豊作と不作の周期とほぼ重なるとされる。カメムシはスギやヒノキの実を主なエサとし、豊作の年は山にとどまるが、不作の年は山を下って果樹園などに飛来してくる。昨年夏は豊作だったため、木の実を吸って成長したカメムシが例年より多く越冬して山を下りてきたことが今年の発生増加の一因とみられる。
さらに今年の天候の影響も指摘されている。果樹カメムシ類と斑点米カメムシ類の両方の注意報を出している山口県農林総合技術センターの溝部信二専門研究員は、今年は梅雨の前から高温であったことに加え、梅雨明けが早く雨が少なかったことも影響しているのではないかと指摘する。「カメムシは気温が高いと活動が活発になり、成長も早くなる。さらに雨が少ないことで病気になりにくいことも例年以上に増えた原因と考えられる」と話す。山口県が5月から6月にかけて予察灯で捕獲した果樹カメムシ類の数は151匹に上り、過去10年間で2番目に多かった。
斑点米は等級落ちの懸念 果樹は実を食われ表面がデコボコに
農作物を荒らすカメムシは数十種類に上り、果樹や米に被害をもたらす。ナシやモモなどの果実全般に付く「果樹カメムシ類」でよく知られているのは、チャバネアオカメムシ、ツヤアオカメムシ、クサギカメムシの3種類。果実などに口針を刺して果汁などを吸い、果実の表面がデコボコになったり、変色したりするため売れにくくなる。収穫時期の早い果樹や熟期の早い品種では、被害の発生も早いので特に注意が必要とされる。
一方、斑点米カメムシ類の場合、地域によって種類が異なるが、比較的小型のアカヒゲホソミドリカスミカメ、アカスジカスミカメ、比較的大型のクモヘリカメムシなどが知られているほか、最近は山口県などでイネカメムシの被害が増えているという。口針で稲の籾を突き刺して養分を吸い、玄米に黒色の斑点ができてしまうため、米の等級が落ちて価格が落ち、生産者の収入減となる恐れがある。大型のイネカメムシの場合、籾の根元を吸ってしまい、米そのものができずに大きな減収になってしまうケースもあるという。
被害を防ぐために 果樹、稲とも早期対応を
カメムシの発生は被害に直結するわけではない。農水省や各都道府県の病害虫防除所は「発生が増えていることへの注意を促すための注意報であり、早期発見、早期対応で被害を防いでほしい」と生産者に呼びかけている。
もっとも、カメムシの早期発見は容易でない面もある。山口県農林総合技術センターの溝部専門研究員によると、カメムシは目がよく、人間が近づくと葉の裏などに隠れてしまうことがあるほか、夜行性で確認しにくい面もあり、「1匹見つけたら相当数いると考えるべき」と話す。
果樹カメムシ類への対策は、早期発見と早期対策がポイントとなる。果樹園に定着してしまうと、集合フェロモンで仲間を呼び寄せるため、飛来初期に薬剤を散布しないと被害が広がる恐れがある。ただし、果樹カメムシ類の発生は山林からの距離など地域や園地によって差が大きく、活動が活発になる夕方に灯火などを定期的に確認し、カメムシ類の飛来を把握することが必要だ。
無袋栽培園では飛来を確認したら速やかに薬剤散布を行い、梨などに袋を被せていても果実が太ると袋に接して実を吸われる恐れがあるので、やはり飛来を確認したら適宜、薬剤散布を行う必要がある。
一方、斑点米カメムシ類は、イネが出穂する前は牧草地や雑草地に生息し,イネが出穂すると水田に侵入するため、まず水田に近寄らせないために、畦畔や休耕田の草刈りの実施が有効とされる。ただし、この作業を行うのは出穂2週間前までとし、逆に出穂後に草刈りをすると、カメムシ類が直接、水田に入ってしまう恐れがあるので避けるべきだとしている。
薬剤防除については、穂揃期と穂揃期の一定期間後(地域によって異なる)に防除することが大切で、カメムシ類は広範囲に移動するので、広域で一斉に防除してほしいと求めている。
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