「育種の方法論が変わる」 抵抗性作物開発の新技術2013年2月27日
岡山県農林水産総合センター生物科学研究所の鳴坂義弘専門研究員らの研究グループは、2つの病害抵抗性遺伝子を組み合わせることで、複数の病原体に対して抵抗性を持つ植物の開発に世界で初めて成功した。
多くの動物は少数の抵抗性遺伝子を組み合わせることで多種多様な病原体への抵抗性を獲得しているが、一方、植物は1つの病原体に1つの遺伝子が対応しているという「遺伝子対遺伝子説」が主流だった。
しかし今回、鳴坂氏らの研究グループは、植物の病原体に対する抵抗性獲得のメカニズムも、動物と同様、少数の抵抗性遺伝子の組み合わせによることを解明。また、この遺伝子は、生物分類上の「科」を超えても機能を発揮することが明らかになった。生物分類は大きい方から目→科→属→種の順となっている。科が異なれば相当な遠縁であり、抵抗性遺伝子が機能しないとされていた。
具体的には、ナス科のトマト、タバコ、アブラナ科のナタネ、コマツナ、ウリ科のキュウリに、それぞれ単一では抵抗性を発揮しないアブラナ科のシロイヌナズナが持つ2つの抵抗性遺伝子を導入したところ、同時に3つの病原体(青枯病、斑葉細菌病、炭疽病)への抵抗性を持つ作物が生まれた。
この2つの遺伝子は、単独で導入しても抵抗性を獲得できなかったり、仮に抵抗性があっても植物が矮小化するなどの生育障害をもたらす遺伝子だったが、この2つを組み合わせることで、複数の耐病性を持つ植物になった。
鳴坂氏はこの発見で「育種の方法論が大きく変わる」と期待している。
というのも、これまでの耐病性品種の育種は、病原体への抵抗性を持つ品種の中から優性の抵抗性遺伝子を1つ見つけて、それを作物に導入するという方法が主流だった。しかし、この発見によって、これまで育種に利用できなった病気への感受性が高い品種でも、それを交雑させることで、複数の耐病性を持つ品種の育種ができることがわかったからだ。
さらに、植物の抵抗性獲得のメカニズムをより正確に解明することで、より効率的な抵抗性誘導剤(プラントアクティベーター)が開発できるとして、「新しい病害防除剤の開発にも貢献できる」と期待を寄せている。
この研究成果は、2月21日付の米国オンライン科学誌「PLOS ONE」に掲載された。
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