生産資材:シリーズ
【動き始めたバイオスティミュラント】(1)アクプランタ社長の金鍾明氏に聞く 科学的に作用を説明できる資材こそBSに2025年6月9日
日本におけるバイオスティミュラント(BS)の定義は、欧米を参考にした農水省「バイオスティミュラントの表示等に係るガイドライン」(GL)によってある程度は固まり、製品の表示に係る効果の根拠となる情報の確認方法も示された。しかし、どの成分が何に効果があるのか、どのように使用すれば効果が上がるか、といった具体的な検証は課題として残されている。こうした情報はBS資材を利用する農家にとっては必要不可欠だ。そこで、研究者であり、自社でもBS資材「スキーポン」を開発した、アグリバイオスタートアップ、アクプランタ(東京)社長の金鍾明氏に解説していただいた。同社は国内のほか、米国やウガンダなど海外も実証実験を進めている。
アクプランタ社長の金鍾明氏
生き物を刺激して効率よく生理機能を活性化する
――まず、バイオスティミュラント(BS)とは。
言葉から分かるように、「内外から生き物(バイオ)を刺激(スティミュレイト)することによって、効率よく生物の生理機能を活性化できる資材」の全般がBSだと考えられています。植物であれば、環境ストレスに耐性がついたり、成長を良くしたりすることで収量が上がる、などの効果が期待できます。
生理活性を高める物質が分かっているものも、いないものもあります。植物の体内にあるものもあれば、植物以外の生物から採れたもの、ミネラル群のように鉱物などから採れるものもあります。また、化学的な処理や工業上の反応過程の途中で生成した成分を与えて、たまたま植物が元気になったというものもあります。今のところ、ポジティブな効果をもたらすというものはすべてBSの枠組みに入っており、広く捉えられています。
――肥料や農薬との違いは。
一部のBSに含まれるタンパク質を分解したアミノ酸や、イオン成分、ミネラルは昔から肥料的に使っています。一方、植物の免疫を高めて病気が治ると謳うBS資材もありますが、BSは直接病気(感染症)を治す抗体ではありません。植物の病気に対しては、元気になることをサポートすることがBSの主な効果と考えられます。害虫やバクテリアを殺すことで植物が元気になるような効果があれば、それは農薬です。
――基準作りが難しい。
現状、EU(欧州連合)の定義が最も受け入れられやすいと考えます。肥料のような資材がカテゴリーに入っているイメージですが、そればかりでもありません。生物を刺激して活性化する科学的なメカニズムが必ずあるはずですが、実際に刺激されていることを科学的に作用メカニズムのレベルで証明されているものはほとんどありません。しかし、農家は、それよりも実際に作物が元気になったり、収量上がるだけでも十分に刺激していると捉えるでしょう。国内では農水省がBSのガイドラインを策定したので、基準の明確化に期待しています。
アクプランタが自社で運営する「鎌田圃場」
生物学的な効果や現象を説明できるか
――効果の解析が進まない理由は。
鉄や酢酸は単体でも効果がわかるので、解析しやすい方だと考えます。しかしながら、一般的に生体内から成分を抽出して物質を明らかにするには相当な努力が必要です。海藻を原料とするBSや腐食酸などは、多くの雑成分が資材の中に含まれていて、有効成分の分解・分離が難しくて研究も進んでいません。一方で、メーカー側はそこまでやらなくとも効果があるなら販売したい、というロジックが先に立っているようにも感じます。また、研究成果を待っていると産業や業界が育たない。害が出ずに使えて、ある程度の効果があれば、最低限良いのではという考えも社会的にはあるでしょう。
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