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2017.07.21 
【寄稿・種子法廃止】種子は食の根源 パルシステム 山本顧問一覧へ

協同組合連携で守ろう

 種子(たね)は食料の大本である。その種子が大手グローバル企業に支配される恐れが出てきた。先の国会で成立した主要農産物の種子法廃止は、「食」に責任を持つJAにとっても看過できない問題である。発起人として「日本の種子を守る会」結成を呼びかけたパルシステム生活協同組合連合会顧問の山本伸司氏に寄稿してもらった。

山本伸司・パルシステム生協連合会顧問 私たちパルシステムは、首都圏中心に11都県で活動する生協の連合会です。産直をメインに国内農産物と食品を80万世帯に約2100億円の供給(2016年度)を行なっています。その生協の安全で顔の見える産直が危機にさらされようとしています。それが今回の主要農作物種子法(種子法)の廃止です。
 今年の2月10日に安倍政権が種子法廃止を閣議決定してからあっという間に廃止法案が成立してしまいました。3月23日衆議院農林水産委員会で可決、28日衆議院本会議可決、4月13日参議院農林水産委員会、14日に参議院本会議可決、21日廃止法交付と、なんと5週間ほどの議論で一気呵成に廃止が決定されています。重大な問題であるにも関わらずマスコミにはほとんど報道されないままで、多くの国民には寝耳に水の状態でした。
 この種子法の成立は1952年。ちょうど敗戦国日本がサンフランシスコ講和條約によって国の主権を回復した翌年のこと。米、麦、大豆など「主要農作物の優良な種子の生産及び普及の促進」を都道府県に義務付けています。こうして戦後の都道府県の種子圃場の確保と生産がそこからスタートしました。その根拠法が廃止されたのです。
 今回の廃止の趣旨について、農林水産省はこの法律が、「地方公共団体中心のシステムで、民間の品種開発意欲を阻害している」として廃止の目的を民間参入の促進と明記しているのです。
 ではその民間とは誰か。今でも民間企業の種子開発は行われています。しかし実はあのモンサント社は住友化学と、ほかにも三井化学などが多国籍企業と組んで稲の品種開発を終えています。これが高額すぎて、使う人はごく限られている状態だといいます。彼らは、都道府県の優良品種と奨励品種の生産体制がこれらの企業にとって競争条件を阻害していると主張します。都道府県の生産体制が弱体化すればその先は見えています。
 いま都道府県では、お米をはじめ、その土地にあった品種開発とそのブランド化によって価値を高め、消費者に選んでもらうための競争が行われています。北海道では「きらら397」から始まったお米の優良品種が高い評価を受け、多くのブランド米を世に送り出しています。
 私は10年前から農林水産省の補助事業として日本各地の伝統食品を発掘し、ブランド化する事業に関わっています。地域伝統食品「本場の本物」ブランドです。いまヨーロッパ、とりわけフランスで商品が販売され、高い評価を受けています。アジアでは、台湾で販売が始まるなどニーズは高まっています。この日本産食品のブランドは、原料となる農作物の種子がなければ話になりません。顔が見え、原料や製法にこだわった食べ物の生産は、危機を迎えることになります。
 私は現在、鹿児島県の種子島に住んでいます。種子法の対象ではありませんが昨年と今年、玉ねぎとジャガイモのタネ不足が深刻となり、作付けをあきらめざるを得ない生産者が続出しました。北海道を襲った台風や長雨の影響が全国に波及したのです。農業は種子がなければ始まりません。
 パルシステムを始め生協では、国産大豆の豆腐や内麦のうどん、パンの供給を行なっています。そのためにも、お米だけでなくこれらの大豆、小麦の種子開発と保存は不可欠です。それが多国籍企業の遺伝子組み換え種子の占有になるかもしれないと思うと背筋が寒くなります。
 すでにメキシコのトウモロコシの例が典型です。メキシコは、主食のトルティーヤなど多くの食品でトウモロコシを原料としています。かつては各地で個性的な7000種もの品種が栽培され自給されていました。それが北米自由貿易協定(NAFTA)によって一気にモンサントのトウモロコシに占有され、農業が破壊されました。その結果、村を離れやむなくアメリカへ流れる移民が発生しました。
 またその移民がカリフォルニアなどの大規模農業の無権利労働者となっていることは広く知られています。そして白人労働者は賃金の低い労働力に押し出され、失業が増大しています。こうして貧富の格差が増大...。このメキシコの悲劇が日本でも起こる。いま自給されているお米が同じような道をたどらないとは誰も言い切れません。
 では、来年4月に種子法が廃止されることが決まったいま、私たちに何ができるか。まだ遅くはありません。まずは種子法廃止の持つ意味を全国各地に知らせることが必要です。今月3日に結成された「日本の種子を守る会」では多くの国民に知ってもらうためのパンフレットを作成し、各地での学習会を呼びかけています。全国的に関心も高く、さまざまな動きが始まっています。そして理解を深めたうえで、各都道府県の議会や知事に意見を出し、主要農作物の種子を守る決議を行う必要があります。議員立法であらためて国内の種子を守る法律の制定を行おうと準備しています。
 日本の敗戦を前に、当時の軍事政権が民俗学者の宮本常一氏を招き、密かに日本を存続させる道を探ったと言われています。それは農業と農村を守ること、軍隊と武器では守れない、食と農こそ心豊かな日本を守ることだと確認したと言われています。美しい日本の農村景観を、金銭のみの市場原理で貧富の差を拡大させる多国籍企業の動きから守りましょう。生産者と消費者が手を携えて日本の種子を守り、農と食を守る全国運動への理解と参加をお願いします。

(写真)山本伸司・パルシステム生協連合会顧問

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