TPPで日本はアジアの文明破壊の加害者になる2013年9月9日
TPP交渉が秘密裡に行われている。なぜ秘密なのか。なにを隠しているのか。
そもそも、アメリカ政府が熱心なのはなぜか。アジア太平洋地域の経済を牛耳ろうとしているからだ。それは、アメリカを原籍にし、アメリカ政府に強い政治的影響力をもつグローバル資本の利益を代弁している。
日本政府も熱心だ。それは、日本を原籍にし、日本政府に強い影響力をもつグローバル資本、つまり、日本財界の利益を代弁している。
日本はアメリカといっしょになって、この地域に進出したいのだ。この点で、両者の利害は一致している。この地域をグローバル資本の新たな搾取の場として開拓したいのだ。そこに日本の進路がある、と考えている。だから、日米が共同歩調でTPPを推進している。
では、なぜ秘密なのか。国民に知られたら反対されると考えているからだ、と思うしかない。そうした反国民的な交渉だから秘密にしている、と推測するしかない。
秘密にするのは、グローバル資本が、その利益の追求のためなら、自国の国民の利益をそこねてもいい、という反国民的な考えで交渉を進めているからだ。
当面は、アジア各国の経済制度を取り上げ、資本の進出の障害になるものを全て破壊し、グローバル・スタンダードという名前で、アメリカ基準を押し付ける。
経済制度は文明の最も基盤的な部分である。その破壊は、やがて悠久の歴史をもつアジア文明を破壊して、アジアをアメリカ化する。人の心も破壊する。
その中には日本も含まれる。日本固有の文化を破壊して、アメリカ化するのだ。そのことを日本の財界は意に介さない。それどころか、それが国益だと歓迎している。だが、それは財界だけの利益である。国民の利益ではない。
◇
これまで、日本の財界は、この地域への資本進出には多くの制度的な障害がある、とぼやき続けてきた。これを解決するのがTPPだ、と考えている。
この問題を一挙に解決し、グローバル資本の進出を援護する法制度が、TPPに含まれるISD条項である。障害を裁判にかけて取り除く制度だ。
ISDでは、資本の進出の障害になる制度を、アメリカの息がかかった国際裁判所に訴えることができる。その制度が障害になって、得られなかった利益分の賠償を要求できる。訴訟の相手は、その制度を作った国、つまり、進出した国の政府である。
こうして、グローバル資本は、進出した国の制度を意のままに作り代えることができる。その国の政府は受け入れるしかない。まさに国家主権の侵害である。
実際に、メキシコなどは、多額の賠償金を払わされた。そして、農業は破壊されつつある。
◇
日本の政府は、そんな心配はない、といっている。
これまで、日本が結んだ自由貿易協定のなかにもISDが含まれているが、実際に訴訟を起こしたことはない、と言っている。
だが、今後も訴訟を起こさない、とは言っていない。外国はISD訴訟を起こさないし、日本も起こさない、とは言っていない。メキシコを見よ。韓国を見よ。
◇
日本は、TPPでアジアの文明破壊の加害者になろうとしている。その第1の手段が、ISDを使った経済制度の破壊である。まずは、グローバル資本が進出するために障害となる制度を破壊する。そして、やがてアジア文明を破壊し、アメリカ化する。
国内では、いわれなき農協攻撃が、すでに始まっている。アジア的な共同社会のなかで、先人たちが営々と築き上げた農協という文化を破壊しようとしている。
これは、資本が農業という新しい分野へ進出するのに、農協が障害になる、だから破壊する、というものである。
この攻撃は、赤ひげ先生たちの医師会への攻撃とともに、TPP反対の勢力への陰湿な意趣返しでもある。
われわれは、座視するわけにはいかない。TPP反対を叫びつづけねばならない。
(前回 TPPの甘い交渉)
(前々回 院外活動で政界再編を)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日