【リレー談話室・JAの現場から】10年後を見据えて2016年3月31日
久慈宗悦岩手県・JAいわて中央代表理事専務
5年前の3月11日午後2時46分、マグニチュード9.0の東日本大地震。この地震による大津波の襲来で、東北地方の沿岸地域に甚大な災害が発生した。JAでは直ちに組合員から「白米1戸1升運動」を行い、集めた白米を車に積んで沿岸部の山田町へ向かった。この時に見た跡形もない街並みの光景は、今でも鮮明に脳裏に焼き付いている。
本年2月4日、TPP参加12カ国はニュージーランドで協定書に署名した。日本政府は主要5品目の聖域を守るとしながらも81%は関税を撤廃。批准はこれからとしても、政府はTPP対策を予算化するなど、暗に批准を認めたごとく進めている現状は、経済の更なるグローバル化という波が攻め寄せようとしている。
昨年3月「新たな食料・農業・農村基本計画」が閣議決定され、10年後の目標として農業就業者必要数は計90万人で、法人経営体5万法人を掲げている。平成27年基幹的農業従事者数177万人から鑑みると、この数に入らない約半数の農業従事者はどうなるのか。10年後までに国内の農政改革という次の波がやってくるともいえる。
さらに、農業改革としながらJA改革に真っ先に取り組む政府のあり方にも疑問を感じる。戦後の農業政策やこれまでに食糧の安定供給に寄与してきたわれわれに、さらなる大きな波が、いま押し寄せようとしている。
岩手県の沿岸地方には「津波のときは家族さえ構わず、自分の身は自ら守れ」という意味の「てんでんこ」という言い伝えがある。津波対策は、日ごろからの危機意識と準備が欠かせない。JAでも、自らの行動によって将来のビジョンを見据え、個人生産者や法人などと課題を共有し、それぞれの特徴と役割を理解した上で、課題解決へ力を合わせたい。そのための基礎作りとして、入念に「準備」に取り組みたいと考えている。
JAいわて花巻は平成28年から始まる第六次中期3カ年計画を策定した。計画策定の協議にあたっては、組合員をはじめ、将来中核となる職員にも参加してもらい、10年後のビジョンを描いた。
また、機構改革にも着手した。本年4月から営農関係では、新たに本所を指導の専任部署として、流通専任部署、施設専任部署、企画専任部署を置いた。営農以外の生活事業は新たに「くらしの活動課」を設け、金融・共済店舗の8支所に担当者を配置した。
正・准組合員の活動を中心とした各農家組合の生活部やJA女性部の活動支援、新たなJAファンづくりを目指した離乳食教室やベビーダンスなどの生活文化活動の推進に力を注ぎたいと考えている。中期3カ年計画の実現に向け、JAオリジナルブランド「食農立国」の名のもとに、夢あるふるさとづくりを進めたい。
◇
最後に、岩手県をはじめとする被災地では、全国・世界各地の皆様からボランティア活動や義援金をいただくなどして、震災から5年目の歳月を経て、ようやく新たな街づくりが始まっています。全国の皆さまからの「思いやり」と、共に課題解決する「絆」の深さに、心にしみるありがたさを感じておりますとともに、本紙の読者の皆様にもこの場をお借りしてお礼と感謝を申し上げます。
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