維新が振る新自由主義の旗【小松泰信・地方の眼力】2022年1月26日
昨年の衆院選で大躍進した日本維新の会(以下、維新と略)の勢いは、今のところ衰えていない。
ヒトラーの大衆扇動術とは
東京新聞(1月26日付)の記事「『ヒトラー』投稿 抗議文提出へ 維新が立民に」の登場人物は、
「(ナチス・ドイツの)ヒトラーを思い起こす」(菅直人・元首相)
「どんな状況であろうと言ってはいけない一言。ヘイトスピーチではないか。党としての考え方をしっかり説明して欲しい」(松井一郎・維新代表)
「基本的には菅氏の個人的な発言だ。党として特段(対応は)必要はない」(逢坂誠二・立憲民主党代表代行)
と、発言している。
落語家の立川談四楼氏はツイッター(1月25日付)で、10項目に要約された「ヒトラーの大衆扇動術」を紹介している。
「共通の敵を作り大衆を団結させよ」「敵の悪を拡大して伝え大衆を怒らせろ」「大衆を熱狂させたまま置け。考える間を与えるな」「利口な人の理性ではなく、愚か者の感情に訴えろ」「貧乏な者、病んでいる者、困窮している者ほど騙しやすい」「都合の悪い情報は一切与えるな。都合の良い情報は拡大して伝えよ」等々。
確かに、ためになった。今後、このような手口で迫られることがあったら、その手口「シットラー」とでも言っておこう。
維新と読売新聞のホットな関係ホットけない
ところで維新の副代表で、大阪維新の会の代表でもある吉村洋文氏が知事を務める大阪府は、2021年12月27日、読売新聞大阪本社と、教育・人材育成、情報発信、安全・安心、子ども・福祉、地域活性化、産業振興・雇用、健康、環境の8分野にわたる連携と協働に関する包括連携協定を締結した。
知事は「今回は新聞社との初めての協定となるが、協定書に明記しているとおり、取材・報道活動とは切り離したものであり、社会課題の解決・大阪の活性化に向け、協働して取り組んでいきたい」と発言。本協定に基づき読売新聞大阪本社と連携し、様々な公民連携の取り組みを推進するとのこと。
もちろんこれについて、メディア関係者からの批判は多い。
『サンデー毎日』(2月6日号)で、倉重篤郎氏(毎日新聞専門編集委員)は「メディアとしてはありうべからざる協定である。取材対象の行政権力をチェックする立場の報道機関が、自らの手を縛りかねない」と危機感を募らせ、望月衣塑子氏(東京新聞記者)も「協定が悪しき前例となり全国に波及すれば現場の記者は間違いなく萎縮していく」と、不安を隠せない。
安倍政権以降、読売新聞はもとよりNHKが、政府の広報機関と化していることに怒りを通り越してやや諦観気味の者としては、さほど驚かなかったが、「ヒトラーやナチス」の再来となれば話は別。まさに緊急事態宣言が発令されるべきだろう。
それでも、イシン・ヤクシン
東京新聞(1月24日付)が伝える、共同通信全国世論調査(1月22、23日実施。回答者数1059人、回答者率44.5%)の詳報によれば、維新の政党支持率は12.5%。自民党の44.2%、立憲民主党の13.1%に次ぐ第3位。他の党は5%未満、支持政党なしは14.3%。
今夏の参院選における比例代表の投票予定政党でも、自民党38.3%、立憲民主党15.3%、そして維新13.5%で第3位。ここでも、他の党は5%未満、分からない・無回答は18.2%。
共同通信の調査結果以上に、維新の勢いを示したのが毎日新聞の世論調査(同紙と社会調査研究センターが1月22日に実施。有効回答者数1061人)である。
維新の政党支持率は18%で、自民党30%に次ぐ第2位。立憲民主党は9%の第3位。他の党は5%未満、支持政党なしは25%。
今夏の参院選における比例代表の投票予定政党でも、維新は21%で、自民党27%に僅差の第2位。これに立憲民主党11%、共産党5%が続く。その他の党は5%未満、分からないは22%。
大阪府や関西が根城ではあるが、この勢いが続くならばの話だが、参院選でも全国的に躍進するはず。
候補者には事欠かない。なぜなら、職業としての議員は経済的にも社会的にも魅力的だからだ。特に参議院議員は6年間身分が保障されている。経歴に箔がつき、1期で辞めたとしても、再就職の選択肢は広がっている。身を切る改革と言っても、手近な公務員を切ることが中心で、自分たちの身を切ることはないからなおさら、良い職場にありつける、と考える人間は少なくない。
問題は、維新の躍進は、農業や農村、そして地方にとって歓迎すべきものなのか、ということである。答えはNO!
古色蒼然とした新自由主義の旗
先に取り上げた『サンデー毎日』(2月6日号)で、維新の共同代表である馬場伸幸氏は、倉重篤郎氏の「岸田文雄政権評価は?」と問われて、次のように答えている。
「何をしたいのかわからない。特に『新しい資本主義』だ。(中略)日本経済を成長させるなら規制に縛られている分野を開放するしかない。ブラックボックスに入っている分野、産業のふたを開け、さあ皆さんこの中で競争してください、と」「すでにやってきた、というが、不十分だ。兵庫県養父(やぶ)市でやっているように農地を企業に売れるようにする。企業が農業を営む。そこで働く人たちは会社員になり、雇用が生まれ安定的な生活が営める。首都圏への人口集中もなくなる。農業だけでなく、あらゆる分野にまだまだ規制改革の余地がある」と、古色蒼然とした新自由主義の旗を振っている。
1月25日の衆院予算委員会において、維新の足立康史氏は、企業による農地取得を特例的に認めた兵庫県養父市の問題を取り上げ、「せっかく規制改革というドリルで開けた岩盤の穴が、自民党の反対で全国展開していない」と主張し、岸田首相に規制改革の推進を強く迫った。
日本農業新聞(1月26日付)は足立氏の質疑を取り上げる記事で、「養父市での企業による農地取得の実績は6社で約1.6ヘクタールと低調で、6社は営農面積のほとんどを借りて利用している。本紙の政党アンケートでは、全国展開を主張するのは維新だけで、大半の党が全国展開に否定的な考えを示している」ことを報じている。
前述の大衆扇動術の最初に「大衆は愚か者である」と記されている。誰が愚か者であるかは明らかである。
「地方の眼力」なめんなよ
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