チューリップ切り花が復活の兆し【花づくりの現場から 宇田明】第33回2024年4月18日
日本人が好きな花は?
どのアンケートでもチューリップとバラがトップを争っていることは、当ブログ第19回で紹介しました。
みんなが好きな花なのに、両者とも生産が激減しています。
最近になり、チューリップにはようやく復活の兆しが感じられるようになってきました。
図は、東京都中央卸売市場花き部6卸売業者のチューリップ切り花の入荷量と単価の推移。
花き部が現在の体制になった2002年には2,120万本あった入荷量がコロナ前の2019年には856万本にまで激減。
実に60%減。
この間の全切り花の平均が19%減ですから、チューリップの激減ぶりが際立っています。
単価は、入荷量を60%減らしてやっと55円から65円に18%増。
ところが、これまで激減してきたチューリップがなんとか下げ止まり、増えはじめました。
2023年の入荷量は、コロナ前の2019年対比で8%増え、単価も65円から79円に22%増。
平均単価50円、60円が定位置であったチューリップが100円超えもある高単価切り花に大変身。
チューリップになにが起こっているのでしょうか?
ブライダルに使われるようになったのです。
少子化や未婚化でブライダル数は減っていますが、それでも結婚は人生の一大イベント。
式や派手な披露宴はしなくても、ほとんどのカップルは前撮り、後撮りなど写真だけは別に撮っています。
写真に彩をそえるのがニュアンスカラーのチューリップ切り花。
ビビットカラー、パステルカラー、蛍光色の対極にあるのがくすんだ色のニュアンスカラー。
高齢者にはなんでこんな色が?と、首を傾げるような色目がブライダルで人気。
さらには八重でフリルがついた花まで登場。
花だけ見ればバラかトルコギキョウか、なんの花だかわからない。
また、家庭用にはミニタイプで球根をつけたままの原種チューリップが新しいインテリアとして人気。
チューリップは、みんながよく知っているチューリップでなくなったから、高額商品になれたといえます。
花は、国民の胃袋を満たすことはできませんし、食料安保にも貢献できません。
見た目で価値が決まる商品で、心の栄養。
チューリップの復活は、外的品質(見た目)が変わっただけではありません。
内的品質(日持ち)も変わりました。
「花屋が売りたくない花は売れない」が花産業の鉄則。
チューリップの切り花は、生けるとすぐに花首が伸びて日持ちが短くなるので、花屋が店に置きたくない、売りたくない花の代表。
花首が伸びるとデザインした形がくずれるのでブーケやアレンジに使いづらい花でした。
そんな弱点を、出荷前にエチレンを主成分にする品質保持剤を吸わせることで解決しました。
その原理は1980年代に学会報告されていたのですが、実用化し生産者に普及するのに30年以上かかってしまいました。
花首が伸びず、日持ちが長くなったニュアンスカラーのチューリップは、花屋が売りたい花に大変身。
花は見られて飽きられる。
今日は珍しがられても明日には陳腐になる宿命。
チューリップの復活が本物か一時のブームで終わるのかは、これからも育種、技術革新により新しい商品を提供しつづけることができるかどうかにかかっています。
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