市場価格は「ないと高いがあると安い」【花づくりの現場から 宇田明】第51回2025年1月16日
2020年、コロナ禍により冠婚葬祭やイベントなどが中止になり、行き場を失った切り花が「ロスフラワー」として話題になりました。
しかし、2021年からは業務需要がある程度回復したものの、供給は減ったままで、一転して品薄単価高になりました。2025年の初市後も高値が続いています。

2024年も切り花は高値
日本農業新聞の日農ネットアグリ市況によると、2024年の切り花主要64品目は、平年(過去5年平均)と比べて14%高でした。
花農家は昨年に引きつづき、今年もよいお正月を迎えたようです。
一方で、切り花全体が空前の高値を記録する中、いま人気が高い枝もののミモザ(アカシア)とユーカリの2品目だけが値下がりをしています。
それぞれ平年比4%安と7%安でした。
おなじ枝ものであるコデマリが14%高でしたので、この値下がりは、ミモザとユーカリだけの現象といえます。

なぜ人気のミモザとユーカリだけが値下がり?
ミモザとユーカリは、ともにオーストラリア原産のマメ科常緑樹で、成長が早く、関東以西では露地でもよく育ちます。
ミモザの消費が急速に拡大したのは、3月8日の国際婦人デーのシンボルだからです。
欧米では、女性の社会参加や地位向上を祝う日で、女性にミモザの花を贈る習慣があります。
それが日本にも広がったのです。
ユーカリは年間を通じて葉を楽しめるため用途が広く、花束、アレンジメント、インテリアなどに根強い人気があります。
人気があるにもかかわらず値下がりしたのはなぜでしょうか?
それは生産が急増したからです。
どんなに人気があっても無限の消費があるわけではありません。
需要より供給が多ければ、安くなるのは市場経済ではあたり前のことです。
2024年入荷量は、ミモザが平年比34%増、ユーカリが14%増。
64品目全体の入荷量が9%減ですから、両品目の入荷増が際立っています。
なぜミモザとユーカリの生産が急増?
生産者も市場も、みんなが同じことを考えたからです。
生産者は、暖房費や農薬・肥料コストなどの値上りに苦しみ、本業品目の栽培面積を減らす動きが広がっています。
その空いたハウスやほ場に、手間がかからず生育が早く、人気が高いミモザやユーカリの苗を植えたのです。
全国の花市場も、全国の産地・生産者にミモザとユーカリの栽培をすすめました。
蓋を開けてみれば全国の産地からミモザとユーカリがどっと入荷し、供給過剰。
こんなことは、花では品目や品種の選択で日常茶飯事、驚くことではありません。
花は自己責任の産業ですから。
品薄での高値は持続しない
現在の切り花の高値は、消費が拡大したからではなく、生産減少によるものです。
ミモザやユーカリのように、生産が増えれば安値に転じます。
しかし、生産が減ったままでも高値はつづきません。
日本農業新聞の2025年農畜産物トレンド調査では、「適正価格」が販売キーワードの1位、「安定供給」が2位です(2025年1月8日)。
適正価格とは、生産者、流通業者、小売業者、消費者すべてにとって「適正」な価格であるべきです。
市場では、すでに高値疲れで、さまざまな変化がおきています。
花屋では、墓花や仏花に造花が増えています。
花関連のグッズだけで生花を置かない花屋が出現しています。
ホテルでは、ロービーなどの装飾が生花から造花に変わっています。
円安に苦しむ輸入業者は、高値が常態化すると輸入拡大に乗りだすでしょう。
このように、品薄での高値がつづくと国産切り花のマーケットが縮小することが考えられます。
2025年の花業界に求められるのは、安定供給と適正価格による消費の拡大です。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(185)食料・農業・農村基本計画(27)麦に関するKPIと施策2026年3月21日 -
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(102)ニコチン性アセチルコリン受容体競合的モジュレーター(4)【防除学習帖】第341回2026年3月21日 -
農薬の正しい使い方(75)細胞壁(セルロース)合成阻害剤【今さら聞けない営農情報】第341回2026年3月21日 -
FAO 国連食糧農業機構【イタリア通信】2026年3月21日 -
【浜矩子が斬る! 日本経済】平和と経済の関係 人権侵す戦争とは乖離2026年3月19日 -
3カ年計画の着実な実践へ 5つの重点取組事項 2026年度JA共済事業計画2026年3月19日 -
配合飼料供給価格 トン当たり約1250円値上げ 2026年4~6月期 JA全農2026年3月19日 -
「有機」「オーガニック」 内容知らない消費者6割強2026年3月19日 -
【世界を診る・元外交官 東郷和彦氏】米国大統領の"変貌" 日本外交も節目2026年3月19日 -
「備蓄米の機動的買い戻しを」 米価下落懸念し特別決議 米どころ山形のJA県中央会2026年3月19日 -
飲用に使われた桜とニセアカシアの花【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第381回2026年3月19日 -
加工食品におけるカーボンフットプリント(CFP)算定ガイドを改定 農水省2026年3月19日 -
「花がなくてもかまわない消費者」にどう向き合うか【花づくりの現場から 宇田明】第81回2026年3月19日 -
今年は5月10日「母の日プレゼントキャンペーン」開催 JAタウン2026年3月19日 -
TOKYO FMホリデースペシャル「春のうまいもの祭」JA全農提供の3番組がコラボ2026年3月19日 -
【役員人事】JA三井リース(4月1日付)2026年3月19日 -
【Jミルク26年度計画】脱粉削減拡充も 生乳需給安定へ検討2026年3月19日 -
第67回全国家の光大会レポート 記事活用、教育文化活動が力2026年3月19日 -
水稲など13品目に対応「土壌診断AI」開発 土壌管理の高度化と生産性向上に期待 農研機構2026年3月19日 -
北信地域の農業を支える新拠点「農機具王 長野中野店」4月1日オープン2026年3月19日


































