【浅野純次・読書の楽しみ】第113回2025年9月11日
◎保阪正康・白井聡『「戦後」の終焉』(朝日新書、990円)
昭和史研究の第一人者と、『永続敗戦論』で「敗戦と言わず終戦と言い続けるのはごまかしだ」と切り込んだ政治学者が、戦後80年を振り返りました。まず戦中と戦後占領期が語られますが、ここでは昭和天皇をめぐる話が多くなります。
戦中、夜8時に上奏に行く将官が晩酌をして赤い顔で天皇に会っていた、つまり少なからぬ将官が若い天皇を小馬鹿にしていたとか、8月15日の玉音放送後に天皇が侍従に国民の反応を調べさせ平穏だと聞くとニコッと笑って仕事にかかったとか、興味深いエピソードが並びます。
しかし本書の読みどころは戦後の政治家をめぐる話でしょう。著者たちが何より問題にするのは「日本を米国の属国にした」点です。
その限りでは吉田茂(保阪氏によると=以下同=国賊ものだとか)、岸信介(売国的だと)、小泉純一郎(首相のレベルに達しない、愚民化政策の人)、安倍晋三(Cランクの首相)、以上4人の評価が両氏とも厳しいのが目立ちます。功罪分かれるのが田中角栄でしょう。
一方で左翼も厳しく批判されています。戦後80年の日本に問われているのは、イデオロギーから離れた歴史観ということかもしれません。主体性をもって考えるための材料に富んだ対談です。
◎柴田哲孝『下山事件真相解明』(祥伝社、2090円)
戦後間もない1949年、国鉄の人員整理により命を狙われていると自覚していた初代国鉄総裁の下山定則が常磐線の線路上で轢死体として発見された下山事件。本書は迷宮入りした同事件を追い続けてきた著者が、新たな証言、資料、写真などをもとに事件の闇と謎を究明した決定版ともいえる力作です。
主舞台は日本橋にあったライカビル。ここの秘密クラブに入れ替わり現れる右翼、GHQ関係者、日系二世、政財界関係者の素性や言動を詳細に追い、さらに下山総裁がどこで、どう殺され、発見現場までどう運ばれたかを推理していきます。
そのスリリングな展開はへたな推理小説をしのぐものがあり、事件の真相がほぼ完璧に明らかにされていきます。重要人物として吉田茂、佐藤栄作、白洲次郎などが登場するのもすごい。ただしいちばん重要な主犯(複数)は名前をあえて明らかにしておらず、ために余韻たっぷりです。もちろんじっくり読めば、具体名は浮かんでくるはず。よければひとつ挑戦してみませんか。
◎佐藤優『トランプの世界戦略』(宝島社新書、1100円)
「宗教観から見るトランプの本質」「トランプの政治・経済思想」「トランプの地政学」という章立ては食欲をそそります。
トランプはプロテスタントのカルヴァン派で、教義からは白か黒か〇か×かの二択に常に回帰するという点は重要です。当初はプーチンが光の子、ゼレンスキーが闇の子でしたが、それが定まらぬところもいかにもトランプ流なのでしょう。
「ストロングマン」が好きなトランプはプーチンに強い親近感を抱いているとも強調されます。しかし昨今はプーチンへの悪口雑言がもっぱらです。著者には想定外だった、のか。
さらにトランプは、自らを「神に選ばれし者」としてその使命を「平和を守ること」だと確信している、と指摘されます。戦争をやめさせ平和を維持するのがトランプの天命だというのですが、その辺はよく考えながら読むのがいいかもしれません。なおMAGA派とノーベル平和賞にも触れてほしかった...。
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