卵の価格 2月としては異例の高さ 鳥インフルエンザが影2025年2月25日
高原病性鳥インフルエンザの広がりで卵の価格が2月としては異例の高さとなっている。2月1日を最後に新たな発生は確認されていないが、これまで14道県51事例が発生し、約935万羽が処分対象となった。鳥インフルエンザがより深刻な米国では、2月に入り1パック(12個入り)1000円を超える高騰ぶりだ。
全農たまごMサイズ、300円超え
卵の価格は、クリスマスケーキやおせち料理で需要が増える12月にピークを迎え、年が明けると下がるのが通常だ。ところが今年は、年をまたいで上昇を続ける。
2月25日の全農たまごMサイズは東京で315円、大阪300円、名古屋330円、福岡300円だった。300円を超えたのは、過去最悪の被害の影響が続いていた2023年7月以来だ。1月の鳥インフルエンザ発生は34事例で殺処分は651万羽。発生事例数、処分羽数ともに過去最多だった2022年シーズンを超えたこともあり、2月としては異例の高値が続く。
スーパーでの小売価格(鶏卵サイズ混合、10個入り1パック)も2月10~12日の農水省調査で276円と、前月比+2%、前年比+19%だった。
「2年前と似ている」養鶏農家の危惧
茨城県石岡市で養鶏を営む松崎泰弘さん(JAやさと組合員)は、「鳥インフルが流行した2年前と似ている」と心配しながら、こう話す。
「感染すると大変だ。鶏を処分しなければならず、収入が途絶えてしまう。処分し浄化し検査でOKとなったらモニタリングし、ゴーサインが出るまで雛も買えない。雛が卵を産むまで半年かかり、安定供給のために段階的に戻すので、完全に戻るには2年近くかかってしまう」
1970年には約170万戸あった採卵鶏飼養戸数は1992年に1万戸を割り、2024年は1640戸に集約された。それに伴い、1戸当たり飼養羽数は1970年の70羽から2024年には7万9100羽に増えた。これは家族農家も含めた平均値で、50万羽以上の企業的経営も多い。
殺処分→再開までの険しい道のり
「その人たちは従業員を雇用しているので、鶏を処分すると、仕事はほとんどないのに人件費負担が重い。発生農家には、再開時に『経営支援互助金』が交付されるが、それまでは売り上げが立たないのに出費がかさむ。交付を早めるよう要請もしてきたが、代わりに再開前、経営再開資金の貸付を受けられるようになった」(松崎さん)
発生農家への支援について農水省は「殺処分家畜等に対する手当金等は感染拡大を防ぐもので再開するかどうかと関係なく支給されるが、経営支援互助金は経営再開を支援するものだ。再開までの資金をつなぐのが経営再開資金の低利融資や農林漁業セーフティネット資金(制度融資)になる」(消費・安全局動物衛生課)と説明する。卵の流通に詳しい信岡誠治・東京農業大学元教授は「経営支援互助金を担保代わりに融資を受ける業者も多い」と言うが、大規模業者も含め再開までの道のりは楽ではない。防ぐのが一番だ。
米国では1パック(12個)1133円
鳥インフルエンザが日本以上に猛威を振るうのが米国だ。2022年以来、1億羽余りの産卵鶏が殺処分され、「鶏が3分の1くらい減った」(信岡氏)ため、卵の出荷が落ち込み価格がはね上がった。
米農務省の調査では、2月7日時点の1ダース(12個)当たりの全国平均価格は7.34ドル(約1133円)と前週から10%上昇した。購入数量に制限を設けたスーパーも多いという。
大統領選挙でトランプ氏は「人々はシリアルやベーコン、卵などを買えない」とバイデン前政権の経済政策を非難したが、トランプ氏の政権奪還後も、卵価をはじめ消費者物価上昇は収まる気配を見せない。
合理的価格形成に期待
米国ほどではないにせよ今は異常な事態であり、24年も前半は卵価が低く、生産者にとっては「採算割れ」だった。松崎さんは「卵は長く『物価の優等生』といわれてきたが、それでは生産が厳しい。お米にも通じるが、今くらいの価格を当たり前と思ってほしい」と語り、「合理的価格形成のルールづくり」に期待を込める。
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