トップ層と職員の対話が重要 職員の取り組み向上へ「理念の共有」カギ JAの経営戦略高度化セミナー2024年10月7日
JA全国機関4連(JA全中、JA全農、JA共済連、農林中央金庫)が9月24日に東京都内で開いた「JA役職員エンゲージメント調査を通じた経営戦略高度化セミナー」ではJAあいち知多とJAグリーン近江が事例報告した。
JAグループ全国4連が開催したJA役職員エンゲージメント調査を通じた経営戦略高度化セミナー
JAあいち知多の伊藤勝弥専務は「CS・ESの向上による組織改革」と題して報告した。同JAでは不祥事を契機にコンプライアンスを徹底したが、職員はルールに縛られ自由な発想がなくなって、組合員・利用者からも不満の声が出るようになった。そのため、組合員・利用者に役立つことにやりがいを持てる組織風土への変革をめざしてCS(顧客満足度)とES(職員満足度)の向上に取り組んできた。
組織改革に向けて全職員が共有すべき価値観として「協同活動の喜びをみんなで」、「一緒に知多半島を元気に」、「職員である前に地域住民であろう」などを「アグリスウェイ」として制定し、それを浸透させるため2020年からはエンゲージメント調査を実施してきた。調査によって職員の不満の解消と同時に、職員の「やりたい」という分野や意欲を引き出しに努めた。
伊藤専務は「旗を振るだけではなく、主体的にチャレンジする職員へ心に火を付けるのが役員の仕事」と話した。そうした職員へと変化させるには役員はもちろん管理職による「承認」が大切になると強調した。
JAグリーン近江の徳永友治常務は「グリーンウェイに基づいたJA経営の実践」を報告した。
グリーンウェイとは同JA役職員の行動原則。経営理念に「人と自然とのかかわりを大切にし、食を守り地域に愛されるJAグリーン近江をめざす」を掲げたが、「誰も本気で理念実現へ汗をかいていない」ことから、理念実現のための役職員の行動の「ものさし」を定めた。「地域とともに協同の理念を育みスピード感をもって意欲的に思考する」などを掲げている。
グリーンウェイの目的の一つが「コンプライアンスに頼らない経営」。言葉遊びや単なる文字の羅列では職員の心に響かないことから、地域や協同組合の歴史から学ぶなど、完成までに1年をかけ25回の検討会を重ね、2012年に導入した。
導入後は、中核人材養成研修や、協同組合塾、女性大学などでの講義や、事業部、支店行動計画への反映などに取り組んでいる。そのなかで徳永常務は入組3年目までの職員との1対1の面談を実施しており、職員の定着につながっており、エンゲージメントの向上には「お金や待遇だけではなく理念の共有が必要」で相互信頼、集団参加が求められるなどと話した。
また、エンゲージメント調査にあたっては調査結果をどう活かすか、役員との面談など予め仕組みをつくっておくことも大事で「アンケートに回答することが、自分にとっていいことにつながる」仕掛けが必要だと提起した。
コーディネーターを務めた法政大学経営大学院の高田朝子教授は「職員が自分は"駒"の一つという意識ではなく、私が必要とされている、個として存在している捉えることが必要」と指摘したほか、「小さな成功体験」の積み重ねなどが大事などと提起した。
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日