JAの活動:農協時論
【農協時論】農協しかできない役割 食と農をつなぐ社会的意義磨け 岩佐哲司・JAぎふ組合長2023年6月1日
「農協時論」は新たな社会と日本農業を切り拓いていくため「いま何を考えなければならいのか」を、生産現場で働く方々や農協のトップの皆様に胸の内に滾る熱い想いを書いてもらっている。今回はJAぎふ代表理事組合長の岩佐哲司氏に寄稿してもらった。
激変の真っただ中にいる農協
JAぎふ代表理事組合長
岩佐哲司氏
農協は、この10年で大きな変化を経験した。農協改革、農地法や農協法の改正、これらに対抗する農協の自己改革、新たな食料・農業・農村基本計画、みどりの食料システム戦略、その後のコロナパンデミック、ウクライナ危機で顕在化したグローバルサプライチェーンの機能不全、食料加工品や生産資材の価格高騰、そして今、議論されている食料・農業・農村基本法の改正と、社会情勢も制度も激変の時代の真っただ中にいる。
私は、農協が前述のトピックスを経験した反省として、農協の行動が株式会社的発想に傾倒しすぎていたのではないかと思う。協同組合である農協は、人と人の関係で成り立っているにも関わらず、株式会社と同じように、物やサービスを媒介として人とつながっていたのではないだろうか。株式会社は、いかに物を売り利益を上げ株主に配当するかを目的にしている。そして社会的存在意義を補てんする手段として社会貢献活動を行っている。
資本主義的発想でない農協を
協同組合は、物で人と人がつながるのではなく、人と人がつながっており、その中の活動として物やサービスの提供があるのだと思う。農業者の数が多く一定の発言力があった時代は、株式会社と同じ発想のままでも農協批判に対抗できてきたが、相対的に発言力が低下した今回は、農協批判を跳ね返すことが出来なかった。今、多くの人々が新自由主義的グローバリゼーションへの疑問や反省を感じている。
今こそ、資本主義的発想だけではない農業協同組合を目指す必要がある。そうすれば協同組合の社会的存在意義は増し、農協に理解を示してくれる消費者も増加すると思う。農協の目的は、組合員共通の利益の実現と組合員とともに地域に働きかけ、より良い社会の実現を目指すことにある。ぎふ農協では、10年先の目標を「活力ある農業」と「豊かな地域」の実現としている。協同組合として、この目標を達成するために一番忘れてならないことは、組合員の意見を聞くことだと考えている。協同組合が組合員から意見を聞くことは、物やサービスを売るために行うのではない。組合員が意見を言うことや事業を利用することは、組合の協同活動に参画することになる。
消費者、地域住民との意見交換が大切
我々役員がこのことを職員に語り、職員が組合員の意見を聞く理由を理解し、組合員の参加・参画を大切に育てる活動をする必要がある。さもなければ、農協改革という御旗を立てた農協批判が再燃し、今度こそ総合農協が無くなると思う。意見を聞く方法には、役員会の活性化、非常勤理事が中心となった支店運営委員会での意見聴取、各種組織への職員関与、意見が言いやすい体制作り、職員の訪問活動で聞いた意見が経営陣まで届く仕組み作りなど、方法はいくつもあると思う。また、農協の目的は組合員とともに、よりよい社会の実現にあるので、組合員だけではなく、消費者、地域住民、行政など多方面との意見交換が大切だ。
農協では、そうした会話の中から多くの事業を行っている。障がい者の方の働き場の確保を目指した特例子会社「株式会社はっぴいまるけ」、高齢者の資産面でのサポートを行う「一般社団法人JAサポートセンターぎふ」、生産者と消費者が力を合わせ食と農でつながる地域社会を目指す「食と農の連携フォーラム」などを立ち上げた。
今後は、食と農を中心に、組合員、消費者と職員が意見交換をし、農業者だけを農業・農地を守る当事者とするのではなく、地域に住む消費者の当事者意識を醸成し、多くの人で、農業、農地を守れる地域社会を目指す。そして、志を同じくする全国の地域が連携しつながりを強化すべきだ。そうすれば「国消国産」運動がさらに深化するものと確信する。
私はこれができるのは、農協しかないと思う。
みなさんはどう思われるか。
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