JAの活動:持続可能な社会を目指して 希望は農協運動にある
【特集:希望は農協運動にある】座談会「希望は農協運動にある」岩佐哲司氏(JAぎふ)熊谷健一氏(農事組合法人となん)飯野芳彦氏(元JA全青協会長)田村政司氏(JA全中)(1)2020年10月30日
新型コロナウイルス感染症の拡大で、JAの事業・運営が大きな影響を受けている。とりわけ組織活動を基本とする協同組合にとって、意思疎通のための話し合いの機会が減ることは深刻だ。生産現場ではどのようなことが起こっているか。JAぎふの岩佐哲司専務と日本一の規模を誇る岩手県の農事組合法人となんの熊谷健一会長、それにJA全国青年組織協議会の元会長、飯野芳彦氏に、生産現場の状況とJAの先行きについて意見交換し、問題を浮き彫りにしてもらった。

左から、田村政司氏(JA全中)、熊谷健一氏(農事組合法人となん)
岩佐哲司氏(JAぎふ)、飯野芳彦氏(元JA全青協会長)
田村 新型コロナウイルス感染症の拡大で、協同組合の力の源泉である組合員の運営参加、組織協同活動、訪問対話活動がやりにくくなっています。コロナ禍を現場レベルでどのように受け止めていますか。
飯野 農協の部会や青年部、女性部などの組織活動ができなくなりました。しかし、前例がないことは何でもできるということ。青年部組織ではオンラインで会議を進めています。当初は、直接会わないとだめだという人もいたが、数か月で会議システムを構築したことを見て驚きました。
JA青年部の綱領に「時代を捉え、将来を見据えたJAの発展のため」とありますが、我々は変わるべきだったにもかかわらず、過去の経験に頼りすぎたのかも知れません。このことがコロナで鮮明になったのではないでしょうか。
直接、顔を会わせないため、組合員組織ではストレスが溜まっています。しかしその原因が、今の方法に問題があるのか、別のやり方があるのかは分からず、現時点ではチャレンジしかありません。後で振り返り、取捨選択することになりますが、そのとき注意しなければならないのは、せっかく構築したシステムをすぐ元に戻したり、安易に捨ててしまったりしないようにすることです。そのことをしっかり押さえないと進歩しません。
岩佐 コロナ禍で理事会、支店長会議をリモートに切り替えました。JAは、いつも大手企業の後追いで、彼らの土俵で相撲とって敗北してきた歴史がありますが、今回JAぎふでは、それなりに迅速な対応がとれたと思います。JAグループは、みんなでデジタル化にどう対応するかについて本気で考え、組合員と実際に会うことに加え、IT技術を使ってのコミュニケーションができる組合にしなければと思っています。
熊谷 生産農家は、コロナ禍にもかかわらず、空気の良い圃場で農作業に専念でき、総じて元気です。大都市や狭い事務所で働くサラリーマンは精神的に大変だと思う。また、農産物販売に関して、コロナ禍はリスク回避のためには分散化が必要だということを教えてくれました。農産物でも卸売市場を通じた大都市販売、地元での地産地消、インターネットを通じた個人販売と、販路を3等分することで安定が得られます。農産物は何でもJA、なんでも市場だ、ではない。そういう時代に入ったのだと思います。
「地域」で自給率向上
田村 今日、多くの人たちは外でお金を稼いで、必要なものを外から購入する社会環境に生きていますが、コロナ禍のなかで、食料をはじめとして生きていく上で必要なものをできる限り地域で自給することの大切さを考える機会になったのではないでしょうか。
飯野 戦後、農協の責務は食料の安定供給です。現在も作目ごとに産地化され、その責務を果たしています。生産者の視野が広く頂点の高い産地が理想的ですが、今はこのバランスが崩れ、裾野が狭く頂点が高かったり、逆に裾野が広く頂点が低かったりして、産地のバランスが悪くなっています。
これを直すには、小さい産地だけではだめで、新たなつながり方によって、底辺が広く頂点の高い産地にしなければなりません。そうでないと、食料の安定供給も危うくなります。それと、食料の安全保障はやはり米ですね。今年のように1か月雨が続いても、1か月で回復しました。野菜はいまだ苦しんでいます。天候に強い米だけは確保するべきです。

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