女性の活力を牽引力に 協同金融研究会第12回シンポジウム2015年3月25日
農業協同組合、信用金庫、信用組合、労働金庫など、協同組織金融機関の役職員らで構成する協同金融研究会は、3月7日(土)、「女性が語る! 地域と協同の未来」をテーマに、東京・千代田区の日本大学でシンポジウムを開催した。シンポジウムは、年に1度同研究会が開いているもので、今回で第12回。協同組織関係者、学生など150人近くが参加した。
今回、初めて「女性」をテーマにしたことについて、代表の齊藤正駒澤大学教授は冒頭の挨拶で「日本全体のあり方を問い直すことの1つとして『女性の活力』を取り上げた。ダイバーシティーの構築を進め、サスティナブル(持続可能)な社会を実現させるには、女性が力を存分に発揮することが不可欠。そのために、協同組織金融機関が果たせる役割とは何かを今一度考えてみたい」と述べた。
記念講演では、「女性の活力を、豊かな社会の牽引力に」と題し、日本に初めてLOHAS(ロハス)を紹介した「NPO法人JKSK女性の活力を社会の活力に」理事長の大和田順子氏が、地方創生や震災からの復興の過程において、地域金融の女性に期待される役割などについて話した。
実践報告では、多摩信用金庫・人事部長の高橋尚子氏、岐阜商工信用組合・営業推進課長の熊野香織氏、新ふくしま農業協同組合・北福島地区本部長の菅野房子氏の3名が「職場と地域とわたしが元気でいるために?女性と共に考える協同組織金融機関のあり方?」をテーマに発表。それぞれの業態で、地域において女性が果たしている役割や、自身が管理職としてどのようにキャリアを積んできたかなどについて報告した。発表者からは、女性だからできること、女性だから苦労すること、仕事と子育ての両立についてなど、実体験に即した本音の話が多数語られ、会場に集まった若い女性たちは、メモをとりながら、真剣な眼差しで報告に耳を傾けていた。
JA新ふくしまの菅野本部長は、高校卒業後JAに入組。Aコープのレジ打ちから始まり、燃料センターの給油係、支店での信用・購買窓口、LA、生活指導員など、JAのほとんどすべての部門を経験した。「私は歩く総合事業」と自らを称し「すべての経験が今の自分を形作っています」と話す。現在は同JA女性初の本部長として、100名近くの部下を束ねている。
「皆さんのお役に立ちたい」。菅野本部長の根底に流れるのはそんな温かな思いだ。東日本大震災、そして原発事故による風評被害が今もくすぶるなか、地域には課題も多い。しかしその一つひとつから決して目をそらさず、真摯に向き合う。「常に地域に耳を傾けていれば、今何が求められているのかは自ずと見えてきます。その上で、自分たちには何ができるかを考え、そこにチーム一人ひとりの力を活かしていく。その繰り返しが地域を元気にするのだと思います」。女性ならではの強さとしなやかさで、地域の「総合世話係=コンシェルジュ」としての役割を果たす。
一方、自身のキャリアパスついては「後押ししてくれる上司や組合員の方々、同僚、そして家族の協力があってこそ実現できた」と感謝の気持ちを忘れない。「女性の場合、十分な実力がありながらも、自分に本当にできるのかと自信が持てないことも多い。だからこそ、職場の上司がよく状況を見て、丹念に声掛けをするなど、そっと背中を押す支援が大切だと思います」。自身の経験から、女性の管理職登用には、経営者や上位管理職の理解や後押しが不可欠であることを強調した。「女性登用が叫ばれるなか、戸惑いや不安もあります。でも、一人の人間であることには変わりはありません。女性だからと評価されるのではなく、一職員として、一管理職として評価される存在になっていきたい」
周囲の応援を力に変えながら、一歩一歩階段を上ってきた菅野本部長の報告は、手の届く等身大のロールモデルとして、参加者の胸に響いたようだった。
トークセッションでは、女性コンサルタントネットエルズ代表の油井文江氏がコーディネーターとなり、実践報告を行った3名の女性がパネラーとして登壇。女性が考える協同組織金融機関のあり方や、女性の活躍推進の動きについてなど、活発な意見交換が行われた。
一方、会場からは「女性はがんばらなくていいと上司から言われ、それ以来職場に行くのが嫌になってしまった」という深刻な相談も寄せられ、女性問題は業態や職場によって著しく差があり、まだまだ厳しい状況にあることも露呈した。そのような現状を踏まえた上で「恵まれた一部の女性だけがクローズアップされるのではなく、多様な女性がそれぞれの場所や立場で活躍できる社会の実現に向けて、一つひとつ課題を解決していくことが大切。協同組織にはそのチャンスがある」と、協同組織の明るい未来が語られた。
(写真)
パネラーを中心に活発な意見交換がされたトークセッション(写真提供:梅村光一氏)
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