台湾の農業の現状と今後 第3回台湾国際農業週2018年11月30日
台湾(中華民国)の最新農業技術と農産物を世界にアピールする「台湾国際農業週」は、11月21日から23日まで台湾南部の高雄市で開催され、「台湾で一番大きな国際展示会」と評されるほど盛況だった。台湾はいま国家を挙げて農業に力を入れており、その中心的な組織ともいえる行政院農業委員会(日本の農林水産省に相当)の審議官で、財団法人農業科技研究院に出向中の陳建斌院長に台湾農業の現状と今後の展望を聞いた。
財団法人農業科技研究院の目的は「現在16か所ある行政の研究所で約1000名もの研究員が農業技術研究に取り組み、毎年いくつもの特許を取っているが、それらが実用化されていない。その商業化・工業化」と陳院長は流暢な日本語で話し始めた。いま台湾は国を挙げて農業に取り組んでおり、蔡英文政府は「最先端農業技術の研究開発、新興産業の創出や食の安全、国家級農産物輸出企業の設立」を重要な政策の柱に位置づけている。また、東南アジア諸国やインドなどの南アジア、オーストラリア、ニュージーランドとの関係を強化する「新南向政策」に積極的に取り組んでいる。そのために、特にここ数年東南アジア諸国から大勢の留学生を受け入れており、その数は年々増加、昨年の留学生はおよそ4万1000人にものぼった。
台湾は、南部の高雄は熱帯気候、北部は亜熱帯気候で、マンゴ・パパイヤ・パイナップル・ドラゴンフルーツ・スターフルーツなど10品目の熱帯果樹が日本に輸出されている。一方、日本から台湾への輸出品目としては、りんご・もも・ぶどうなどの日本の果物が主で、贈答品として扱われているという。「温帯の日本農業と、熱帯・亜熱帯の台湾農業とは競合せず、お互いに最高のパートナーとして協力していける」と陳院長は強調した。
また、今年の展示会のテーマは「伝統的な農業」から「スマート農業」への移行だと陳氏は話す、その一端としてグリーンハウスを挙げる。具体的には、温度・湿度・風速・日照時間等の蓄積データを人工知能が解析し、事前に雨が降ることを察知し、天蓋を開閉させる。これは台湾で人気のあるドリアンなど、開花時の降雨が禁物の果物には特に重要な機能だ。また、例えば、人工知能がトマトの日照時間が長すぎると判断すれば、太陽光をネットが自動的に遮断する。これらの判断の基となるデータは何十年も前から蓄積されたものだという。こういった技術を東南アジアや南アジア、さらに中東諸国に「技術輸出」したいと考えているという。
「東南アジアや南アジア諸国は労働力も安く、土地も汚染されておらず、これから発展していく見込がある。今後日本と台湾が手を組んで優れた技術をこれらの国々に推進していくことは、日台の食料自給率の解決のみならず、大きな意義がある。」と熱い思いを語った。
(写真)財団法人農業科技研究院 陳建斌院長
(関連記事)
・台湾国際農業週開幕!(18.11.21)
・台湾で最新の農業をテーマに国際的展示会「2018年台湾国際農業週」(18.10.15)
・トロピカル農業は世界一 第2回台湾国際農業週をみて(17.11.24)
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(146)-改正食料・農業・農村基本法(32)-2025年6月14日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(63)【防除学習帖】第302回2025年6月14日
-
農薬の正しい使い方(36)【今さら聞けない営農情報】第302回2025年6月14日
-
群馬県の嬬恋村との国際交流(姉妹)都市ポンペイ市【イタリア通信】2025年6月14日
-
【特殊報】水稲に特定外来生物のナガエツルノゲイトウ 尾張地域のほ場で確認 愛知県2025年6月13日
-
【注意報】りんごに果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 岩手県2025年6月13日
-
SBS輸入 3万t 6月27日に前倒し入札2025年6月13日
-
米の転売 備蓄米以外もすべて規制 小泉農相 23日から2025年6月13日
-
46都道府県で販売 随意契約の備蓄米2025年6月13日
-
価格釣り上げや売り惜しみ、一切ない 木徳神糧が声明 小泉農相「利益500%」発言や米流通めぐる議論受け2025年6月13日
-
担い手への農地集積 61.5% 1.1ポイント増2025年6月13日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】生産者米価2万円との差額補填制度を急ぐべき2025年6月13日
-
井関農機 国内草刈り機市場を本格拡大、電動化も推進 農機は「密播」仕様追加の乗用田植え機「RPQ5」投入2025年6月13日
-
【JA人事】JA高岡(富山県)松田博成組合長を新任(5月24日)2025年6月13日
-
【JA人事】JAけねべつ(北海道)北村篤組合長を再任(6月1日)2025年6月13日
-
(439)国家と個人の『食』の決定権【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年6月13日
-
「麦とろの日」でプレゼント 東京のららぽーと豊洲でイベントも実施 JA全農あおもり2025年6月13日
-
大学でサツイマイモ 創生大学と畑プロジェクト始動 JA全農福島2025年6月13日
-
JA農機の成約でプレゼントキャペーン JA全農長野2025年6月13日
-
第1回JA生活指導員研修会を開催 JA熊本中央会2025年6月13日