骨太方針2020で農業改革加速や輸出促進を明記 政府(上)2020年7月29日
政府は7月17日、第11回経済財政諮問会議の答申を経て「経済財政運営と改革の基本方針2020~危機の克服、そして新しい未来へ~」(骨太方針2020)を閣議決定した。このなかで農林水産業については、従事者の減少や新型コロナウイルスによる急激な人手不足、新たな国際環境に対応するため、農林水産業の維持・発展を目指しICT等の先端技術を活用するとともに、人材育成や農地集積・集約化を図る必要があると指摘。また、バリューチェーンにおける改革を進め輸出を促進する等、環境の整備に積極的に取り組むために改革を強力に進め、農林水産業の競争力と食料安全保障の強化を図るとした。
経済財政諮問会議で発言する安倍首相
農業に関する主要取り組み項目は以下の通り。
【農業改革の加速】
◆生産現場の強化
(1)生産性の向上、人材の育成等
・農業者と協業しつつ、農作業代行、GAP(農業生産工程管理)指導、ICT活用、加工・貯蔵等を創意工夫により行う新たな生産事業体の先駆的事例の2022年度までの展開を推進し、全国展開を図る。
・新規就農者を支援する市町村・農協等の協議会の優良事例を基に、20 年度中にマニュアルを整備し、新規就農者の定着を全国で推進する。
・農業高校での最新農機を使用した実習等への協力を農協や農業経営体等に20年度に働きかける等、全国で農業教育環境の充実を図る。
・女性が農業で働きやすいよう、地域の子育て支援ネットワーク構築マニュアルを、先進事例を含め20年度に作成し、全国展開等を図る。
・農福連携について、農業・福祉双方のニーズのマッチング、専門人材の育成及び全都道府県でのワンストップ窓口の整備の推進とともに、20年中に優良事例表彰を開始する等により、全国的な推進を図る。
・農協改革について、自己改革の進捗を踏まえ、引き続き取組を促すとともに、改正農協法に基づき検討を行い、必要に応じて措置を講ずる。
(2)農地の集積・集約化等
・改正農地中間管理事業法に基づき、地域の関係者一体で、2 年度に人・農地プランの実質化を話合いにより集中的に推進し、実質化されたプランを核に担い手への農地の集積・集約化の具体化を順次進める。
・合わせて、農業経営相談所の専門家の派遣や、優良事例集の20年度中の作成等を通じ、法人経営体設立の加速化を図る。
・日本型直接支払制度について、将来の中山間農地の維持等を定める集落戦略の作成を、22年度まで集中的に推進するとともに、棚田の保全や中山間地の特色を活かした多様な取り組みを促進する。
・土地改良事業について、コスト低減を図りつつ、農地の大区画化や汎用化など農業競争力の強化を図るとともに、ため池や農業水利施設等の強靱化対策を緊急に実施し、ため池工事特措法に基づき20年度中に基本指針や推進計画の策定による実施体制の整備を全国で図る。
・営農型太陽光発電について、22年度までに電気を自家利用する農業者向けの手引を作成する等により、全国展開を図る。
・畜産業の国際競争力の強化に向け、20年度に一定の畜舎等を建築基準法の対象から除外する特別法を検討し、所要の法律案を整備する。
・都市農地貸借法を活用して農協等が行うマッチングの優良事例集を20年度中に作成する等により、都市農業の振興を図る。
(3)米政策改革
・農業経営者が自らの経営判断に基づき作物を選択できるよう、きめ細かい情報提供や水田フル活用に向けた支援を行うなどにより、25年度までに500の高収益作物産地の創出など、米政策改革の定着を図る。
・米の多収品種の地域ごとの栽培技術等の確立を推進し、22年度までに作期分散も含めた体系的整理等を行い、生産コストの削減を図る。
・米・麦・大豆の作付けの連坦化・団地化等を行うモデル産地を、23年度までに全国各地に創出する。
◆バリューチェーンにおける改革の推進
・農業競争力強化支援法に基づき、20年4月に対象化された農業資材の卸
売・小売事業を含め、資材・流通業界の再編などの取り組みを進める。
・農水産物等のバリューチェーンにおいて、22年度までに、AIやロボット技術等を活用し、卸売市場を含む物流拠点における商品仕分け、搬送、入力等の自動化技術を実現するなど、コストの低減を図る。
・6次産業化推進のため、農林漁業者が異業種と協働で取り組む一次加工等の促進を図るとともに、各都道府県において関連事業者間のマッチング等を行う体制を22年度までに整備する。
・食品ロス削減推進法に基づき、20年10月30日の「全国一斉商慣習見直しの日」に向けた納品期限の緩和等の呼びかけや、フードバンクにより食品関連事業者と福祉団体等をマッチングするシステムの構築等を行い、食品ロス削減を全国的に推進する。
・鳥獣被害対策を抜本的に強化し、安全・安心なジビエ供給体制を確保するとともに、ジビエ利用量を25年度に19年度比で倍増させるなど利用拡大を図るため、獣種や在庫量等の利用者向け産地情報の共有ルールを、20年度中に実証を通じ作成し、全国展開等を図る。
・農業者の所得向上に向けて、農産物検査規格と商慣行の総点検・適正化及び新JIS(日本農林規格)の制定について、21年度上期までに結論を得る。
・新型コロナウイルス感染症の感染の状況等を見極めつつ、「GoToEat(飲食)」事業を実施する。キャンペーンの実施に当たり、感染拡大防止策を徹底しながらオンライン飲食予約サイト経由で、期間中に飲食店を予約・来店した消費者に対して、飲食店で使えるポイント等を付与するほか、登録飲食店で使えるプレミアム付き食事券を発行し、飲食需要を強力に喚起する。その際、宅配やテイクアウトも対象に含め、新たなビジネス方法の実行への支援を進める。
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