農薬 シリーズ詳細

シリーズ:現場で役立つ農薬の基礎知識2018

【デンカ(株)技術顧問 技術士 吉田 吉明】

2018.12.25 
【現場で役立つ農薬の基礎知識2018】だから 今こそ問われる土づくり一覧へ

 12月5日は「世界土壌デー」である(国連総会で2015年を国際土壌年とすることと併せて決められた)。また、10月第1土曜日は1972(昭和47)年に全農が制定した「土の日」である。今年も、この時期に合わせて、11月21日に大阪で「平成30年度土づくり研究会」を開催した。そこで本誌も、「土づくり」の特集を企画し、土づくりの重要性についてデンカ㈱技術顧問の吉田吉明氏に執筆していただいた。

春耕起作業に向けて、土づくりに注力 「地力」の言葉はよく使われるが、筆者は表1に示したとおり、土壌の性質である物理性、化学性、生物性の地力要因は相互に影響し合っており、それぞれの性質が適正であり、これらの性質を統合した圃場の生産力を「地力」といい、土づくりとは、作物が健全に生育し、目標収量を得るために、土壌の物理性、化学性、生物性が好適な状態(診断目標値)にあるように、人為的に「地力の維持・増進」を行うことである。と考えている。
 ここでは、表1の地力要因と照らし合わせ、現在の水稲肥培上の課題と野菜の栽培における土づくり、土壌病害対策について述べたい。

(写真)春耕起作業に向けて、土づくりに注力

 

◆水稲の土づくり

 近年の稲作の土づくりに関する課題は、(1)農業機械の大型化による踏圧と浅耕による浅い作土深と透水性の低下(2)ケイ酸肥料や鉄資材(これらの多くは塩基を含む)の施用量の大幅な減少によるケイ酸の供給量の不足と石灰など塩基の不足による酸性化の進行(3)腐熟が進んでいない稲わらの春すき込みで強還元の進行による根の生育障害、排水性不良と土壌pH低下がそれを助長している点である。
 そして、(4)出穂期以降の窒素栄養不足による後期凋落(5)収穫作業優先の早期落水であり、これらは、収量を構成する適正籾数、登熟歩合、千粒重に影響し、登熟期の高温障害による米の品質低下を助長している。
 地力増進対策で行政は堆肥の施用を推奨しているが、実態は、刈り取り後放置された腐熟の進んでいない稲わらの春すき込みが増加しており、減収や収量変動の大きい要因となっている。石灰窒素(20kg/10a)による稲わらの秋すき込み(排水の悪い圃場は浅耕が良い)は、堆肥同等の効果があり、初期の生育障害も回避することができ、栽培中のメタン発生を抑制、炭素貯留により温室効果ガスの削減にも寄与する。特に、地力窒素の増強に役立ち、ケイカルやようりんなど土づくり肥料を同時にすき込むと相乗効果が高い。

【表1  土壌の性質と地力要因】現場で役立つ農薬の基礎知識 2018 だから 今こそ問われる土づくり

 

◆野菜畑の土づくり

 施設野菜の圃場では、塩類が集積しやすいこと、畜産系堆肥の不適切な施用量でリン酸が適正域を上回り、塩基などのアンバランスが問題となっており、土壌診断にもとづき改善する必要がある。
 一方、露地野菜の圃場で大切なのは土壌の物理性である。重量作業機械による踏圧や浅耕ロータリによる圧密層の形成が根の伸長を阻害し、排水性の悪化が問題になっている。この物理性の悪化が土壌病害の発生にも関係している場合が多く、深耕や心土破砕などで改良する必要がある。その場合も土壌診断にもとづき土づくり肥料の施用も併せて行う。
 野菜畑では、連作をできるだけ避けること、堆肥や土づくり肥料で物理性、化学性が適正な圃場にすることで、根が健全になり、有益な微生物や自活性センチュウも増え土壌病害虫の予防にも役立つ。しかし、病害虫が多発した圃場では、土壌消毒剤を使用し、土壌病原菌、土壌線虫の密度を下げる必要がある。

【現場で役立つ農薬の基礎知識2018】だから今こそ問われる土づくり 表2 主な土壌消毒剤の特徴一覧(クリックすると大きな表が表示されます。)

 

◆土壌病害虫の防除

 土壌消毒には以下のような様々な消毒法があるが、消毒効果を高めるためには、処理方法をきちんと守ることが重要である。

【太陽熱・石灰窒素法】
 ハウスで、夏季の太陽熱と石灰窒素による腐熟促進効果および発酵熱を利用した防除法で、10a当り切りわら(1~1.5t)を散布後、石灰窒素(100~150kg)を散布、全面耕起後、小畝立て、全面マルチ、畝間灌水し、20~30日密閉する方法である。

【土壌還元消毒法】
 ふすまや米ぬかなど分解されやすい有機物を土壌に混入し、土壌を水で満たした後、太陽熱による加熱を行う方法である。これにより、施用した有機物を土壌中の微生物が分解発酵する際、酸素を消費するため還元状態になり、病原菌を窒息させて死滅させることができる。

【蒸気・熱水消毒】
 文字通り、土壌に蒸気や熱水を注入し、土壌中の温度を上昇させ消毒する方法である。病害虫を死滅させる原理は太陽熱と同じで、いかに土壌内部温度を上昇させるかが鍵である。

【土壌消毒剤による消毒】
 土壌消毒剤は、長い間主流であった臭化メチルの使用が禁止され、その代替として、土壌消毒剤を使用した技術が開発され、現在、効果の安定性からみて土壌消毒剤が現場で多く使われている。主な消毒剤の特性や効果の範囲を表2に整理したので、使用法をよく把握した上で、効率良く安全に利用したい。
主な土壌消毒剤の特性を示す。

(1)クロルピクリン

【商品名=クロールピクリン、ドジョウピクリンなど】
 揮発性の液体で、土壌に注入することで効果を発揮する。激しい刺激臭がするので、防護具等の使用が必須である。ガス抜けが早く、ガス抜き作業が不要なのが特徴である。

(2)D―D

【商品名=D―D、DC油剤、テロン】
 主に、土壌センチュウに効果を発揮する。くん蒸期間の7~10日は同じであるが、クロルピクリンに比べガス抜けが悪いので、丁寧に耕起して、ガス抜き期間3~4日を確実において作付けする。ガス抜きが不十分だと薬害が起きるので注意する。

(3) クロルピクリンD―D剤

【商品名:ソイリーン、ダブルストッパー】
 クロルピクリンとD―Dを効率的に配合し、両者の長所を生かした製品である。刺激臭もやや少なく扱いやすいが、D―Dのガス抜き期間をきちんと守る必要がある。

(4)ダゾメット

【商品名:ガスタード微粒剤、バスアミド微粒剤】
 微粒剤を土壌に均一散布し、土壌の水分に反応して、有効成分であるMITC(メチルイソシアネート)を出して効果を発揮する。そのため、処理時には適度な水分が必要であり、ガス抜き期間も10~14日と比較的長く耕耘が2回以上必要である。主に土壌病害に効果を示す。

(5)ホスチアゼート

【商品名:ガードホープ液剤】
 栽培作物の生育中および栽培後半期にも効果を発揮するセンチュウ防除剤である。高い殺センチュウ力を有し、安定した効果を示す。土壌条件の影響はほとんどない。
 最後に、「世界土壌デー」「土の日」を「土の日は一日だけか」で終わらすことがなく、基本的な技術として日々取組む必要があること、そして筆者の好きな言葉である「肥料は1年の宝、土は末代の宝」「土は暖かい。(守ろう土の健康、すすめよう土壌診断)」「人が土を守れば、土は人を守る」で結びたい。

 

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