イノシシ捕獲と農業被害の関係「イノシシ対策インパクトレポート」公開 うぃるこ2023年3月15日
野生動物による被害の対策を支援するソーシャルベンチャー、株式会社うぃるこ(新潟県長岡市)は、イノシシの捕獲・出没と農業被害との関係に着目し、イノシシの選択的捕獲が与える中期的な影響を検証したインパクトレポートを公開。捕獲コストやシステム利用、現場で得たノウハウ、課題などリアルな情報を盛り込んでいる。
野生動物による農作物被害額は2010年度の239億円をピークに減少傾向だが、2021年度の被害額は155億円と高い水準にある。特にイノシシは、他の大型哺乳類に比べ行動範囲は比較的狭いが繁殖力が高く、生息域は2018年度までの40年間で約1.9倍に拡大した。
同社は、「繁殖力の高いイノシシによる農作物被害を防ぐには被害を出す個体を捕獲すること」、また、「生息個体数を減らすにはウリ坊を多く産むメスの成獣を狙って捕獲すること」が重要という仮説を立て、個体を選択的に捕獲した際の被害状況や生息個体数など社会的変化(インパクト)を可視化するための実証事業を行った。
同事業では新潟県長岡市の大積エリアで、2020年の夏~冬にかけて集中的に捕獲し、その後1年間における出没や被害状況をモニタリング。同エリアを捕獲を実施する介入エリアと捕獲を行わない非介入エリアに分けてモニタリングすることで、捕獲行為の純粋な効果を把握しながら、イノシシのエリア間での移動状況も分析した。
結果として、介入エリアの成獣の推定頭数35頭、目標捕獲頭数25頭に対して約32%にあたる8頭を捕獲し、同事業とは関係のない猟友会がさらに6頭を捕獲した。観察されたインパクトとして、介入エリアの獣道は42.8%の減少、農地周辺の掘り返し跡は14.2%の増加、住民の被害感情は若干の減少、介入エリアでの成獣の推定頭数は8%減少した。
成獣の選択的な捕獲により加害するイノシシの群の単位は減ったが、隣接する山地エリアのイノシシが農地に降りてきたため被害減少は限定的だった。被害減少のためには、①継続的な捕獲により加害個体を減らし続けること、また②捕獲に加えて電気柵等の他の防除施策を組み合わせる必要があることと結論付けた。
同レポートは、野生動物被害に悩む全国の自治体にとって参考となる情報、具体的には工数やコスト、効果的な捕獲や錯誤捕獲対策のコツ、ICT技術の導入方法なども公開している。また、「酷暑」との向き合い方や、地元関係者とのコミュニケーションなど現場でリアルに課題となったことを伝えている。
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日