地域農業の守り手から攻め手へ JA出資型法人2014年12月16日
「JA出資型農業法人全国交流会」JA全中
JA全中は12月11、12日に東京都内で平成26年度JA出資型農業法人全国交流会を開いた。地域の農地を維持し営農を継続させていく役割に加え、最近では新規就農者の育成など担い手づくりに取り組む法人が増えている。今後期待される役割と法人経営としての課題などを議論した。関係者ら130人が参加した。
担い手づくりの役割も重要に
◆法人の力で生産拡大
農協改革の議論でJAは農業関連事業に特化すべきと指摘があるが、JAグループは「食と農を基軸として地域に根ざした協同組合」として、担い手をサポートするとともに地域住民と一体となって▽農業者の所得増大、▽農業生産の拡大、▽地域の活性化、を目標とした自己改革に取り組むことを決めた。
JA全中の馬場利彦参事兼営農経済改革推進部長は「JAは信用共済事業をバックに営農事業をしっかり展開していることを見せていくことが重要だ。その一つがJA出資型法人」だと指摘した。JA出資型法人は「担い手がいない農地をしっかり守る、耕作放棄地を出さない」というのがおもな目的だったが、今後は「新たな担い手、新規就農者の育成の受け皿がJA出資型法人の第2の使命になってきた」という。 とくに生産拡大の具体的な取り組みとして「たとえば加工業務用野菜を生産しようといっても担い手は手一杯。JA出資型法人が播種し管理し、担い手につなぐなどの取り組みをしなければ輸入農産物から市場を取り戻すといっても難しい」というのが産地の現状だ。「JA出資型法人の力をバックにしない限り目標は達成できない。総合JAの強みを発揮して自己改革に取り組むことが重要だ」と馬場参事は強調した。
交流会では秋田県立大学助教の李侖美氏がJA出資型農業法人へのアンケート結果から現状を報告。08年調査と13年調査をくらべると、事業分野に新規就農研修を加えている法人が5.4%から22.6%に急拡大していることが示された。李氏は「JA出資型法人は、それ自体として地域農業の担い手でありながら、他方で新たな担い手を生み出しているところに新たな役割を見出すことができる」と指摘した。
谷口信和東京農大教授は地域農業をめぐる課題を整理したうえでJA出資型法人の課題などを指摘した。
地域農業をめぐっては不透明な交渉が続くTPPと、燃油、飼料など生産資材が高騰で将来不安が拡大している。一方で担い手への農地利用集積をめざした農地中間管理機構への対応と同時に新規就農者の確保と、多様な市民の参加による農地・農業生産の維持、飼料を含む畜産物の地産地消や6次産業化に取り組む直売所発展などが課題となっている。
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基調講演する谷口教授
◆経営者研修の視点も
谷口教授はこれらの課題に対して「JAによる農業経営を軸として構築すること」が求められているとしてJA出資型法人は「最後の担い手から守り手へ、そして攻め手へと役割の発揮が期待されている」と話した。
そのうえでJA出資型農業法人としては、公共的性格を持つものの、地域農業にとっては経営持続も重要なことから、条件不利農地ばかりを引き受けない契約を追求するなど、収支均衡原則から脱却する必要性も挙げた。また、新規就農者研修では、技術研修だけではなく経営研修が大事なことも強調された。
事例報告では茨城県・JA常陸の(有)みずほ農援の菊池正志取締役が報告した。土地利用型農業の推進役となることが目的。作業受託は200ha、農業経営事業でも100haを超えている。オペレーター等社員は20数人だが臨時雇用や研修を含ると年間100人程度の雇用を生み出している。荒廃農地の防止に貢献しているが、課題としては経営感覚の育成などを挙げた。
宮崎県のJA都城の(有)アグリセンター都城。広大な農地の活用のための茶産地育成、水稲とカンショを中心とした畑作を担ってきている。ただ、ほ場の分散による作業効率の低下、機械作業による省力化・生産性向上などの課題があるという。宮丸代四郎専務は経営持続のために、従業員の農産物に対する熱意からの適切な管理、リーダーシップの発揮の重要性と、水田作業受託では加工用米などへの需要シフトにも合わせた取り組みも課題だと話した。
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パネルディスカッションでは全国の先進事例が報告された
◆地域維持も重要に
滋賀県のJAレーク伊吹の(有)グリーンパワー長浜。農地の利用集積を図り、利用権設定して大規模な受託をしているが、集落内の農地調整は農家自身による話し合いでの合意をもとに信頼を得ているという。「意欲ある大規模経営とグリーンパワーで地域を守っていくのが基本」だという。農家にとってはJAに依頼することが安心感となるし、JAにとっても地域の地権者とつながりを保つことがこれからも重要になると同JAの伏木衛経済部次長は話した。 北海道のJA浜中町の(株)酪農王国は地元の建設業者、運輸業者、飼料、乳業メーカーなど地域酪農との密接につながりのある異業種との連携で設立した。酪農がなくなってしまえば「炭坑が閉山された街と同じになってしまう」との危機感から設立したが、それぞれの業種が関連し地域内循環型経済も実現している。農家をはじめとして地域住民が暮らしていくため地域資源としての酪農を維持する仕組みだと同JAの高橋勇参事は話した。
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