今年はカメムシ減り稲刈り本番 昨年深刻被害の埼玉・加須市 適期防除の成果か2025年9月12日
昨年、深刻なイネカメムシ被害に見舞われ収量が大きく減った埼玉県の米どころ・加須市で稲刈りが本番を迎えた。今年は今のところ、カメムシ被害は少ない。関係者は「最終的にどうかはまだわからないが、地域あげた適期防除が功を奏したのでは」とみている。
稲刈りが進む埼玉県加須市(JAほくさい管内)の田んぼ
埼玉県北東部にある加須市は、肥沃な土壌と利根川から引かれた水に恵まれ、県内有数の米どころとなっている。
カメムシほとんど見ない
9月初旬、市内の大規模農家・恩田浩明さんは「やられたほ場もあるが、全体としてカメムシは少ない」。別の農家も「適期に防除したこともあってカメムシは少なく、収量も平年並みだろう」と話した。
JAほくさいは「防除の成果のためか、カメムシはほとんど見ない。管内では水不足はあまりなく生育は良いが、高温の影響はあるようだ」(営農経済部)とする。埼玉県全体でみると、2023年は高温の影響で品質が低下し、「コシヒカリ」では3等が、「彩のかがやき」では3等や規格外が増えた(グラフ参照)。
令和5年(2023年)は高温の影響で「コシヒカリ」では3等が、「彩のかがやき」では3等や規格外が多くなった。出所:全農さいたま「営農についての情報」9月2日付
加須市農業振興課の担当者は「補助金の申請に来た方など農家に聞いたところでは、高温の影響はあるが、今年はカメムシは少ない。昨年からの防除の効果が出ているのではないか」と話す。埼玉県の農産物安全課にも、今のところ被害情報はきていないという。
農家・JA・自治体が防除で連携
2024年はイネカメムシの被害が直撃し、収量が大きく減った。加須市が認定農業者272名を対象に調査したところ、防除しなかった農業者の10a当たり収量は平均4.6俵にとどまった(埼玉県の平均収量は約8.2俵)。彩北アグリおおとね(加須市北大桑)の塚田静男会長は「イネカメムシと高温障害で平年の8割減だった」と語った(「埼玉の米どころ・加須市 猛暑とカメムシで収量『8割減』も」JAcom4月8日)。
2025年も埼玉県内ではイネカメムシの越冬、発生が多数確認され、関係者は警戒を強めていた。JAほくさいでは適期防除を呼びかけ、JAの要請もあって埼玉県と加須市はそれぞれ防除への補助金を新設。防除もしっかり行われ、連携した努力が実ったようだ。
親子連れで稲刈り体験
ベテラン農家(中央・奥)の説明を聞く稲刈り交流の参加者ら(9月7日、埼玉県加須市)
9月7日には、加須産の米を産直で買っている親子連れが埼玉農民連の松本慎一副会長の田んぼを訪れ、炎天下で稲刈り体験が行われた。ベテラン農家から鎌の使い方を教わると、子どもたちは体験用に残された稲穂を真剣に刈り取った。この日は稲刈りをしたことがある子が多く、手慣れた様子で作業が進んだ。
稲刈り交流に参加した産直友の会会員と地元農家のみなさん(9月7日、埼玉県加須市)
稲刈り体験後、近くの公民館で松本さんの田で取れた新米コシヒカリを握ったおむすびや地元産野菜の料理に舌鼓を打った。埼玉県新座市から参加した主婦は「産直のお米は高いので月1袋(5kg)にしていましたが、スーパーの方が高くなったので今は4袋取っています」と話した。
稲刈り交流を主催した埼玉県産直友の会の森田みどりさんは、「都市で暮す人たちに関心をもってもらい農業のことを理解するため田植えや稲刈り交流を続けてきました。お米があまり高いと困りますが『安ければ安いほどいい』ではなく、農家が再生産できる価格で購入し、食べて応援したいと思っています」と語った。
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