米:農業倉庫火災盗難予防月間2018
【現地ルポ・JA会津よつば高田88号倉庫(福島県)】実需に応じた米販売農業倉庫が機能発揮2018年11月30日
農業倉庫火災盗難予防月間スタート(平成30年11月15日~平成31年1月31日)
実需者のニーズに応えた米の生産・販売が求められている。必要な時に必要な量と品質の米を安定して供給するためにはカントリーエレベーター、ライスセンターなど大型乾燥調製貯蔵施設とともに農業倉庫の役割がますます重要になっている。JA全農と公益財団法人農業倉庫基金は、この大事な倉庫を守るため、毎年11月15日から翌年1月31日までを「農業倉庫火災盗難予防月間」として、JAでの保管体制の再点検などを徹底するよう呼びかけている。この運動にあわせて、全国トップクラスの米産地である福島県のJA会津よつばの「高田88号倉庫」を取材した。
最初に、広々としたところにある農業倉庫だと印象を受けた。それもそのはず、JA会津よつばの低温農業倉庫「高田88号倉庫」は、会津の中心地、会津若松市の西10km余り、北方遙かに飯豊、磐梯・吾妻連峰を望む西会津盆地の南に位置する。住宅や工場などの進出が見られるものの、倉庫の周辺はまだ、水田を中心とした農地が広がる。
同JAの「高田88号倉庫」は、敷地面積約1万3390平方mに、約1970平方mの鉄骨平屋建て。中に548.69平方mと536.16平方mの2つの倉庫を備えている。両倉庫の収容能力は4万320俵(60kg)。フレコン貯蔵もできる。
(写真)30段に積み上げた米袋とフレコン
◆JAのモデル的倉庫に
この倉庫ができてからまだ日が浅い。JA会津よつばは平成28年3月1日に会津地方の4JAが合併して広域JAとしてスタートを切ったばかり。「高田88号倉庫」は、合併前のJA会津みどりの農業倉庫として27年の12月に竣工した。もともと美里地区の倉庫が老朽化したため建て替えたものだが、今はJA会津よつばのなかで最も新しく、最も効率的な倉庫として、同JAのモデル的な施設となっている。
倉庫の周辺はきれいに清掃されており、広い敷地内には不要なものは何一つ見当たらない。倉庫に入って、まず目を引くのは「前室」がひろびろとしていることだ。広さは722.21平方mで天井も高い。「新しい倉庫だからといって、特に他と異なるところがあるわけではないが、作業がやりやすいように前室が広くとってある」と、同JA米穀部検査施設課の六角一治課長は言う。
(写真)JA会津よつば 「高田88号倉庫」の外観
余裕のあるスペースで、無駄な作業や移動する必要がなく、米の積み下ろしや検査など、効率的、かつ安全にできるというわけだ。加えて前室は完全閉鎖型で、荷下ろしや積み込み作業の時、風にあおられたり、雪や雨に吹き込まれたりする心配がない。
前室の床にも塵ひとつなく、きれいに清掃されている。取材に訪れた時は雨の日だったが、たまたま米を運んできたトラックが入った。そのトラックが米を下ろして出庫した後に大きなタイヤ跡が残ったが、職員がモップで、あっという間に拭き取った。もちろん倉庫内は、事務所も含めて全面禁煙だ。「喫煙者のため、外に灰皿を置いていたが、自然にだれも使わなくなった」と六角課長。なんとなく喫煙が憚れるような雰囲気がある。
倉庫の管理は、本郷営農経済センターが担当する。普段は2人の職員が交替で、午前10時と午後2時に見回りを行い、マニュアルに沿って庫内の温度、湿度、さらには積み重ねた米袋の穀温を、上(30段の上から2段目)、中(真ん中)、下(下から2段目)というように3か所で、毎回チェックし、記録している。
(写真)タイヤ跡は、その都度モップで拭き取る
◇ ◆
周辺を山に囲まれた会津地方は昼夜の温度差が大きく、「コシヒカリ」「ひとめぼれ」を中心に、食味のよさで全国トップクラスの米産地として知られる。当然ながら、JA会津よつばは米の販売に力を入れており、「安全・安心・安定」をキーワードに販売戦略を立てている。「安全」はエコファーマー米や特別栽培米など環境に優しい米づくり、「安心」は生産履歴記帳の実施や「JA米」のブランド確立だが、「安定」は、「1年を通じて安定した品質の米を供給するため、低温倉庫による品質保持を徹底し、共同乾燥調製施設の高品質米の安定供給をめざす」としており、そのための重要な施設として低温倉庫を位置付けている。
原発事故風評被害を克服し、今では「会津米」の評価は回復してきた。それだけに販売戦略上、年間を通じて米の品質を保つ農業倉庫には重要な役割がある。
(写真)農業倉庫を管理するJA会津よつばの職員のみなさん
◆JGAP米への対応も
JAでは、会津地区の稲作部会がJGAP(農業における食品安全、環境保全、労働安全などを確保するため、生産工程を管理する取り組み)認証を取得するなど、品質に対する関心が高まっており、他の地区でもJGAP認証を取得する動きが出ており、JAもそれを奨励している。
「JGAPは収穫後の倉庫保管の履歴も求められる。将来はJGAPの米が入る可能性があり、これまでのマニュアルに加えて対応を考えておかなければならない」と同JAみどり地区本部地域農業振興課の筒井秀課長は将来を見越す。そうなるとエリア内だけでなく、全域からJGAP米を保管するようなケースも想定されるわけだ。
同JAには90か所前後の農業倉庫があるが、その多くは老朽化が進んでおり、フレコン貯蔵できる倉庫も限られている。「より一層、集荷・検査、保管体制を充実させ、実需者の信頼を高めたい」と筒井課長。その拠点として、同JAのモデル的な「高田88号農業倉庫」の役割は大きい。
(写真)農業倉庫火災盗難予防月間のポスター
(関連記事)
・火災盗難予防対策の確認を JA全農米穀部(18.11.30)
・農業倉庫火災盗難事故防止対策(18.11.30)
・平成30年度 農業倉庫火災盗難予防月間の取り組みについて(18.11.30)
・農業倉庫火災盗難予防月間にあたって(18.11.30)
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