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2014.12.08 
JA全農が畜産技術シンポジウム2014開催一覧へ

新技術でリードする和牛生産

 JA全農畜産生産部は11月28日、東京都内で全農畜産技術シンポジウム2014を開いた。今年のテーマは「新技術でリードするこれからの和牛生産」。総飼養頭数が減少している和牛の現状を打開するため、双子生産などの新技術による子牛増産と農家の所得向上対策などが報告された。

◆新技術にチャレンジ

あいさつする小原常務 国内畜産生産基盤の強化に向けて、全農の小原良教常務は▽新興国の食料需要増大と円安下での有利な飼料原料調達・有効活用、▽疾病のグローバル化にともなう産地維持・競争力強化のための疾病コントロール対策、▽生産性格差の縮小などの課題を挙げた。
 とくに生産性向上に向けては「畜産農家のニーズに応えるだけでなく、もっと先を見据え思ってもみないことを提案するぐらいの取り組みが重要だ」と強調した。そのためには先人が培った知識の積み上げを基本に、現場での観察力と課題把握力、過去の成功体験にとらわれない想像力などが大事になる、と集まったJAグループの畜産技術関係者に呼びかけ「新しい技術に農家と一緒にチャレンジしてほしい」と強調した。
 和牛繁殖雌牛は平成22年の68.4万頭をピークに中小農家の離農や口蹄疫禍などで26年には59.5万頭まで減少した。
 素牛生産を拡大する課題として全農畜産生産部の神谷誠治次長は▽へい死事故の改善、▽分娩間隔の短縮を指摘した。子牛の事故率は分娩時に5.3%、哺育・育成期に4.0%と計9.3%だという。また、現在の分娩間隔は405日なので間隔を短縮すれば増産できる。
 神谷次長はへい死事故をなくし分娩間隔を21日間短縮すれば年間8万2000頭の子牛を増産できるとのシミュレーションを紹介した。この日は、これら課題を解決するための技術として▽母牛の数が変わらなくも増産が可能な双子生産技術、▽事故低減と分娩間隔短縮を実現するICT技術の活用、▽子牛の衛生管理などが報告された。

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あいさつする小原常務

 

◆双子生産の有用性 

 全農ET研究所東日本分場の大野喜雄場長は「ET和牛受精卵2卵移植技術」について報告した。
 大野場長によるとこれまでの移植実績から1卵ETより2卵ETのほうが受胎率が高いことが示され、乳牛経産・和牛経産牛で60%、F1経産牛で70%が期待できるという。さらに双子率は約50%との実績があることから、母牛1頭あたり約1.5頭の産子が期待できるなど、収入増につながる試算を報告した。
 飼料畜産中央研究所笠間乳肉牛研究室の大日方塁氏は双子生産試験の結果について報告した。
 双子生産のポイントは、母牛には分娩前から双子用の増飼を行うことや、分娩事故の可能性が高くなるため介助が必要なこと、さらに産子を良好に発育させるための個別管理の必要性などを指摘した。また、F1雌牛を母牛に用いても和牛と同様に分娩させることができるという。

 

◆「牛温恵」の成果

最新技術の解説に熱心に耳を傾けた 分娩事故を防ぐとともに、畜産農家の労力軽減につながる画期的なシステムとして注目されているのが「モバイル牛温恵」。シンポジウムでは開発者の(株)リモートの宇都宮茂夫会長が報告した。
 「牛温恵」は牛の胎内に挿入したセンサーが連続して体温を計測してデータをサーバーに通報し、分娩兆候特有の変化があるとそれを畜産農家に通報メールで知らせるシステムである。「牛を観る時を教えてくれるシステム」で宇都宮会長は集計データから4%の分娩事故率が0.2%にまで削減したと報告、「安眠できる環境を整え、実質的な増頭につながる」などと話した。この体温計測システムを発情監視に活用すれば授精のタイミングも体温グラフから分かるため受胎率を上げることにもつながる。
 この「牛温恵」の導入促進にはジェイエイ北九州くみあい飼料も取り組んでいる。
 報告した谷政秀営業第2部部長によると同社管内では、素牛価格が1頭50万円を超えるような状況に肥育経営が悪化しているばかりか、「繁殖農家のなかには、高騰する素牛価格を未収金精算に当て廃業してしまう農家も出ている」といい、管内で子取り用雌牛飼育頭数はこの5年間でピーク時の88%となるなど、生産基盤のが急務となっているという。
 そのため機器導入費用の一部を支援するなど地域のモデル的農家を育成する事業要領を策定、「牛温恵」導入による分娩事故低減と生産性向上をめざして畜産農家を支援している。対象は30〜40頭規模の農家で、今後は酪農家への導入も検討したいという。
 また、JAなどから「牛温恵」をリースする方式で小規模農家でも通信料負担だけで活用可能となる仕組みや、さらに子牛の事故率低減のための全農クリニックセンターとも協力を進めたいという。

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最新技術の解説に熱心に耳を傾けた

 

◆クリニックの活用

 子牛の衛生管理については、全農家畜衛生研究所クリニックセンター東北分室の宮内大輔氏が報告した。
 子牛のへい死はもちろん、若齢期の疾病罹患はその後の発育にも影響する点で経済的損失をもたらすとして衛生管理の重要性を強調した。疾病発生時は、早期発見・早期治療が必要だが、感染症を発生させた環境そのものをいち早く改善していくことが重要になる。治療に使用する抗生物質は万能ではなく、耐性菌を発生させることもある。また、治療自体がコスト増となる。
 宮内氏は予防のために▽病原体との接触を断つ、▽家畜にストレスをかけない、を挙げ、たとえば保菌牛と子牛を分離して管理するカーフハッチの利用や農場への入場時の消毒の徹底、エサや水の衛生管理など「基本が大事」と強調した。事例として子牛事故率約18%という農場で消毒実施や分離飼育などを基本管理を実践したところ、事故率ゼロを実現した取り組みが紹介された。
 また、クリニック検査の活用で病原体を特定し、そのデータをもとに農場主も消毒の重要性を理解して実践しているなど、「感染症の予防はコスト低減、事故率低減につながり収益増をめざすことができる」と宮内氏は指摘した。


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