生乳生産量微減にとどまる Jミルク見通し2018年10月24日
(一社)Jミルクは10月23日、30年度の生乳と牛乳乳製品の需要見通しを公表した。9月に発生した北海道胆振東部地震の影響で北海道で大幅な生乳生産の減少が懸念されたが10月以降、生産は持ち直し、年度全体の生産量は前回見通し(7月27日)より微減にとどまるという。
北海道胆振東部地震と全道停電の影響による生乳廃棄などで、北海道では9月の生乳生産量は30万1000tと前年比95.4%で、7月時点の見通しより1万8000tの減少となる見込みだ。
停電などで搾乳ができないことから乳房炎の影響が心配されたが、影響は限定的で、9月下旬以降のホクレンの受託乳量は前年同期を上回る水準まで回復しているという。
その結果、北海道の30年度下期の見通しは193万8000t、同99.2%となった。前回見通しよりも1万7000tの減少にとどまる見込みだ。ただ、今後は不作となった今年度産の牧草、デントコーンへの自給飼料への切り替えが進むため、Jミルクはそれが生乳生産に及ぼす影響について注視が必要だとしている。
都府県は7月の記録的な猛暑による生産量への影響が懸念されたが、8月以降は暑さが和らぎ、下期は164万2000t、同98.2%となり、前回見通しよりも1万2000t増加する見込みとなった。
牛乳等の生産量は9月は北海道地震や台風の影響で前年比96.5%と落ち込んだ。このうち牛乳は同100.3%と維持し、牛乳の代替として加工乳の製造量は同107.9%となったが、そうした品目集約の影響で成分調整牛乳は同61.3%と減少した。
北海道の地震と台風被害は都府県の生乳需給にも影響を与えている。9月の北海道から都府県への「移入量」は4万9000tで同92.5%となった。前回見通しでは6万tの移入量を見込んでいたが、災害の影響で大きく減少した。年度全体では49万2000t、同109.3%となる見通しだ。年度全体の都府県の生乳供給量見通しは329万1000tで同98.3%。不足分を北海道からの移入で補っているが、Jミルクによると災害の影響で9月は一部で供給不足があったものの、学校給食への欠品は起きなかったという。
◇ ◇
Jミルクは北海道胆振東部地震への対応は、生産者、農協、乳業メーカーなど懸命な努力で生産集荷体制への復旧が行われ、需給上の混乱は最小限にとどめることができたとしている。ただし、毎年のように猛暑、台風、集中豪雨、暴風雪など異常気象と大地震も起きていることから、従来にも増した災害への備えや、緊急時の協力体制について「総合的な議論をはじめたい」(前田浩史専務理事)としている。
一方、都府県の生乳生産は29年度に2歳未満の乳用牛が1000頭増えるなど明るい材料が出ているが、当面は減少基調が続く見通しで、都府県は北海道からの広域流通生乳に依存する構造が続く。しかし、今回の北海道地震、台風による生乳供給への影響を考えると、特定地域への依存は牛乳類の需給を不安定にすることが改めて示されたことから、Jミルクでは都府県の増産に向けた対策の検討が改めて必要だとしている。
北海道の生産回復で乳製品需給も安定して推移することから、農水省は脱脂粉乳、バターの今年度輸入枠数量(バター:1万3000t、脱脂粉乳:2万7000t)の変更はしないことを同日決めた。
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