高齢社会進展でサポート事業に活路 ヤマト運輸に学ぶ① 生活の"助っ人"役に【全中・ミライ共創プロジェクト研修】2023年12月14日
JA全中教育部は、11月7、8の両日、ミライ共創プロジェクトの第3セッションを東京都町田市で開いた。ヤマト運輸が「暮らしのために、できること、いろいろ」をコンセプトに展開している社会課題解決ビジネスを学んだ。少子高齢化が進むなかでJA事業のヒントにもなりそうだ。
生活の"助っ人"役に
「ネコサポ」がめざすこと
セッションではヤマト運輸地域共創部の櫻井敏之部長が「ヤマト運輸の社会課題解決ビジネス」と題して講演した。
櫻井敏之部長
ネコサポで貢献
重要課題の一つに「地域コミュニティー」を掲げ、地域経済の活性化を加速させるビジネスモデルの構築をめざす同社は2016年、暮らしのサポートサービスを行う「ネコサポステーション」の第1号店を同市の多摩ニュータウン永山団地の商店街に開設した。
同店は宅配便の発送受け付けはもちろん、商店街のスーパーと連携し、購入した商品を当日に自宅に届ける買い物便や地域団体が活動の場として活用するコミュニティースペースとして利用している。利用者は70、80代の高齢者だ。月に1500人ほど来店する。
多摩ニュータウン永山団地の商店街に開設された第1号店
多摩ニュータウンは1970年代に多摩丘陵地を開発して作られた。新宿まで30分と利便性は高いが、丘陵を開発したため坂や階段が多く、さらに団地は5階建てでエレベーターは付いていない。高齢化が進み団地内の商店街での買い物が負担となる住民も増えている。
そんな住民たちを支える新事業として始めたのが生活相談窓口としての「ネコサポ」だ。櫻井部長は「新規事業の入り口は高齢者。経営資源を生かしながら、さまざまな生活サービスを地域の事業者とともに提供する。それによって暮らしの利便性向上や地域活性化、住みよい街づくりに貢献したい」と話す。
多摩ニュータウン
ドライバーの目活用
現地視察は永山店のほか、駅直結の商業施設に開設したグリナード永山店、今年5月に入居者約2万人の町田市の木曽団地に開設した町田木曽店も訪ねた。この団地に限定した高齢化率は50%に近いという。
駅直結の商業施設に開設したグリナード永山店
町田木曽店
ネコサポ店には暮らしの相談窓口スタッフの「コンシェルジュ」が1~4人常駐している。宅配便発送の荷受けもするが、暮らしの相談を受ける。認知症サポーターや脳活性化エクササイズインストラクター資格などを取得している。
買い物系サービスや家事系サポートサービスを提供するスタッフは「キャスト」と呼ばれ、各エリアに数人配置されている。
キャストは「暮らしの便利屋」として浴室の清掃、部屋の掃除機掛け、エアコンのクリーニング、キッチンの清掃、ごみ出しなどの家事サポートサービスを行う。原則内製化して提供しているが、一部はパートナー企業に依頼している。コンシェルジュやセールスドライバーとの連携も重視している。実際、セールスドライバーが配達先を回って「困りごと」を拾い上げ、新しいサービスとしてキャストに提案することもある。
その実例がインターホンの交換だ。セールスドライバーが配達先のインターホンが壊れていて、大声で呼び出さなければならないという経験をもとにインターホンの交換サービスを思いついた。それもカメラで来訪者を確認できる機器へのグレードアップの提案だ。
提案を受けた利用者からは「どこに連絡すれば直してくれるか分からなかった。ちょうどよかった」と喜ばれたという。
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