JAの活動:新世紀JA研究会 課題別セミナー
肥料農薬・安く良質な資材を調達・供給【引屋敷 透・JA全農肥料農薬部長】2018年6月26日
・共同購入の新たな購買方式へ
生産資材のコスト低減はJA改革の大きな課題の一つ。JA全農は肥料銘柄の絞り込み、ジェネリック農薬の普及、低価格農機の開発など、着実に進めています。6月19日に行われた新世紀JA研究会第19回課題別セミナーから、今回は肥料・農薬の取り組みをJA全農の引屋敷透肥料農薬部長より報告します。
【肥料事業】
◆銘柄絞り価格引き下げ
平成29年度は、トータル生産コストの低減に向けて、新たな肥料の共同購入を実施した。対象となる品目は高度化成、NK化成の一般銘柄で全国約400銘柄を延べ17銘柄に絞り込んで事前の予約を積み上げ、概ね1~3割の価格引き下げが実現しました。30年度は、対象品目に普通化成一般、苦土入り高度化成を追加し拡大します。一層の集約をすすめ、生産者の期待に応えられる価格の実現に努めます。
多様な生産者ニーズに対しては、粒状肥料をブレンドしたBB(バルクブレンド)肥料の活用に取り組んでいます。BB肥料は、好みのブレンドの少量生産に適しているため、まさに「オーダーメード」の肥料であり、土壌診断との併用により土壌・作物に見合った適正施肥ができます。
肥料製造には肥料取締法の登録・届出が必要ですが、生産者からの直接要望による庭先配合等について法律が変わろうとしています。規制緩和によって自由な製造が想定されます。
全国9か所の広域土壌分析センターや各県・JAの分析センターを中心に、土壌診断に基づく適正施肥によるコスト低減にも引き続き取り組みます。また、生産者向けの勉強会として青空講習会なども行っています。
安定確保に向けては、原料はほとんどが海外からの輸入であることから、産地の多元化を図り安定供給に努めています。海外山元との関係強化や資本提携を進めており、中国では瓮福紫金に資本参加しています。また、国産品の安定供給に向けて、大粒硫安の増産にも取り組みを始めました。本会と宇部興産が出資し、生産・保管・出荷を行う日本硫安サービス(同)を設立しました。新肥料年度から本格稼働に入ります。
【農薬事業】
◆ジェネリックや担い手直送
トータル生産コスト低減の取り組みでは、まず、ジェネリック農薬の開発に取り組んでいます。日本は、世界に比べジェネリック農薬の普及率は低い状態にありますが、少しでも価格を引き下げていくためには今以上に開発・普及に取り組む必要があります。平成29年度は開発候補剤を絞り込み、1品目の開発に着手しました。30年6月8日に改正農薬取締法が可決されたため、再評価制度が導入されます。認められた規格の範囲内であれば、より低コストで効率的な製造方法への変更も可能となります。これによって、ジェネリックの活躍の場が広がり、コスト低減となることを期待したい。
水稲除草剤は、平成29年度約100品目削減し、約340品目へ集約しました。31年度までには300品目程度へ集約します。毎年新しい剤が出てきますが、効果と安全性が高い剤に集約し、コスト削減に繋げたい。
水稲大規模生産者の生産コスト低減を支援するため、平成26年度から4㌶以上に相当し、通常規格より2~3割安価な「担い手直送規格」の取り扱いを開始しました。確実に実績を伸ばしており、30年産は、既に8万4000㌶に普及拡大しました。31年産の12万㌶の普及目標達成に向け、園芸分野も視野に、取扱い品目を拡大し取り組みを強化していきます。
共同開発原体の国内向け価格引き下げを図るため、海外販売の取り組みも開始しました。その一環として昨年11月に、農薬の製造機能や海外ネットワークの機能をもつ三菱商事と共同で「ZMクロッププロテクション株式会社」を設立しました。全農が保有する原体を中心に登録と製造を担い、海外市場や国内の非農耕地向けの原体や製剤の拡販に向け、この4月から事業を開始しました。
化学農薬だけでなく、天敵農薬であるミヤコバンカー・スワルバンカーの導入と系統推奨農薬・資材を組み入れた総合防除(IPM)体系の確立・普及にも取り組んでいます。
【JA支援強化と体制整備】
◆県域越えた広域物流
配送コスト削減に向けた物流合理化では、県域を越えた広域物流体制の整備として、平成24年度に北部九州農薬広域物流センターが稼働しました。29年12月からJAさがも参画した。最新の倉庫管理システムによる在庫管理や個々の組合員からの注文に対応するセット組みを行い、出荷している。他のブロックにも拡大していきたい。
JA段階の物流コスト削減に向け、県域物流方式による農家戸配送拠点体制の整備も促進する。また、組合員からの受注効率化に向けた「Web受発注システム」の開発にも取り組みます。
事業体制の効率化・スリム化に向けては、「農業生産現場のニーズにもとづく基本機能の継続・強化」「重複・多段階業務を排除した効率化」「多様化する組合員ニーズへ対応する機能の強化」の3つの視点から検討を進めています。
肥料の集中購買などの自己改革を着実に実践するなかで、農家の所得向上に貢献し、組合員・JAから評価していただけるよう、さらに努力していきたい。
※このページ「紙上セミナー」は新世紀JA研究会の責任で編集しています。
新世紀JA研究会のこれまでの活動をテーマごとにまとめています。ぜひご覧下さい。
重要な記事
最新の記事
-
【特殊報】タケノコ園でキモンホソバノメイガの被害 府内で初めて確認 京都府2025年10月14日
-
2つの収穫予想 需給を反映できるのはどっち?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年10月14日
-
農業遺産の次世代への継承を考えるシンポジウム開催 農水省2025年10月14日
-
「サステナウィーク」15日から 持続可能な消費のヒントが見つかる2週間 農水省2025年10月14日
-
なめらかな食感と上品な甘み 鳥取県産柿「輝太郎フェア」15日から開催 JA全農2025年10月14日
-
インドで戦う卓球日本代表選手を「ニッポンの食」で応援 JA全農2025年10月14日
-
松阪牛など「三重の味自慢」約80商品 お得に販売中 JAタウン2025年10月14日
-
秋元真夏の「ゆるふわたいむ」鹿児島県で「マロンゴールド」を収穫 JAタウン2025年10月14日
-
「令和7年産 新米PR用POPデータ」無料配布を開始 アサヒパック2025年10月14日
-
「Rice or Die」賛同企業の第2弾を公開 お米消費拡大に向けた連携広がる アサヒパック2025年10月14日
-
腸内細菌由来ポリアミンの作用研究 免疫視点から評価「食品免疫産業賞」受賞 協同乳業2025年10月14日
-
米の成分分析計AN-830 新発売 ケツト科学研究所2025年10月14日
-
利用者と作り手が交流 オリジナル商品の「推し菓子」オンライン投票 パルシステム東京2025年10月14日
-
新営農型発電所「たまエンパワー生活クラブ前戸発電所」竣工式開催2025年10月14日
-
鳥インフル 米国からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年10月14日
-
鳥インフル 英国からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年10月14日
-
鳥インフル デンマークからの家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年10月14日
-
鳥インフル カナダからの生きた家きん、家きん肉等の輸入を一時停止 農水省2025年10月14日
-
亀田製菓とコラボ「ポテトチップス ハッピーターン味」期間限定で新発売 カルビー2025年10月14日
-
「惣菜管理士」資格取得へ 3390人が受講開始 日本惣菜協会2025年10月14日