JAの活動:農協時論
【農協時論】JAグループの新たな扉の向こう側 普天間朝重 JAおきなわ代表理事理事長2021年4月19日
日本農業はいま大きな曲がり角にきているのではないでしょうか。地域経済の要である農業が元気になることが地域そのものを活性化していくことになるといえます。そしてそれを中心的に支えていくのが農協組織だといえます。そうした農協組織のトップや生産現場の農業者の方がいま何を考え、今後どのようにしていけばいいのかなどについて自由に提起していく場として「農協時論」を設け、定期的に連載していくことにしました。
その第1回は、JAおきなわの普天間理事長にお願いしました。
普天間朝重 JAおきなわ代表理事理事長
JAグループがこの6年間で共有している危機は、農業の危機、経営の危機、協同組合の危機の3つであったが、新型コロナウイルスの蔓延がこうした危機を増幅している。
それにしても我が国自慢の製造技術や開発力はどうなってしまったのだろう。コロナ対策の必需品であるマスクやワクチンを海外に依存している現状をどう捉えればいいのだろうか。特にワクチンについては輸入に頼るしかないなかで十分確保することができず、海外に比べてワクチン接種が著しく遅れている状況にある。製品開発力だけでなく日本の外交力にも疑問を感じざるを得ない。マスクやワクチンではなく、これが食料だったら......。食料自給率が38%しかない我が国で輸入が途絶するというような事態になれば、国民の命の問題に直結する。経済のグローバル化が進展するなかで肝心な点を見落としてはいないだろうか。
また、新型コロナウイルスの蔓延は貧富の格差を拡大することが明白になった。世界的なSDGsの取組みと逆行するようなこうした事態は直ちに是正されなければならない。社会的に弱い立場の人々が寄り添ってつくりあげた協同組合が今こそ持続可能な社会づくりの先頭に立たなければならず、なかでも食料の安定供給を担う農協がリーダーシップを発揮すべきだ。
コロナは、JAの経営にも大きな影響を与えている。事業面では観光客の激減で地域の特産品の販売に苦戦しており、マイナス金利の出口もますます遠のき、JAでは利ザヤが縮小するなか、農林中金の奨励金引下げも段階的に進められており、経営の厳しさは深刻の度を増している。
こうしたなかで改革は待ったなしだ。JAおきなわでは昨年度から店舗再編に踏み切り、まず金融店舗については第一弾として昨年度は12店舗廃止し、今年度も12店舗を廃止する予定になっている。購買店舗の再編についても本年2月に組織決定し、本年度末を期限に動き出している。
さらに金融店舗については営業時間帯を従来の8時30分開店の4時閉店から9時開店の3時閉店に時間短縮し、購買店舗についても支店ごとに異なるが時短営業を実施している。
共済事業については全職員による一斉推進を廃止し、事務作業に多くの時間を費やす人事考課制度については店舗再編に伴う人事配置が安定するまでの間、一時凍結している。こうした一連の改革をより確実に進めるため「理事長メールコミュニケーション」を設定し、改革のキーパーソンである全支店長に理事長自ら定期的にメールを発信し、情報交換している。
改革は、ひとたび決断を下し、あとは実行あるのみとなったら、その結果に対する責任や心配を完全に捨て去らなければならない。重要なのは環境に合わせて変化する経営の柔軟さだ。脱皮できない蛇は滅びるしかない。
「ひとつの扉が閉じると、別の新たな扉が開く」。今年度は次年度以降の新たな3ヵ年計画を策定する重要な年度だ。新たな扉の向こうがどうなっているにせよ、勇気をもって一歩踏み出そうではないか。
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