JAの活動:農協時論
【農協時論】JAグループ新任役員に期待するもの 普天間朝重 JAおきなわ代表理事理事長2021年8月23日
普天間理事長は、自らが講演もしたJAグループの新任常勤理事研修会の内容から、新任役員に(1)現在の厳しい経営環境を受け入れながらも、必ず切り抜けるという確信をもつこと、(2)改革の壁を認識し、これを取り払うこと、(3)人材育成は職員教育だけでなく、役員自ら自己鍛錬に励むことなどを提言しています。
普天間朝重 JAおきなわ代表理事理事長
8月18・19日に全中が主催するJAグループの新任常勤理事研修会が東日本地区において開催された。受講者は59名で、8月25・26日開催の西日本地区の36名を合わせると総勢95名の参加である。私も講演と全体討議のパネラーとして東日本地区の開催に参加させていただいた。
新型コロナウイルスの感染拡大や大雨などの自然災害が多発し、受講者も組織のリーダーとしての立ち位置に不安を抱える中での研修なだけに、グループ討議のコーディネーターを務める慶応大学名誉教授・奥村昭博先生の「10年後のJAのあるべき姿とそのための人材育成」の課題設定は役員の皆さんには重いテーマだっただろう(激変する社会経済情勢の中で10年後を見通せとは)。
だが、このテーマの主眼が「経営者は長期の構想力を持ち、ビジョンを発信し続ける」となれば10年後の姿の議論は避けては通れない。その際、気候変動リスクや地政学リスクに加えて我が国においては「2030年問題が大きな壁になるだろう」と奥村教授は言う。それは団塊の世代の労働市場からのリタイアと高齢化の加速であり、労働力不足と高齢者のケアが社会問題化すると指摘する。前者への対応として外国人労働者の受け入れが進んでいるが、それは食料の海外依存と同様の危険性をはらむとし、むしろITやAI、DXなどの先端技術の活用がカギを握ると主張する。
後者については、今回の研修の報告者の一人、エーザイ(株)の知創部長・高山千弘氏の報告を引き合いに出し、「エーザイは今後、薬剤のみならず、診断、治療、介護、生活支援などエーザイの持つ膨大な情報をプラットフォーム化して社会に還元する新たなビジネスモデルを展開する」のはJAの総合事業にも通ずるものがあり、「他社に"共感"する」、「患者とその家族の喜怒哀楽を第一義に考える」、「治療薬を売るな、治療薬で社会を変えろ」などの行動理念はJAの事業推進の在り方にも共通すると助言する。
私に与えられたテーマは「混迷する社会における真のリーダーシップとは?」。この講演を依頼されたとき全中から「一人称での報告をお願いしたい」との注文があったので、報告では改革の実践例を紹介しながらも、そのバックボーンとなっている自分自身の経験や胸に刻む著名人の名言などを織り込みながら、(1)現在の厳しい経営環境を受け入れながらも、必ず切り抜けるという確信をもつこと(ストックデールの逆説)、(2)改革の壁を認識し、これを取り払うこと、(3)人材育成は職員教育だけでなく、役員自ら自己鍛錬に励むことなどを提言した。
新任役員の皆さんは今回の研修を活かして今後、現場に戻ってさっそく実践に取り組むだろう。その際にはJAグループには農業協同組合研究会や人づくり研究会、新世紀JA研究会など様々な研究会があるのでぜひ参加してほしい。きっと10年先を見据えた情報収集や分析力の向上、悩みを共有する仲間づくりの一助となるだろう。
順境にも不安や恐れがあり、逆境にも喜びと希望がある。皆さんの今後の活躍に期待したい。
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