JAの活動:食料・農業・農村 どうするのか? この国のかたち
【現地ルポ】福岡・JAみなみ筑後(2)大坪康志組合長に聞く 「農業元気に」モットー2024年7月18日
福岡県最南部みやま市と大牟田市を事業エリアとするJAみなみ筑後は、大坪康志代表理事組合長を先頭に、今年度総代会で承認を得た「3大プロジェクト」をもって、今後の地域農業展開をめざしている。髙武孝充元JA福岡中央会営農部長と村田武九州大学名誉教授がJAみなみ筑後の大坪康志組合長に話を聞いた。
農業・農村を元気にするにはほど遠い「改定基本法」
髙武 まず、お聞きしたいのは、先日国会で成立した「改定食料・農業・農村基本法」をどう評価されるかということです。
JAみなみ筑後 大坪康志組合長
大坪 1999年に成立した基本法は、WTO(世界貿易機関)農業協定に整合性をとる形で、世界的にも食料過剰時代に制定されました。食料自給率は40%でした。今回の改定はロシアのウクライナ侵攻に円安が加わり、しかも世界的食料危機といわれる時代であって、国内農業の生産を拡大し、食料自給率を上げるのが最も重要と考えていました。
残念ながら、改定された基本法は法的拘束力のない13の付帯決議がつけられてようやく成立したものの、これでは農業・農村を元気にできません。第二次アベノミクス農政を検証することから始めるべきでした。
髙武 また、「食料供給困難事態対策法」も制定されました。
大坪 これは戦時立法のようなものですね。その内容は、有事には政府の判断で「特定食料」、つまりカロリーの高い穀物に生産を転換させるというものです。わたしは、食糧法の改正で対応できたと思っています。
直接支払い検討を
米麦二毛作先進地の筑後平野でも、米価下落と資材高騰によるコスト増に耐えられず、しかも雇用労働力の確保もむずかしくなるなかで、米・麦・大豆の所得は交付金を含めて10アールわずか10万円ですよ。1998年から米について経営安定対策が導入されましたが、生産調整を達成しているにも関わらず米価は下がり続けました。基準価格も底なしに下がる一方でした。制度設計の失敗ですね。米についても麦・大豆のようにコストと手取り価格との差額を直接支払いしなければ、稲作農家は生産意欲を失います。このままでは、土地利用型農業の継続が困難になり、農地は荒れるでしょう。政府がいう、「農業の多面的機能」など絵空事になります。
JAみなみ筑後の「3大プロジェクト」
髙武 「食料・農業・農村/どうするのか? この国のかたち」について率直な意見を聞かせて下さい。
大坪 農協は、まずは、「自己改革に対する取り組み」、そして「事業部門の収支改善・再構築による持続可能なJA経営基盤の確立・強化」を必死でやらなければなりません。
総代会で承認を得た、「3大プロジェクト」は、第1に、経営維持拡大・新規就農者増加をめざした労働力支援。第2に、新しい生産販売対策で販売高の増加。JAの販売高(直売所を除く)を90億円から100億円に伸ばす。第3に、新しい支店の建設と、周辺施設の開発・活性化の研究・実践による地域社会に貢献できるJAみなみ筑後をめざすというものです。
「農業が元気にならないとこの国はない」のだと、組合員だけでなく、地域住民に自信をもって訴えていきたいものです。このことを地道にやりながら地域の方々が気楽にJAみなみ筑後に足を運んでくれるような姿にしたいと思っております。全国でこれを実施すればこの国のかたちが見えてくるのではないでしょうか。というのも、JAみなみ筑後の事業エリアの中心をなすみやま市では、市民が参加する資源循環の展開が、JAの「3大プロジェクト」の推進を支えてくれているからです。
【あわせて読みたい記事】
【現地ルポ】福岡・JAみなみ筑後(1)地域住民とともに資源循環 生ごみで発電、液肥化(2024.7.18)
重要な記事
最新の記事
-
米価 5kg4000円台に 13週ぶり2025年9月17日
-
飼料用米、WCS用稲、飼料作物の生産・利用に関するアンケート実施 農水省2025年9月17日
-
JAグループ「実りの秋!国消国産 JA直売所キャンペーン2025」10月スタート2025年9月17日
-
安全性検査クリアの農業機械 1機種8型式を公表 農研機構2025年9月17日
-
生乳によるまろやかな味わい「農協 生乳たっぷり」コーヒーミルクといちごミルク新発売 協同乳業2025年9月17日
-
無人自動運転コンバイン、農業食料工学会「開発特別賞」を受賞 クボタ2025年9月17日
-
木南晴夏セレクト冷凍パンも販売「パンフェス in ららぽーと横浜2025」に初出店 パンフォーユー2025年9月17日
-
防草シート・アルミ反射シート発売 太陽光発電の雑草管理と発電効率向上に GBP2025年9月17日
-
鳥インフル ブラジルからの生きた家きん 輸入停止措置を解除 農水省2025年9月17日
-
雪印メグミルク×PILOT「牧場の朝ヨーグルト」にメルちゃんパッケージ登場2025年9月17日
-
常温保存可能のA2ミルクに「ミルクコーヒー」「ミルクフルーツ」新発売 守山乳業2025年9月17日
-
広がるキャッシュレス決済 FP招き家計管理のコツを解説 パルシステム東京2025年9月17日
-
横須賀市と連携 障がい者農園「はーとふる農園よこすか」を開所 日建リース工業2025年9月17日
-
デリカアドバイザー養成研修 90人を修了認定 日本惣菜協会2025年9月17日
-
シンガポールのアグリテック企業「アリアンテック」千葉大学内に事業拠点開設2025年9月17日
-
ギネス世界記録認定 東洋ライス「世界最高米」使用「金しゃりむすび」期間限定発売2025年9月17日
-
「第2回全国ぶどう選手権」17日に東京で開催日本野菜ソムリエ協会2025年9月17日
-
【JA全農の若い力】家畜衛生研究所(1)養豚農家に寄り添い疾病を防ぐ クリニック北日本分室 菅沼彰大さん2025年9月16日
-
【石破首相退陣に思う】戦後80年の歴史認識 最後に示せ 社民党党首 福島みずほ参議院議員2025年9月16日
-
【今川直人・農協の核心】全中再興(6)2025年9月16日