自民党が農協の役割を議論2014年3月18日
自民党は3月14日、「新農政における農協の役割に関する検討PT」で農協改革についての議論をスタートさせた。党としての考え方を5月までにとりまとめる。
座長は森山裕衆院議員。あいさつで「『政府の農林水産業・地域の活力創造プラン』のなかに農協改革も位置づけられている。農協がいかに新農政のなかで役割を果たしていくかは大変大事。農協は民間の自主的な組織であることも十分配慮しながら議論を重ねていくことが大事」と述べ、4月から5月をめどに党として考え方のとりまとめをしたい意向を示した。
また、齋藤健・農林部会長は「一部に現場の実態をよく分からないまま農協バッシングのような声があるのも現実。私どもはそういう議論には与しない。あくまでも農家にとっていいものになるように、攻めの農林水産業を実現していくという政権の政策に沿ったものとなるように直すべきところは直す、よくやっているところはもっと伸ばす、その方向で議論を進めていきたい」とあいさつした。
この日は農水省から農協の現状について説明を受け意見交換した。経済事業改革が重要だとの意見が出たが、一方で農協のこれまでの自主的な改革の成果や地域の生活を支えているインフラとしての総合事業に注目すべきとの意見も出され、信用・共済事業分離論を強くけん制する意見も多かった。また、協同組合らしさを徹底的に追求することが大事との指摘もあった。
(写真)
3月14日の自民党「農協の役割に関する検討PT」第1回会合のようす
◇
同PTは今後、農業者やJAグループなどからヒアリングをし議論をしていく予定だ。おもな意見は以下のとおり。
○経済事業改革に全力を挙げるべき。なぜ手を打てないのか。職員教育をどうすべきか、農産物を売るためにはどうすればいいか地道にやっていけばいい。経営者なら誰でもやっている。経営経験のある人間にやらせるべきだ。このまま信用と共済をやめろということになれば農協は吹き飛ぶ。そうなれば大変なことになる。
○上から目線ではなく、JAや組合員と一緒になって改革を議論する必要がある。それが原点。JAも合併し職員数も減ってきた。JAも自主的に改革を進めてきたことを謙虚に見ていかなければならない。
○JAグループは世界的にも評価されている。アジアやアフリカも発展のなかで協同組合の仕組みを大事だということから日本に学ぼうとしている。世界の協同組合運動のリーダーとして役割を果たしている。中国との深い連携があり韓国の農協も日本が育ててきた。しかし、韓米FTAの締結直前に韓国の農協は金融、共済事業は分離させられた。今、韓国の農協は低迷している。こういう韓国の状況のなかで、この(日本の)農協改革の問題が出ているのではないか。
○改革は必要だが改悪になってはいけない。農協の販売手数料は2.2%に過ぎない。信用、共済を分離すればやっていけない。総合農協として農家を支えることが大事。農家がなくなれば地方はなくなる。十把一絡げに議論をしてはならない。
○農業には多様性がある。上から画一的な改革を押しつけるのではなく農協そのものが地域実情に応じて自ら改革をしてくることが望ましいのではないか。
○信用、共済事業の分離が俎上に載せられるのではないか心配だ。郵貯もそうだが、ユニバーサルサービスとして全国隅々まで行き渡らせるために、不採算部門に金融部門をつけて、その利益で補うというのは大変、知恵のある制度だと思う。
○昭和30年代のなかごろから合併を進めてきた。共同仕入れで生産資材は安くなるといったが、商社より高い場合が多い。農家との約束を果たしていないのではないか。
○厚生連病院が114。3万6000床の規模で医療でも農協は役割を果たしていることを知るべき。営農指導員は1万4000人。人件費は6000億になるが、資材企業に営農指導員はいない。経済事業は構造的に赤字になることも理解すべきだ。
○生活事業を利用するために准組合員のほうが多い地域もある。組合員ではないからと利用を断れないのも実態だ。
○市場原理で農協を変えていこうという論調はもってのほか。農協は助け合いが原点。その良さを見極めないと議論を誤る。市場原理を追求するのではなく、協同組合らしさを徹底追求すべきだ。
○農協は社会的インフラであることを忘れてはならない。
○規制改革会議の文書では「イコールフッティングの促進」とあるが、これは経済人の言葉。イコールフッティングでないところに農協としての社会的な良さがある。これはしっかり守っていかなくてはならない。この文言は除外するという気持ちで議論をしていかなければならない。
(関連記事)
・「フェアな競争関係」が農協を強くする(2014.03.17)
・貿易ルールづくり「農業者の話し合い重要」(2014.03.14)
・都市農業こそ農の価値発信を JA全中がシンポ(2014.03.13)
・米政策で研究会 「政策決定に現場の声を」(2014.03.11)
・米政策見直し案の財源問題(2013.11.18)
重要な記事
最新の記事
-
【座談会・どうするJAの担い手づくり】JA鳥取中央会・栗原隆政会長、JAみえきた・生川秀治組合長(1)2025年9月18日
-
【座談会・どうするJAの担い手づくり】JA鳥取中央会・栗原隆政会長、JAみえきた・生川秀治組合長(2)2025年9月18日
-
【座談会・どうするJAの担い手づくり】JA鳥取中央会・栗原隆政会長、JAみえきた・生川秀治組合長(3)2025年9月18日
-
【JA全農の若い力】家畜衛生研究所(3)病気や環境幅広く クリニック西日本分室 小川哲郎さん2025年9月18日
-
【全中・経営ビジョンセミナー】伝統産業「熊野筆」と広島県信用組合に学ぶ 協同組織と地域金融機関の連携2025年9月18日
-
【石破首相退陣に思う】米増産は評価 国のテコ入れで農業守れ 参政党代表 神谷宗幣参議院議員2025年9月18日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】協同組合は生産者と消費者と国民全体を守る~農協人は原点に立ち返って踏ん張ろう2025年9月18日
-
「ひとめぼれ」3万1000円に 全農みやぎが追加払い オファーに応え集荷するため2025年9月18日
-
アケビの皮・間引き野菜・オカヒジキ【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第356回2025年9月18日
-
石川佳純の卓球教室「47都道府県サンクスツアー」三重県で開催 JA全農2025年9月18日
-
秋の交通安全キャンペーンを開始 FANTASTICS 八木勇征さん主演の新CM放映 特設サイトも公開 JA共済連2025年9月18日
-
西郷倉庫で25年産米入庫始まる JA鶴岡2025年9月18日
-
「いざ土づくり!美味しい富山を届けよう!」秋の土づくり運動を推進 富山県JAグループ2025年9月18日
-
日本初・民間主導の再突入衛星「あおば」打ち上げ事業を支援 JA三井リース2025年9月18日
-
ドトールコーヒー監修アイスバー「ドトール キャラメルカフェラテ」新発売 協同乳業2025年9月18日
-
「らくのうプチマルシェ」28日に新宿で開催 全酪連2025年9月18日
-
埼玉県「スマート農業技術実演・展示会」参加者を募集2025年9月18日
-
「AGRI WEEK in F VILLAGE 2025」に協賛 食と農業を学ぶ秋の祭典 クボタ2025年9月18日
-
農家向け生成AI活用支援サービス「農業AI顧問」提供開始 農情人2025年9月18日
-
段ボール、堆肥、苗で不耕起栽培「ノーディグ菜園」を普及 日本ノーディグ協会2025年9月18日