住民巻き込み地域創生 JA-IT研究会2015年2月9日
自己決定力を高め主体的に
政府が進めようとしている「地方創生」は、それを担う主体が明確でない。その役目はJAを中心とする協同組合にあるとして、JAの役職員からなるJA‐IT研究会は2月6、7日、東京で公開研究会を開き、「地方創生に向けてJAの戦略を磨く」のテーマで、特にJAの取り組み報告をもとに意見交換した。
研究会で坂本誠・全国町村会調査室長は、今の農村を襲っている状況で「3つの空洞化」を挙げる。つまり地域コミュニティの空洞化、政治・経済マネジメント主体の空洞化である。すでに高齢者そのものが減少に転じ、地域コミュニティが成り立たなくなり、さらに合併によって市町村とJAの広域化が進み、住民同士、地域と地域外をつなぐつなぎ手としての機能を喪失しているというわけだ。
この状態を打開するにはどうするか。坂本室長は、[1]市町村・協同組合はつなぎ役としての立場を再認識する、[2]旧村・小学校区等を拠り所にした「地域マネジメント主体」の再構築、[3]協同組合と市町村との関係再構築の必要性を挙げる。
つまり、市町村とJAは、地域の主体としての認識を新たにして地方創生に望むべきだということである。JC総研前常務の松岡公明農林年金理事長は、これを「当事者意識とエンパワーメント」として、今研究会テーマの問題として提起した。
エンパワーメントとは、社会的弱者が、自分自身の置かれている抑圧された要因に気付き、その状況を変革していく方法や自信、自己決定力を回復させ、強化できるよう援助することを意味する。
JAの取り組み報告で、愛知県JA愛知東は、過疎化している一級河川の源流域の環境を維持することで、下流域250万人の産業とくらしを守っている。このため農村自立を支援。祭り、歴史や伝統芸能等文化行事、共働作業などの共通社会資本を介して、むら社会のすばらしさを継承する活動を展開。
また24農協がネットワークをつくり農業ビジョンづくりを進めている十勝農協連は、ブランドづくりや人材の育成、さらに燃料配送など共通する業務を統一して効率化し、長期ビジョンに基づいた産地づくりを進め、成果を挙げている。営農指導事業を中心とするネットワーク化で、合併に走る前に、可能なところから統一化しているところに特徴がある。
1支店1協同活動を地域ぐるみで進めた静岡県JAなんすんの北部地区本部は、耕作放棄地に職員と農家が一緒にソバを栽培し、「あしたか山麓裾野そば」の商品化にこぎ着けた。
いずれも自己や組織の置かれている状況を認識し、やるべきことを自覚して主体的に状況を打破した。特にディスカッションでは、JA愛知東とJAなんすんの取り組みから、新しいアイデアを次々実現するため、さまざまな組織を重層的に積み重ねていくことが重要との指摘があった。
(写真)
地方創生とJAの役割を探ったJA―IT研究会
(関連記事)
・豊田通商がコメ事業参入(2015.01.26)
・「地方創生」テーマに公開研究会 JA-IT研が2月(2014.12.22)
・営農経済事業の改革へ 地域の実態に合わせ工夫を JA-IT研究会(2014.11.19)
・11月14、15日 JA-IT研が都内で公開研究会(2014.10.22)
・JA-IT研 11月29、30日に公開研究会(2013.11.13)
重要な記事
最新の記事
-
米の作況指数の公表廃止 実態にあった収量把握へ 小泉農相表明2025年6月16日
-
【農協時論】米騒動の始末 "瑞穂の国"守る情報発信不可欠 今尾和實・協同組合懇話会委員(前代表)2025年6月16日
-
全農 備蓄米 出荷済み16万5000t 進度率56%2025年6月16日
-
「農村破壊の政治、転換を」 新潟で「百姓一揆」デモ 雨ついて農家ら220人2025年6月16日
-
つながる!消費者と生産者 7月21日、浜松で「令和の百姓一揆」 トラクターで行進2025年6月16日
-
【人事異動】農水省(6月16日付)2025年6月16日
-
3-R循環野菜、広島県産野菜のマルシェでプレゼント 第3回ひろしまの旬を楽しむ野菜市~ベジミル測定~ JA全農ひろしま2025年6月16日
-
秋田県産青果物をPRする令和7年度「あきたフレッシュ大使」3人が決定 JA全農あきた2025年6月16日
-
JA全農ひろしまと広島大学の共同研究 田植え直後のメタンガス排出量調査を実施2025年6月16日
-
生協ひろしま×JA全農ひろしま 協働の米づくり活動、三原市高坂町で田植え2025年6月16日
-
JA職員のフードドライブ活動で(一社)フードバンクあきたに寄贈 JA全農あきた2025年6月16日
-
【地域を診る】「平成の大合併」の傷跡深く 過疎化進み自治体弱体化 京都橘大学学長 岡田知弘氏2025年6月16日
-
いちじく「博多とよみつひめ」特別価格で予約受付中 JAタウン2025年6月16日
-
日本生協連とコープ共済連がともに初の女性トップ、新井新会長と笹川新理事長を選任2025年6月16日
-
【役員人事】日本コープ共済生活協同組合連合会 新理事長に笹川博子氏(6月13日付)2025年6月16日
-
【役員人事】2027年国際園芸博覧会協会 新会長に筒井義信氏(6月18日付)2025年6月16日
-
農業分野で世界初のJCMクレジット発行へ前進 ヤンマー2025年6月16日
-
(一社)日本植物防疫協会 第14回総会開く2025年6月16日
-
農業にインパクト投資を アンドパブリックと実証実験で提携 AGRIST2025年6月16日
-
鳥取・道の駅ほうじょう「2025大大大スイカフェスティバル」22日まで開催中2025年6月16日