所有者不明農地 利用権設定など議論-農水省2017年11月21日
農林水産省は所有者不明農地の取り扱いについての検討を進めている。固定資産税などの管理費用を負担している人が、簡易な手続きで利用権設定を行える制度を新たに検討すべきではないかなどが論点になっている。
農林水産省によると相続未登記農地、あるいはそのおそれのある農地は全農地(約447万ha)の約2割の93.4万haとなっている。そのうち遊休農地は6%、5.4万haに過ぎず多くは耕作されている実態にある。
同省が行ったアンケートでは、相続未登記農地は法定相続人の1人がすべて固定資産税を負担しているケースが全体の8割を占める。現場からは「父親の死去で自宅周囲の農地の相続登記を考えたがお金がかかることから先送りした。ただ固定資産税や土地改良区の水利費は自分で払っている」といった声があった。
一方、所有者(過半の持分権者)が不明の遊休農地については、農業委員会による公示、都道府県知事による裁定があれば農地中間管理機構に最長5年間、利用権設定ができる制度がある。しかし、都道府県が訴訟になった場合を懸念して農業委員会に必要以上に相続人を捜すことを求めたり、そもそも相続人の全体像が分からず、過半の持分権者が判明しているかどうか不明なケースもあって農業委員会が公示してよいか判断できないという問題もある。そのため実際に制度が活用されたのは2件、0.56haにとどまっている。
また、所有者不明農地の多くを占める固定資産税や水利費などを支払っている耕作者が今後リタイアして、共有農地を農地中間管理機構に預けようとする場合は、農業経営基盤強化法を活用することになるが、自らすべての相続人にあたって同意を得なければならない。また、利用権設定は5年間とされているため、5年ごとに手続きをしなければならない。
このような問題点を指摘したうえで農水省は▽固定資産税などの管理費用を負担している人が簡易な手続きで利用権設定できる新たな仕組みを検討すべき、▽利用権設定の期間は5年では短い、▽事後的に共有者が現れた場合の利害調整の仕組みづくりなどを検討の論点としている。
(関連記事)
・コンクリート張りハウスも「農地」に法改正へ(17.11.08)
・遊休農地面積 前年比3万ha減-農水省(17.08.03)
・農地集積 伸び鈍化-農地中間管理機構(17.05.25)
・農業者同意なく基盤整備可能に(17.02.09)
・企業の農地取得「選択肢増やすのが政治の役割」-小泉氏が容認論(16.02.17)
・全農地の約2割が相続未登記 農水省(16.12.27)
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日