若手農家 規模拡大-「農業白書」を閣議で了承2018年5月22日
政府は5月22日の閣議で平成29年度食料・農業・農村白書を了承した。特集では次世代を担う49歳以下の若手農業者の姿を分析。稲作経営では直近の10年間で経営規模を1.5倍に拡大していることなどが明らかになった。
2015年農林業センサスによると、農業経営体の97%を占める販売農家132万9591戸のうち、49歳以下の若手農業者がいる「若手農家」は14万675戸、「非若手農家」は118万8916戸となっている。
若手農家は販売額1000万円以上が45.2%、面積では10ha以上が73.1%を占める。稲作単一経営でみると、若手農家は2005年の平均4.7haから15年には7.1haへと1.5倍規模拡大していることが分かった。2010年から15年で30.7%が上位規模に移動していた。
稲作単一経営以外でも若手農家は規模を拡大している。05年を100とすると15年は畑作=156、露地野菜=126、乳用牛=121、肉用牛=122となっている。
常雇いの雇い入れも直近10年間で5.3%から12.6%へと増加していることも分かった。
白書では、若手農家では機械や設備の投資規模が高くなっており、それが労働時間の短縮につながって規模拡大と農業所得の増大につながっていると分析している。
また、今回初めて白書のために若手農業者1885人にwebアンケート調査を実施しその結果も掲載している。農業のあり方について「国内だけでなく海外にも目を向けるべき」との回答が35.1%を占めた。部門別では稲作が40.6%、果樹が42.6%、肉用牛が51.9%となっている。
今後伸ばしていきたい方向では販売金額が大きい経営体ほど「IoT等新技術の導入」、「異業種との連携」などの回答が多くなっていることが分かった。また、出荷・販売先では「消費者への直接販売」が56.7%ともっとも多かった。白書は新技術の導入や販路拡大など若手農業者が「伸ばしていきたい方向を後押しできる環境づくりが重要」だと指摘した。
そのほかトピックスでは農業産出額が2年連続増加となったことを取り上げ、今後の農業生産の増大に向けては国内だけではなく需要が増大している海外も視野に入れた農業の実現が鍵になることも強調した。そのほか、日EU・EPA交渉の妥結と関連対策、「明治150年」関連テーマの明治期の生糸輸出の歴史、「動き出した農泊」として農山漁村へ都市住民、海外旅行者の訪問交流をビジネスとして実現する地域を2020年までに500地域を作り出し農村地域の所得向上につなげる取り組みなども紹介している。
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