2021年国産麦 供給過剰に-麦の需給見通し2021年3月2日
農林水産省は2月26日に食糧部会を開き2021(令和3)年度の麦の需給見通しと米の需給見通しの変更について諮問し、答申を受けてそれぞれを決定した。国産小麦は実需者の購入希望数量より販売予定数量のほうが5万1000t多く供給過剰となっている。食糧部会では麦の需要拡大が課題と指摘された。
2020(令和2)年度の小麦の総需要量はコロナ禍の影響による外食や菓子などの需要減退で前年より20万t少ない550万tとなる見込みだ。
一方、1人あたりの年間消費量は1974(昭和49)年度以来、31~33kgで安定的に推移しており、大きな変動は見られない。そのため2021年度の総需要量は過去7年の平均総需要量である574万tと見通した。
国産小麦の生産量は2021年の作付け予定面積から85万tを見込み、在庫量を加えて国内の流通量は86万tと見通した。ただし、民間流通協議会の調べでは2021年産の販売予定数量が86万4000tであるのに対して、実需者の購入希望数量は81万3000tと、5万1000tの供給過剰となっている。
平成28年からは国産麦への評価が高まり供給不足というミスマッチが続いていたが、6年ぶりに供給過剰となった。
昨年3月に策定された基本計画では2030(令和12)年に小麦の生産努力目標を108万tとしている。食糧部会では日清製粉の山田貴夫取締役社長が「108万tの国産小麦を消費できるが、実需者のニーズに見合った品質の麦をつくってほしい」と実需者と結びついた生産の重要性を強調した。
また、大麦・はだか麦も販売予定数量12万9000tに対して購入希望数量が9万3000tと供給過剰の見込みとなった。
JA全中の馬場専務は「大麦、はだか麦は豊作が要因。生産者が安心して生産できるように内麦優先の原則をもとに需給環境を整えてほしい」と指摘するとともに、豊凶変動対策も必要だと訴えた。
これに対して農水省は麦の場合は、1、2年持ち越ししても米のような大幅な価格下落はないとして、「複数年度で保管し、在庫をならしながら供給することが実需者の信頼と需要拡大にもつながるのではないか」との考えを示す。また、在庫の保管については2年度3次補正予算の麦・大豆対策のなかで、倉庫の新設や改修、民間倉庫利用費用の一部支援などを支援する措置がとられていることも指摘した。
国産小麦ではパン用の「ゆめちから」や日本麺用の「さとのそら」など、栽培特性と加工適性を持つ新品種が開発されており、この2つの品種は作付け面積1万haを超えている。
国産小麦100%の商品も増えている。北海道や群馬ではピザ専用粉が平成30年から発売されている。東京都内の一部では国産小麦100%の学校給食パンを提供しているほか、長野県では国産小麦100%、うち長野県産50%の学校給食用パン、中華麺を開発し、今年1月から県内の全小中学校に通年導入が始まった。
小麦の自給率は12%。令和3年度の輸入量は484万tと見通した。食糧部会では「穀物の自給率向上は重要」、「国産麦の需要拡大に関係者一体となって取り組むべきだ」と強調された。
一方、米については収穫量の確定にともなって、昨年11月の基本指針で923万tとした令和2/3年主食用供給量を2月基本指針で922万tと下方修正した。
見直しは供給量にとどまったことから「需要見通しを見直す必要はないか」との指摘が相次いだ。11月指針では今年6月末までの需要量は711万t~716万tとなっているがコロナ禍で緊急事態宣言が1月に再発令されるなど、外食を中心に需要の減退が懸念される。JA全中の馬場専務は大幅な作付け転換に取り組む必要があるなかで「コロナによる予期せぬ需要減。もっと需給が緩和するというシグナルが生産現場に必要」と強調した。
また、神明ホールディングスの藤尾益雄代表取締役社長は1月末の民間在庫が前年同月比27万t増となっていることや、中・外食への米販売が前年同月比87%となっていることをあげて「需要が減退しているのではないか」と指摘するとともに、卸ではまだ「元年産米を扱っている」と実態を話し、こうした状況を見据え対策を打つべきだと話した。
そのほか、県産米の在庫量を単に削減するよう取り組むだけでなく、過去の販売実績などもふまえた需給環境の改善に取り組むべきとの指摘もあった。農水省はこれらの指摘と最新の販売状況などのデータをもとに緊急事態宣言などの影響をふまえた需給見通しも検討していく考えを示した。
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