ジャスモン酸 動物で精神的ストレス低減効果を発揮するメカニズムを解明 明治大学2025年5月13日
明治大学農学部農芸化学科栄養生化学研究室の金子賢太朗准教授と神﨑華子氏(大学院農学研究科博士前期課程2年)、同農学部 植物制御化学研究室の瀬戸義哉准教授らの研究グループは、植物ホルモンであるジャスモン酸をマウスに経口摂取させることにより精神的ストレス緩和作用を発揮することを発見した(図1)。
ジャスモン酸は植物が虫害や病害に対する防御応答のために生成する物質。従来の研究では植物ホルモンが動物で効果を発揮することは想定外だった。
同研究では、ジャスモン酸がマウスにおいて精神的ストレス緩和作用(抗不安様作用)を発揮するかどうか、代表的な不安様行動(情動行動)の試験系として知られている高架式十字迷路試験(EPM)、オープンフィールド試験(OFT)、新奇環境摂食抑制試験(NSFT)を用いて検証した。
EPMを用いた試験ではジャスモン酸をマウスに腹腔内投与した結果、オープンアームでの滞在時間と滞在頻度を増加させることを明らかにし、ジャスモン酸には抗不安様作用があることを発見(図2)。さらにOFTおよびNSFTでも同様に、ジャスモン酸を腹腔内投与したマウスではセンターエリアでの滞在時間と滞在頻度が増加することを見出した。
さらに同研究では、ジャスモン酸をマウスに経口投与および脳室内投与することによっても高架式十字迷路試験においてオープンアームでの滞在時間が増加することが判明。同研究グループは、マウスの不安を評価する複数の評価系を用い、ジャスモン酸が抗不安様作用を発揮することを明らかにした。
また、中枢神経系において情動行動制御に関わる神経伝達物質として、セロトニンおよびドーパミンが知られることから、ジャスモン酸の抗不安様作用の基礎となるメカニズムを調べるため、ドーパミン系とセロトニン系に注目した。
高選択的セロトニン5-HT1A受容体拮抗薬であるWAY100135を腹腔内投与した結果、ジャスモン酸によるセンターエリアでの滞在時間と進入回数の増加が明らかに阻害されることを確認。また、ドーパミンD1受容体アンタゴニストであるSCH23390をマウスの脳室内に投与することによってもジャスモン酸によるセンターエリアでの滞在時間の増加が阻害されることを見出した。これにより、ジャスモン酸による抗不安様作用が中枢のドーパミンおよびセロトニン系が関与していることを明らかにした(図3)。
同研究成果は、植物ホルモンを介した動物と植物のコミュニケーション機構という新しい概念の提示につながることが期待される。また、同成果を展開させることで、植物ホルモンを標的とした抗不安薬開発につながることが期待される。
同成果は4月3日、Springer Nature社が発行する国際学術誌『Scientific Reports』に掲載された。
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