人工授粉が要らないナシ 農研機構が育成2014年12月5日
農研機構果樹研究所はすべてのナシ品種を結実させる花粉をつくる、突然変異体の作出に成功した。12月3日に発表した。
植物の多くは、多様な性質をもつ子孫を残そうとするため、同じ花の花粉と雌しべでは受粉しない性質がある。これを自家不和合性と呼ぶ。
この性質のため、生産者が安定的に果実を収穫するためには、受粉用の花粉を使って人工授粉する必要があるが、これは花が咲いている短期間に行わなければいけない、労力がかかる、という課題がある。
こうした課題に対し、自らの花粉でも受粉できる(自家和合性を持つ)雌しべを持つ日本ナシ「おさ二十世紀」が、すでに育成されているが、この品種のみを交配すると近親交配によって子どもの性質が劣るとの問題があった。そこで農研機構は、雌しべではなく、花粉側に自家和合性を持たせれば、さまざまな品種との交配が可能となり、この問題を克服できると考え、開発に着手。ガンマ線を長期間照射し突然変異体を創り出す施設で、「幸水」のなかから花粉側に自家和合性を持つ突然変異体の415-1系統の創出に成功した。
通常の幸水同士で自分の花粉を受粉したときの結実率は5%程度であるのに対し、415-1系統は70%以上という高い結実率となった。また、415-1系統の花粉と通常の「王秋」の雌しべを受粉させても70%以上の結実率を示した。
この415-1系統は樹勢が弱く収量性も低いため、これ自体が品種として普及するものではない。しかし、農研機構では、これを交配親にすることで、人工受粉しなくても果実をつける品種や、すべてのナシを結実させる受粉用花粉生産用の専門品種を育成することが可能になるとしている。
また、この手法を用いることで、リンゴなどほかの品種でも同様の育種素材を育成できる可能性もあるという。農研機構では、今後も415-1系統のメカニズムを調査し、自家和合性・不和合性の仕組みを解明したい考えだ。
(写真)
幸水の花(左)と415-1系統の花(いずれも農研機構の発表資料より)
(関連記事)
・肥大が早く多収 青果用サツマイモ「からゆたか」(2014.12.04)
・リン酸肥料削減の基本方針策定 農研機構(2014.11.19)
・ミカン価格平年比15%安 9月の青果物市場(2014.11.06)
・高速作業が可能な水田除草装置を開発(2014.11.05)
・JA全農とっとりが輸出促進でドールと協定(2014.03.26)
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(164)-食料・農業・農村基本計画(6)-2025年10月18日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(81)【防除学習帖】第320回2025年10月18日
-
農薬の正しい使い方(54)【今さら聞けない営農情報】第320回2025年10月18日
-
【浅野純次・読書の楽しみ】第114回2025年10月18日
-
【注意報】カンキツ類に果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 高知県2025年10月17日
-
【国際協同組合年・特別座談会】いまなぜ二宮尊徳なのか 大日本報徳社鷲山社長×JAはだの宮永組合長×JAはが野猪野氏(1)2025年10月17日
-
【国際協同組合年・特別座談会】いまなぜ二宮尊徳なのか 大日本報徳社鷲山社長×JAはだの宮永組合長×JAはが野猪野氏(2)2025年10月17日
-
【国際協同組合年・特別座談会】いまなぜ二宮尊徳なのか 大日本報徳社鷲山社長×JAはだの宮永組合長×JAはが野猪野氏(3)2025年10月17日
-
25年度上期販売乳量 生産1.3%増も、受託戸数9500割れ2025年10月17日
-
(457)「人間は『入力する』葦か?」という教育現場からの問い【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年10月17日
-
みのりカフェ 元気市広島店「季節野菜のグリーンスムージー」特別価格で提供 JA全農2025年10月17日
-
JA全農主催「WCBF少年野球教室」群馬県太田市で25日に開催2025年10月17日
-
【地域を診る】統計調査はどこまで地域の姿を明らかにできるのか 国勢調査と農林業センサス 京都橘大学学長 岡田知弘氏2025年10月17日
-
岐阜の飛騨牛や柿・栗など「飛騨・美濃うまいもん広場」で販売 JAタウン2025年10月17日
-
JA佐渡と連携したツアー「おけさ柿 収穫体験プラン」発売 佐渡汽船2025年10月17日
-
「乃木坂46と国消国産を学ぼう!」 クイズキャンペーン開始 JAグループ2025年10月17日
-
大阪・関西万博からGREEN×EXPO 2027へバトンタッチ 「次の万博は、横浜で」 2027年国際園芸博覧会協会2025年10月17日
-
農薬出荷数量は0.5%増、農薬出荷金額は3.5%増 2025年農薬年度8月末出荷実績 クロップライフジャパン2025年10月17日
-
鳥取県で一緒に農業をしよう!「第3回とっとり農業人フェア」開催2025年10月17日
-
ふるさと納税でこどもたちに食・体験を届ける「こどもふるさと便」 IMPACT STARTUP SUMMIT 2025で紹介 ネッスー2025年10月17日