日豪EPA交渉 国会決議の実現求める2014年4月4日
平成18年に始まった日豪EPA交渉が合意に向けて動き出している。4月7日にはアボット豪州首相と安倍首相の会談が予定され日豪EPAも話し合われる。この交渉開始にあたっては米、小麦、牛肉、乳製品、砂糖などの重要品目を関税撤廃の対象から除外することなどを衆参農林水産委員会で決議をした。これは昨年から参加したTPP(環太平洋連携協定)交渉で、重要5品目などを除外するとした国会決議の土台となったものだ。しかし、豪州は重要品目の市場開放を強く求めており交渉は予断を許さず、生産現場には不安が広がっている。山場を迎えているなか、JAグループは4月3日、日豪EPA交渉で国会決議を実現するよう政府に求める緊急要請集会を開いた。日豪EPA交渉で安易に譲歩すれば、TPP交渉での国会決議も守れなくなる。政府の姿勢が問われる。
◆豪州、強硬な要求
日豪EPA交渉はこれまで7年にわたり16回の交渉が行われてきた。交渉開始を決めたのは第一次安倍政権である。
交渉開始にあたり平成18年12月、自民党農林水産物貿易調査会は重要品目が自由化の対象から除外されるよう交渉することを政府に求める決議を行った(文末参照)。この決議は政務調査会や総務会で了承され、「自民党の最高の決議であったと思う」(森山裕・農林水産貿易対策委員長)。
これをもとに衆参農林水産委員会でも同様の決議を採択している。
さらにこの決議はTPP交渉参加にあたって重要品目を除外するとした国会決議の「まさに土台となったもの。この2つの決議は極めて重い」(萬歳章JA全中会長)といえる。
しかし、豪州のロブ貿易投資大臣は「5品目で大きな進展がない限り協定は結べない」(豪州テレビ局のインタビュー)などと話し、豪雨農業者連盟も3月「すべての農産物の市場アクセスが改善されなければならない」との声明を出すなど包括的な自由化を強く求める声が出ている。
一方、日本側も冷凍牛肉の関税引き下げを提示などの報道もあり生産現場では不安が高まっている。
(写真)
あいさつする萬歳会長
◆地域に打撃大
集会で森山裕・自民党農林水産貿易政策委員長は「豪州はわが国と価値観を共有する国。二国間の関係はいろいろな面で理解しあう間柄でなければいけない」と話したほか、西川公也・TPP対策委員長も「日豪EPAは経済連携協定であって、FTA(自由貿易協定)とは違う。FTAであれば容赦なく自由貿易で進めということになるが、日豪間は経済連携だから交渉のなかで日本の主張を勝ち取るべく政府に努力してもらっていると考えている」と述べた。
日豪の貿易関係は、わが国から豪州への輸出額約1.5兆円に対し豪州からの輸入額は約4.5兆円だ。農林水産物では豪州への輸出は65億円で輸入は4800億円だ。農産物の関税引き下げが行われればさらに輸入が増え貿易のバランスを欠くことになる。
牛肉については国産牛肉が42%で58%が輸入。そのうち豪州産が62%ともっとも多い。豪州産牛肉は飼養方法(牧草肥育か、穀物肥育か)と冷蔵・冷凍で区分されているが、価格と品質面で日本の乳用種の牛肉と競合する。乳用種は国産牛肉の30%を占める重要な存在。輸入だ増大すれば各地の畜産・酪農に大きな打撃を与える。
また、乳製品も輸入の35%を豪州産が占めてもっとも多く、砂糖は2位、小麦は3位といずれもシェアは高く、輸入増加は関連企業をはじめ産地の経済社会にも影響を及ぼすことになりかねない。 集会で萬歳会長は3月に横浜で開かれた気象変動に関する政府間パネルに触れ、「報告では気温上昇、干ばつ等による食料安全保障が脅かされるリスクや、水資源不足などが指摘された」と強調し「わが国においても食料自給力を一層高めていく必要がある」としたうえで、JAグループとしても同日に正式決定した営農・経済革新プランを着実に実行し、「安全安心な農産物の安定的な供給とともに、食と農を基軸にした地域に根ざした協同組合としての使命と役割を果たしていく決意。そのためにも日豪EPAに関する国会決議の実現がなんとしても必要である」と強調した。
◆TPP交渉にも影響
また、代表要請した飛田稔章JA全中副会長は「交渉は最終局面を迎えているが、何としてもこれまでの交渉姿勢を堅持し揺らぐことのないよう強く要請する」と訴えるとともに、決議にある「除外」とは「文字通り、と受けとめている。関税削減も認められないのが決議の実現であり本当の姿」と強調した。さらに「かりに豪州に対して重要品目の市場を開放するとなると今後のTPP交渉で守りきることなどできるか。なし崩し的な譲歩がなされ拙速な合意に進むことがないよう強く要請する」と訴えた。
【日豪EPA交渉に関する国会決議】
▽米、小麦、牛肉、乳製品、砂糖をはじめとする重要品目が除外または再協議の対象となるよう、政府一体となって全力を挙げて交渉すること。
▽交渉期限を定めず粘り強く交渉すること。
▽豪州側が重要品目の柔軟性に十分配慮しない場合は、政府は交渉の継続についても中断も含め厳しい判断をもって臨むこと。
(関連記事)
・TPPを先取りする生産調整政策の廃止(2014.03.26)
・【TPP交渉とこれからの日本農業】多国籍企業と諸国民が対立(田代洋一・大妻女子大学教授)(2014.03.10)
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