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種子法廃止に備えた「通知」の本質2017年11月30日

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【鈴木宣弘・東京大学教授】

 種子法廃止に関して、「稲、麦類及び大豆の種子について」(平成29年11月15日付け29政統第1238号農林水産事務次官依命通知)が出された。
 その内容は驚くべきものである。

 いわく、
3 種子法廃止後の都道府県の役割
(1) 都道府県に一律の制度を義務付けていた種子法及び関連通知は廃止するものの、都道府県が、これまで実施してきた稲、麦類及び大豆の種子に関する業務のすべてを、直ちに取りやめることを求めているわけではない。
 農業競争力強化支援法第8条第4号においては、国の講ずべき施策として、都道府県が有する種苗の生産に関する知見の民間事業者への提供を促進することとされており、都道府県は、官民の総力を挙げた種子の供給体制の構築のため、民間事業者による稲、麦類及び大豆の種子生産への参入が進むまでの間、種子の増殖に必要な栽培技術等の種子の生産に係る知見を維持し、それを民間事業者に対して提供する役割を担うという前提も踏まえつつ、都道府県内における稲、麦類及び大豆の種子の生産や供給の状況を的確に把握し、それぞれの都道府県の実態を踏まえて必要な措置を講じていくことが必要である。
5 民間事業者への種苗の生産に関する知見の提供
(1) 農業競争力強化支援法第8条第4号に基づき、今後、国の独立行政法人だけでなく、都道府県(試験研究機関)から、種苗の生産に関する知見を民間事業者に提供する事案が増加すると考えられる。

 下線は筆者が引いたが、そこだけつなげれば、「都道府県が、これまで実施してきた稲、麦類及び大豆の種子に関する業務のすべてを、直ちに取りやめることを求めているわけではなく、民間事業者による稲、麦類及び大豆 の種子生産への参入が進むまでの間、種子の増殖に必要な栽培技術等の種子の生産に係る知見を維持し、それを民間事業者に対して提供する役割を担う」となる。

 これは、「優良な種の安価な供給には、従来通りの都道府県による体制が維持できるように措置すべきだ」という付帯決議に真っ向から反して、早く民間事業者が取って代われるように、移行期間においてのみ都道府県の事業を続け、その知見も民間に提供して、スムーズな民間企業への移行をサポートしろ、と指示している。つまり、至れり尽くせりで、早くグローバル種子企業がもうけられる下地を農研機構や都道府県が準備することを要請しているだけだ。これでは国民の命の源の種がグローバル種子企業に握られ、高騰し、主要食料の生産も消費も自在に操られてしまうのを助長するだけである。

 もう一度確認すると、種子法の廃止法の附帯決議には、次のような内容が記されている。

・種苗法に基づき、主要農作物の種子の生産等について適切な基準を定め、運用すること。
・主要農作物種子法の廃止に伴って都道府県の取組が後退することのないよう、引き続き地方交付税措置を確保し、都道府県の財政部局も含めた周知を徹底するよう努めること。
・主要農作物種子が、引き続き国外に流出することなく適正な価格で国内で生産されるよう努めること。
・特定の事業者による種子の独占によって弊害が生じることのないよう努めること。

 「附帯決議は気休めにもならない」と前に指摘したが、附帯決議のどの項目にも、それに配慮してどう対応するかはまったく記されていないどころか、附帯決議の主旨を真っ向から否定して、ただただ民間への円滑かつ迅速な譲渡・移行を促すだけの通知が出されるとは驚きである。

 もう一度、問題の簡潔な整理のため、最近、筆者がラジオ番組でやり取りした質問と回答を掲げておく。

■「種子法廃止で、どうなる?国民生活」

*そもそも種子法とは? 米麦・大豆の種について、国が予算措置をして、都道府県が優良な品種を開発し、安く安定的に農家に供給することを義務付けた法律です。

*なぜ、つくられた?
 米麦のような基礎食料は人の命の源で、さらにその源が種なので、国や県が責任をもって農家に良い種を安く提供し、国民への主要食料の安定供給を図るのが不可欠という考えから制定されました。

*今回、廃止になる理由は?
「民間企業の参入を促進して生産資材の価格を下げるため」というのが表向きの理由ですが、安く供給するために、国と県が携わってきたのをやめたら、種の価格は上がってしまうのが当然の帰結です。
 一方、関連法で、これまで県が開発した種の情報は民間に提供しろと義務付けていますので、グローバル種子企業は、材料をただで入手して、遺伝子組み換えなどをして、独占的な販売権を得て、高く売って利益を得られます。これを可能にしてあげるが本当の目的ではないでしょうか。

*なぜ、議論もなく、突然、あんなに急いで決めたのか?
 ちゃんと議論すると、たいへんな問題だとわかってきて反対が強まるので、他の法案とセットで、一連の法案の中に滑り込ませて、急いで採決してしまった、ということでしょう。

*きっかけは、やはり、アメリカの圧力があったのでしょうか?
 合理的推測として、そう考えるのが自然だと思います。

*廃止になって、どんな影響がおこる? プラスの点と、マイナス面は? 米麦の種子の値段が高くなるので、その分、農家経営にはマイナス。できた作物価格も上がるので消費者にもマイナス。 グローバル種子企業にとってもうかる遺伝子組み換えの種などしか販売されなくなり、在来の多様な種資源が失われ、消費者も選択の幅がなくなっていきます。不作が生じると全滅して基礎食料の国民への供給ができなくなるリスクも高まります。
 プラスの面はグローバル種子企業がもうけられること。

*長い目で見ての生活への影響は? 対策法はある?
 一部の種子企業によって米麦のような主要食料の生産と消費がコントロールされ、生産者も消費者も遺伝子組み換えでないものを選択できる余地が減っていく可能性があります。つまり、グローバル種子企業に国民の命が操られてしまうということです。
 遺伝子組み換えに不安をもつ消費者は、生産者に働きかけ、在来の多様な種を守って、生産・消費していくための消費者と生産者と道県行政による強固なネットワークを形成する必要があります。
 また、以前に日本で、グローバル種子企業が日本のある県の農業試験場と遺伝子組み換えのコメの共同開発・商品化を試みましたが、58万人もの反対署名が集まり、断念した経緯があります。このような消費者による意思表示が最終的には事態を変えられることを忘れてはなりません。

 

本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。

鈴木宣弘・東京大学教授のコラム【食料・農業問題 本質と裏側】

 

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