「協同組合らしさ」追求 持続可能な社会めざす 国際協同組合デー2023年7月7日
日本協同組合連携機構(JCA)は国際協同組合デーを記念して7月4日、東京都内で記念中央集会を開いた。国際協同組合同盟(ICA)は、毎年7月第1土曜日(今年は7月1日)を国際協同組合デーに定め、国際連帯と世界平和を願い、協同組合への認知を高め、協同組合運動の思想を広める日として世界に呼び掛けている。集会は「これからの協同組合について話し合おう」をテーマに、協同組合のアイデンティティ―について学ぶとともにワーカーズコープによる「放課後デイサービス」、生協とJAによる「佐渡トキ応援お米プロジェクト」の取り組み報告をもとに、参加者が小グループに分かれてディスカッションした。会場に約190人、オンラインで170人が参加した。
ワークショップの内容を報告する参加者
地球規模の環境悪化や自然災害の多発、食料問題、貧富の差の拡大など社会、経済環境の急速な変化に合わせた協同組合の今日的な役割が問われている。このため協同組合は自らを知り、理解することが求められているなかで、今集会のテーマもこれを意識し、JCAの伊藤治郎常務が「協同組合のアイデンティティ―について説明し、あらためて「協同組合らしさとは」「私たちは何者か」を問いかけた。
集会では、長野県の上田市で事業展開するワーカーズコープセンター事業団・GO!上田地域福祉事業所所長の中山睦美さんが、「放課後等デイサービスGO!」の取り組みを報告した。障がいを持つ子どもの母親から「学校から勧められたが養護学校へ行かせたくない」との声を聞き、「どうして地域で育てられないのか」、「障がいのあるわが子が、可能な限り、自分の目の届くところで暮らしてほしい」との思いを持ち、「デイサービスGO」立ち上げた。
同福祉事業所のスローガンは「みんな違って みんな いい」。その働き方は、「自分の都合」、「家族の都合」、そして「仕事」の順番で、中村さんは「みんなが仲良くするのではなく、したいと思うことが一緒で、目指すものが一緒と思える者が集い、お互い様で働くこと」と、ワ-カーズコープの協同労働の原則ともいうべき考えを示した。
また、コープデリ―生協連合会福理事長の永井伸二郎さん、JA佐渡総務部長の渡部学さんが「JA・生協・行政の連携による『佐渡トキお米応援プロジェクト』」について報告。生協組合員の「おいしくて安全で安心して食べられるお米を食べたい」、「トキをはぐくむ農業を応援したい」という思いで実現したプロジェクトで、米の取引だけでなく、米作りへの参加・収穫の喜びを共にする、産地との交流に発展している。「2012年には生物の多様性を育む農業交際会議が佐渡市で開かれるなど、生産者と消費者との関係を超えた価値の共有ができた」と永井さんは評価する。
また、JA佐渡の渡部さんは、たったいまトキが頭の上を飛んで行ったという現場から臨場感あふれる映像を送り、環境問題への関心が高まり、生産者の所得向上につながっていることを報告。「おいしいお米をたくさん食べてもらうことで生産者が元気になる」生協との提携に期待を込めた。
協同組合のアイデンティティ―の説明や2つの事例報告をもとに、オンライン参加者も含め、全員が小グループに分かれたディスカッションでは、協同組合の7原則に対する職員の認識の薄さを指摘する声があった。特に第5原則「教育、研修および広報」について不十分だとの指摘があり、JAグループの協同組合としての職員教育の問題が浮き彫りになった。
また、JAは現場のニーズをくみ取れていないとの指摘や、協同組合のアイデンティティーに関して、職員は株式会社との差別化を認識し、協同組合らしい事業を考えるべきだなどの声があった。なおICAのアリエル・グアルコ会長が集会にビデオメッセージを寄せ、「協同組合で働き甲斐のあるよりよい社会をつくろう」と呼びかけた。
ICAアリエル・グアルコ会長のメッセージ
協同組合に誇りを
親愛なる協同組合の仲間の皆さん、私たちが1世紀にわたってそうしてきたように、私たちを結び付け、一つにし、力を与えてきたこの日を祝いたいと思います。長年にわたり人々のニーズをかなえる方法において、人類は前進と後退の両方を経験してきました。人類は不確実な苦しい状況をいくつも乗り越えてきました。その状況は最近発生したものもあれば、過去から継続しているものもあります。
私たちは社会的、経済的不平等を抱えた世界に生きており、その解決は急務です。生産と消費の方法が絶えず革新される一方で、世界では生態系の保護が叫ばれています。この間、およそ2世紀にわたり、私たちが経済的、社会的関係を組織することを可能とする協同組合という仕組みが存在してきました。
人々やコミュニティ、家の持続可能な発展を現実のものにするための仕組みです。この仕組みこそ、世界が真に持続可能な未来に向かって、確実に前進するために、私たちが強化し続けるように努力しているモデルです。私たちのたゆまぬ協同が極めて重要です。すべての大陸、300万以上の協同組合のなかにつながりをつくり続けるなければなりません。
私たちは、各国政府や国際機関が協同組合に対する認識をさらに深め、世界のシステム全体に対して協同を基調とする考え方をとっていくよう声を上げ続けなければなりません。この考え方こそが、構成、包摂、そして政治、敬愛の領域における確固たる民主主義により統治される未来を描くことができる唯一と考えられる方法なのです。
協同組合はよりよい社会を築きます。経済成長と繁栄は、働き甲斐のある人間らしい仕事、格差の是正、平和と両立しうるし、そうすべきだということを私たちは示さなければなりません。この7月1日(国際協同組合デー)を活用して私たちがどのようにそうした両立を行ってきたか、現在もそれを行っているか、今後もそれを行い続けていくかを全世界に示していきましょう。私たちの協同組合アイデンティティ―に誇りを持ちましょう。すばらしい協同組合デーを。
重要な記事
最新の記事
-
需要に応じた生産が原理原則 鈴木農相が就任会見2025年10月22日 -
新農相に鈴木憲和氏 農政課題に精通2025年10月22日 -
鳥インフルエンザ 北海道で今シーズン1例目を確認2025年10月22日 -
【2025国際協同組合年】協同組合間連携で食料安全保障を 連続シンポ第7回2025年10月22日 -
身を切る改革は根性焼きか【小松泰信・地方の眼力】2025年10月22日 -
将来を見通せる農政一層前に 高市内閣発足・鈴木農相就任で山野全中会長が談話2025年10月22日 -
丸の内からニッポンフードシフト「NIPPON FOOD SHIFT FES.東京2025」開催 農水省2025年10月22日 -
来年の米生産 米価高を理由に3割が「増やしたい」米生産者の生産意向アンケート 農水省2025年10月22日 -
全農チキンフーズから初の農協シリーズ「農協サラダチキン」新発売2025年10月22日 -
世界選手権出場かけて戦うカーリング日本代表チームを「ニッポンの食」でサポート JA全農2025年10月22日 -
秋元真夏の「ゆるふわたいむ」鹿児島の食材たっぷり「かごしまの宝箱プリン」を紹介 JAタウン2025年10月22日 -
京野菜セットなど約70商品が送料負担なし「JA全農京都ショップ」で販売中 JAタウン2025年10月22日 -
「北海道JAるもいフェア in 東京競馬場」とにかく明るい安村が登場 開催2025年10月22日 -
大量合成可能なジャガイモシロシストセンチュウ ふ化促進物質を発見2025年10月22日 -
世界各地から収集したイネ遺伝資源「NRC」整備とゲノム情報を公開 農研機構2025年10月22日 -
【消費者の目・花ちゃん】世界陸上 生の迫力2025年10月22日 -
柿谷曜一朗氏の引退試合「THE LEGEND DERBY YOICHIRO KAKITANI -LAST MAGIC-」にタイトルパートナーとして協賛 ヤンマー2025年10月22日 -
柿「太秋」出荷本格化 JA鹿本2025年10月22日 -
台風22・23号の被害に伴う八丈島へ支援物資を送付 コープみらい2025年10月22日 -
店舗、宅配ともに前年超え 9月度供給高速報 日本生協連2025年10月22日


































