JAの活動:米価高騰 今こそ果たす農協の役割を考える
【米価高騰 今こそ果たす農協の役割を考える】「米不足は2年前から始まっていた」JA柳川組合長山田英行氏2025年7月1日
福岡県のJA柳川が管内とする柳川市は「水郷(すいきょう)柳川」と呼ばれ、広大な筑後平野西南端に位置し、筑後川と矢部川に挟まれた海抜0メールの水田が広がっている。肥よくな水田3800haで、土地利用型農業と施設園芸を複合した農業が展開されている。福岡県の耕地面積は全国第15位の約8万haで、そのうち8割を水田が占め、その水田の利用率は114%で、全国2位である。驚くことにJA柳川管内の水田利用率133%に達する。米価高騰に対して小泉進次郎農相は、備蓄米の投げ売りに走っている。この動きをどう見るか。以下は、JA柳川山田英行代表理事組合長の緊急発言である。(聞き手=髙武孝充・元JA福岡中央会農政部長)
JA柳川代表理事組合長 山田英行氏
米不足は突然起こったのではなく、2年前から指摘されていました。一つに、ふるい目の問題です。農水省の作況指数は、全国8000カ所で坪刈りした米をふるい目1・75ミリで当年度の生産量を予測しています。他方、農協での検査は1・8から1・85ミリのふるい目で主食米の仕上げ調製をして検査を行っています。農水省の発表する作況指数は実際の生産量との乖離が発生しているように思います。生産者はとくに23年産・24年産は夏場の高温障害による精米の歩留まりの悪化による収量減を実感しています。農水省はともかく「米不足」を徹底して検証すべきです。
「基本法」は食料安全保障のためだとして改訂されました。それならば、国の米備蓄は2か月分に足らない100万tではなく、1年分であって当然です。少なくともこの5年間で国産米500万tの備蓄を積み上げて、「頼りになる政府」をめざしてほしいものです。
集落営農を基本に
4月に閣議決定された「食料・農業・農村基本計画」は、水田政策を見直し、大区画化と水田の集積・集中で低コスト輸出産地育成を主眼とし、そうした構造転換に必要な予算を、これまでの転作作物助成金の削減で生み出そうとしているようです。輸出産地の米生産費は9500円(玄米60kg)と言います。これからの政策の是非は別として、米に限らず各農畜産物の生産費を出すときには、JAグループがリーダーシップをとり生産者が納得いくような試算をしてほしいです。
JA柳川は、減反政策に対応して、集落レベルでの大豆と麦のブロックローテーションに取り組みました。現在ではその集落営農組合が32組織、その4分の3の24組織は農事組合法人になっています。管内3800haの水田の7割近くは営農組合が集積しています。米・麦・大豆の2年3作で、水田利用率は130%台を維持しています。大豆の作付けは県内では常に2位以内です。大豆品種をフクユタカから収量の高いフクヨカマルに更新しました。集落営農の機械共同利用に加えて、生産販売体制の強化をめざして、2017(平成29)年に総事業費36億円をかけて建設した保管能力1万tの都府県最大級の規模を誇る南部カントリーエレベーターがフル稼働しています。
JA柳川は、縦横にクリークがめぐらされた地域で、海抜ゼロメートル地帯です。とくに近年では各地で豪雨災害が発生していますが、この地域では、地域防災と地域農業には密接な関係があり、昔からクリークの管理には農業者だけではなく地域住民も一体となったきめの細かい管理が行われ、災害を未然に防いできた歴史があります。現在では、現場で地域防災を担っているのは農業者がほとんどだと思います。これからも私たちJAは、組合員と今やらければならないことを未来のために今まで以上に、やっていくことが最大の使命だと考えます。
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