JAの活動:沖縄復帰50年~JAおきなわが目指すもの~
【特集:沖縄本土復帰50年】新たな沖縄振興計画と農業の枠超えて離島支えるJAの役割 琉球大学・内藤重之教授2022年5月23日
今年5月15日に本土復帰50年を迎えた沖縄県は、新たな沖縄振興計画を正式決定し、農林水産分野では「亜熱帯海洋性気候を生かした持続可能な農林水産業の振興」が掲げられた。日本の農業が抱える担い手不足や高齢化などに加えて、台風の常襲地帯であり、多数の離島を有する沖縄県。農業に限らず離島の住民の生活を支えてきた「JAおきなわ」にはさらにどんな役割が期待されるのか。琉球大学農学部の内藤重之教授に寄稿してもらった。
復帰50年に合わせて決定された新たな沖縄振興計画とは
琉球大学農学部
内藤重之教授
沖縄県は日本復帰50周年を迎えた5月15日に第6次となる新たな沖縄振興計画「新・沖縄21世紀ビジョン基本計画」を正式決定した。これは今後10年間にわたる計画であり、「自立的発展と県民一人一人が豊かさを実感できる社会の実現」を目指し、SDGsの視点を取り入れ、社会、経済、環境を基軸として施策を展開していく方針である。農林水産分野に関しては「亜熱帯海洋性気候を生かした持続可能な農林水産業の振興」が掲げられている。
ここでは「亜熱帯海洋性気候、多種多様な地域資源など沖縄県の特性を最大限に生かした農林水産業を展開するとともに、離島・過疎地域における基幹産業としての地位を踏まえつつ、魅力と活力ある持続可能な農林水産業を目指す」ことが示されている。これを実現するために、①おきなわブランドの確立と生産供給体制の強化、②県産農林水産物の安全・安定供給と消費者信頼の確保、③多様なニーズに対応するフードバリューチェーンの強化、④担い手の経営力強化、⑤農林水産業のイノベーション創出及び技術開発の推進、⑥成長産業化の土台となる農林水産業の基盤整備、⑦魅力と活力ある農山漁村地域の振興と脱炭素社会への貢献に取り組むこととしている。
条件の不利性抱える中で多様な農産物に挑戦
島しょ県である沖縄県は農地面積が限られ、市場遠隔性、環海性、台風常襲地帯であるという条件の不利性を抱えている。そのような中で、1972年の日本復帰以降、さとうきび、糖業の振興とあわせて、冬季温暖な気候を生かした野菜や花きの端境期出荷、熱帯果樹や肉用牛の生産・出荷などに取り組んできた。
その過程で農協系統組織が重要な役割を果たしてきたが、近年では農業担い手の不足と高齢化が進む一方で、流通や実需者の大型化が進展し、定時・定量・定価格・定品質のいわゆる「4定」による供給が産地に強く要求されるようになっている。この間の相次ぐ経済連携協定(EPA)の締結などにより、さらなる貿易自由化が進められる中で、海外産地との競争は今後さらに激しくなることが予想される。
また、生産資材の価格が高騰し、生産農業所得が減少している。さらに、農林水産省は昨年5月に「みどりの食料システム戦略」を策定し、CO2ゼロエミッション化の実現や化学肥料の使用量低減などを目指すこととしており、高温多湿で病害虫の発生が多いとされる沖縄県にもその対応が求められる。しかしその一方で、消費の多様化が進んでおり、地産地消や国産志向という追い風も吹いている。
求められる生産者の全面的バックアップ
このように、沖縄農業の未来には新計画に掲げられているとおり、担い手の確保と経営力の強化、「4定」を満たす「おきなわブランド」の確立と安全・安心な農産物の国民・県民への安定供給、多様なニーズに対応するフードバリューチェーンの強化、生産基盤および流通・加工施設の高度化による生産性と付加価値の向上、脱炭素化への貢献などが不可欠となっている。JAおきなわには指導事業や経済(販売・購買)事業だけでなく、加工や流通関係の関連会社も総動員し、沖縄農業の未来に向けて組合員である生産者を全面的にバックアップすることが求められているのである。
離島の住民生活支える組織としての期待
ところで、沖縄県は47の有人離島を抱えており、過疎化が進む離島や沖縄本島北部の多くの地域では農協が基幹産業である農業だけでなく、住民の生活全般を支えてきており、今後もその役割が期待されている。新計画でも「離島・過疎地域における安全・安心の確保と魅力ある生活環境の創出」などが基本施策として掲げられている。JAおきなわが国の支援を受けつつ、沖縄県や市町村と連携しながら、いかにしてこれらの役割を果たし続けていくのかにも注目していきたい。
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