農協改革の骨子 公認会計士監査義務づけ2015年2月10日
自民党は2月9日の農林関係合同会議で農協改革についての「法制度の骨格」を了承した。
概要は以下のとおり。
【会計監査】
▽貯金量200億円以上の農協には信金・信組等と同様、公認会計士監査による会計監査を義務づける。
▽全国中央会(全中)は内部組織である全国監査機構を外出しし、公認会計士法に基づく監査法人を新設。農協は新設された監査法人、または他の監査法人の監査を受けることになる。
▽新設の監査法人は同一の農協に対して会計監査と業務監査の両方を行うことが可能(監査法人内で会計監査チームと業務監査チームを分けることが条件)。
▽政府は、全国監査機構を外出しする監査法人の円滑な設立と業務運営が確保でき、農協が負担を増やさずに確実に会計監査を受けられるよう配慮する旨を規定する。
▽政府は、農協監査士について、当該監査法人等における農協に対する監査業務に従事できるように配慮するとともに、公認会計士試験に合格した場合に円滑に公認会計士資格を取得できるように運用上配慮する旨、規定する。
▽政府は、以上のような問題の迅速かつ適切な解決を図るため、関係省庁(金融庁)、日本公認会計士協会および全中による協議の場を設ける旨、規定する。
▽全中の新組織への移行等によりその監査業務が終了する時期までは、新しい会計監査制度への移行のための準備期間として、農協は全中監査か公認会計士監査のいずれかを選べることとする。
【業務監査】
▽業務監査(コンサル)については農協の販売力の強化、6次産業化、輸出拡大等を図るために、必要なときに自由にコンサルを選ぶことができるようにするため、農協の任意とする。
【都道府県中央会】
▽新組織は会員の要請を踏まえた経営相談・監査、会員の意思の代表、会員相互間の総合調整という業務を行うこととする。
▽平成31年3月31日までの間に、農業協同組合連合会に移行する。
▽移行した農業協同組合連合会は「農業協同組合中央会」と称することができるよう法的な手当を行う。
▽都道府県中央会から移行した農業協同組合連合会が、会員の要請を踏まえた監査の事業を行う場合は、農林水産省令で定める資格を有する者を当該事業に従事させなければならないこととする。
【全国中央会】
▽平成31年3月31日までの間に、会員の意思の代表、会員相互間の総合調整などを行う一般社団法人に移行する。
▽移行した一般社団法人は「農業協同組合中央会」と称することができるように法的な手当を行う。
【准組合員問題】
▽准組合員の利用量規制のあり方については、直ちには決めず、5年間正組合員及び准組合員の利用実態並びに農協改革の実行状況の調査を行い、慎重に決定する。
◇ ◇
萬歳章JA全中会長は9日午後に開いた理事会を踏まえて今回の改革の骨格に合意した。
准組合員の利用量規制は見送られ、5年間をかけて実態調査をしたうえで検証することになった。 また、県中央会は農協法で連合会として位置づける。農協が要請すれば監査を行うことができるが、農水省の説明では貯金額200億円以下の農協が対象になる。
また、農協が監査を受ける際に「負担を増やさずに確実に会計監査を受けられるよう配慮する旨、規定する」としたが、この点について林芳正・自民党農林水産戦略調査会長は「ある程度の予算を確保して、結果として負担が上がらないような措置」を検討する認識を示した。
ただし、今回の法制度の骨格で会計監査については「農業が信用事業を、イコールフッティングでないといった批判を受けることなく、安定して継続できるようにするため」と明記されている。何よりも信金・信組と“イコールフッティング”であることが優先させるなら農協の会計監査のための負担軽減はどこまで実効性ある措置が可能かも問われそうだ。
◇ ◇
今回の農協改革は農業所得の増大が目的で、そのために単位農協の自由度を高めることが必要だと強調されてきた。しかし、中央会改革がその目的にどう結びつくのか、不明のままだ。
西川農相は農家の所得増加について10日の記者会見で以下のように述べた。
「非常に難しい問題ではありますが、各作目ごとに、どういう伸ばし方ができるか、各局に、今、検討させています。それらをまとめていって本当に生産増、農家所得の増につながるかどうかというのを検証していきたい」。
「農業生産額を上げていこうと一所懸命取り組んでおります。それから、農家の所得を増やすために何をやればいいかも検討しています。それで、農家も地域の農協も、やはり自由な発想で、立派な品質のいい農産品を作って、価格決定権が持てなきゃ話になりませんので、これは農協の力を借りて農協も買取りという方式、非常にシェアが少ないんですね。取次ぎだけが今までやってきた。そういう流れがありましたけれど、積極的に買っていただいて、販売していただくと。そのために、大きな力を発揮してもらうと、こういうことも、価格、これからの所得向上につながっていくと思います」。
(関連記事)
・農協を「分割して統治せよ」という暴挙(2015.02.09)
・交渉状況開示を TPPで萬歳会長(2015.02.09)
・【農協改革】再検討を政府・与党に要請 全中(2015.02.06)
・神を信じた人も、信じなかった人も(2015.02.02)
・農協法に農業所得増大を盛り込み 法改正案(2015.01.30)
重要な記事
最新の記事
-
【注意報】さとうきびにメイチュウ類 伊是名島で発生多発のおそれ 沖縄県2024年4月19日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:JA水戸 那珂川低温倉庫(茨城県) 温湿度・穀温 適正化徹底2024年4月19日
-
地拵え作業を遠隔操作「ラジコン式地拵機」レンタル開始 アクティオ2024年4月19日
-
協同組合のアイデンティティ 再確認 日本文化厚生連24年度事業計画2024年4月19日
-
料理酒「CS-4T」に含まれる成分が代替肉など食品の不快臭を改善 特許取得 白鶴酒造2024年4月19日
-
やきいもの聖地・らぽっぽファームで「GWやきいも工場祭2024」開催2024年4月19日
-
『ニッポンエール』グミシリーズから「広島県産世羅なしグミ」新発売 JA全農2024年4月19日
-
「パルシステムでんき」新規受付を再開 市場の影響を受けにくい再エネ調達力を強化2024年4月19日
-
養分欠乏下で高い生産性 陸稲品種 マダガスカルで「Mavitrika」開発 国際農研2024年4月19日
-
福島県産ブランド豚「麓山高原豚」使用『喜多方ラーメンバーガー』新発売 JAタウン2024年4月19日
-
微生物農業資材を用いた大阪産の減肥料栽培で共同研究開始 ナガセケムテックス2024年4月19日
-
栃木県真岡市産バナナ「とちおとこ」使用「バターのいとこ」那須エリア限定で新発売2024年4月19日
-
大阪泉州特産「水なす」農家直送で提供開始「北海道海鮮にほんいち」2024年4月19日
-
産業用ドローン世界市場 2023年は1兆4124億円に成長予測 矢野経済研究所2024年4月19日
-
バラ酵母使用「一ノ蔵 純米吟醸 プリンセス・ミチコ」数量限定発売 一ノ蔵2024年4月19日
-
インドネシア・ジャワ島のブラックタイガーエビ養殖業がASC認証を取得 日本生協連2024年4月19日
-
2023年度ペースト生育試験結果「食味収量は良好」「身体的負担軽減」三菱マヒンドラ2024年4月19日
-
「長崎県産ハウスびわフェア」直営飲食店舗で19日から開催 JA全農2024年4月19日
-
「みのる食堂アミュプラザ熊本店」開業3周年記念で特別メニュー提供 JA全農2024年4月19日
-
「ハッピーターン」の 粉だけ当たる「幸福の日 粉うま祭りキャンペーン」開催 亀田製菓2024年4月19日