民主党が農協法改正案を国会に提出2015年5月14日
民主党は5月13日、衆議院事務局へ独自の農協法改正案を提出した。政府提出の農協法改正案の対案となるもので合わせて審議される。
提出者は衆議議員の▽岸本周平氏・民主党ネクスト農水大臣、▽玉木雄一郎・同ネクスト農水副大臣、▽小山展弘・同農政改革研究会幹事、▽福島伸享・同幹事。
法案の内容は(1)「地域のための農協」の位置づけ及び農協の自主性の尊重に関わる規定の新設、(2)農協の政治的中立性の確保に関わる規定の新設、(3)地域重複農協の設立および都道府県域を超えた農協の設立が可能である旨の確認規定の新設、(4)監査その他の組合に関わる制度のあり方についての検討について付則の新設。 (1)の「地域のための農協」については第3条に次のような配慮規定を盛り込む。
「第3条の2:この法律の運用に当たっては第5条に規定する組合の行う事業が住民の生活の行う事業が住民の生活及び地域社会において重要な役割を果たしていることに鑑み、当該事業を通じて、豊かで住みよい地域社会の実現が図られるよう配慮されなければならない」。
(4)については付則に、組合の監査のあり方について法律施行後3年を目途に必要があるときには措置を講じることを盛り込む。
民主党は3月24日に政府・与党の農協・農業委員会「改革」に対する基本的考え方をとりまとめた。農協法改正案はこの基本的考え方に基づいて具体化した。
基本的考え方では農水省からのヒアリングなどをふまえ「安倍政権における農政改革は、長い歴史のなかで農民たちが共生して暮らしてきた農村社会の現場を知らない、一部の経済界や特定の経済学的思想を持った勢力の影響による、組織いじりだけのまったく的はずれな内容」、「これまでの自民党政権において農業者の所得が低落し、農村が疲弊し農地の集積も進んでこなかったのは、現場知らずの観念的な猫の目農政の積み重ねによるもの。今般の農政改革はそのような自民党農政の本質的な失敗を農協や農業委員会へ押しつけたものと言わざるをえない」と総括している。
また、政府の「農協改革」については、▽「地域農協が自立して自由に経済活動を行い」、「農業者の所得向上」につながる合理的な根拠は何ら見出し難く立法趣旨は破綻、▽単位農協の理事の過半を認定農業者、農産物販売や経営のプロとすべきというのは明らかな規制介入、▽農協に対するガバナンスを向上させるのであれば、現行の全国監査機構を全国中央会からそのまま分離すればすむこと。中央会の組織いじりはJAグループに混乱とコスト増を生むだけの的はずれな愚策であって「60年ぶりの農協改革」との施政方針演説における安倍総理の掛け声は看板倒れ、▽全農や地域農協の株式会社化の道を開くことは、農業者が協同することによって資本の圧力と対等に渡りあって農家や農村を守るという協同組合の理念を根本から否定することにつながりかねないなどと批判している。
そのうえで農家のための農協という役割とともに、「農村地域のための農協」であるという役割も積極的に法律に位置づけるべきとして、今回の農協法改正案の提出となった。国会での審議が注目される。
(関連記事)
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