粒剤しっかり防除で良品生産 市場からも高評価JAいるま野 ほうれん草・みず菜生産者レポート2023年9月8日
埼玉県のJAいるま野管内で生産されているほうれん草は葉肉の厚さと豊かな甘みが特徴で市場から高い評価を受けている。また、みず菜の周年栽培にも力を入れ、新たな産地として信頼を高める。こうした高品質の葉物野菜づくりは生産者の「質のいい野菜を作りたい」という強い意欲と基本に忠実な栽培管理にある。産地を訪ね、その取り組みを聞いた。
年末需要に応えるほうれん草栽培に自信
JAいるま野の青果物販売額は約60億円、ほうれん草はさといもに次いで販売額が多く、約20%を占める(令和3年度)。部会員370人で174haを栽培している。
JAではとくに12月に出荷するほうれん草について「しっかりと株が張り葉肉が厚い。年末は需要が増えるが、年末出荷に合わせて栽培を調整する技術をみなさん持っています」(販売部販売推進課)と話す。県内での販売のほか、京浜市場、長野、東北、また市場を介して北海道、中京地域でも販売されている。
副部会長の斉藤博之さん(57)は所沢市南永井の代々の農家に生まれ、就農して40年になる。妻と9年前に就農した息子の敦史さん(31)と共同経営をしている。
JAいるま野ほうれん草部会 副部会長の斉藤博之さん(右)とご子息の敦史さん
農地は3haあるが、年間の作付面積はほうれん草30a、にんじん50a、さといも70aの計1.5ha、農地の半分は休ませている。とくにさといもは2~3年に1回の作付けだという。家族3人の経営では人手が足りないという面もあるが、土を大切にした輪作を行っている。
ほうれん草の栽培は年に2回。3月は種で5月半ばの出荷と、10月は種で12月の出荷、である。いずれの栽培も「まずは土壌消毒をしっかり行います」と斉藤さんは話す。
ほうれん草栽培の病害・病害虫対策で重要になっているのは、べと病とネキリムシ類だという。
「とくにべと病は、昔は聞いたことがありませんでした。それが10年ほど前からこの地域でも増えています」。
ほうれん草が育ち始めた4月ごろ、気温と湿度が上昇してくると要注意だ。2年ほど前には「油断していたら全部、べと病にかかってしまったこともありました」。
そこでべと病対策として散布しているのがは種前に土壌処理する殺菌剤「ユニフォーム粒剤」(シンジェンタ ジャパン)だ。また、発芽した後に土壌害虫のネキリムシ類に芽を食べられてしまうこともあることから、同じくは種前に土壌処理する殺虫剤「フォース粒剤」(同)も散布するという。
効果確実な全面土壌混和
したがって栽培工程としては、は種前にまず「ユニフォーム粒剤」と「フォース粒剤」を全面土壌混和し、そこにシーダーでマルチを被せながら、は種をしていく、という作業からスタートすることになる。
3月からの栽培では発芽後、サンサンネットだけ使用した露地栽培で育て、5月に入ると雨除けトンネルで覆い、その後、出荷を迎える。一方、10月からの栽培は基本はトンネル栽培となる。
斉藤さんは、は種前の「ユニフォーム粒剤」と「フォース粒剤」の全面土壌混和は「基本の作業になっています」と語る。10年前はユニフォームの前身である「リドミル粒剤2(現在、失効)」を使用していたという。
狭山市堀兼の平沼久良さんが栽培中のほうれん草
生育期間中のべと病対策としては、レーバスフロアブルなどをトンネルで覆う前に散布する。ただし、トンネルで覆った後、12月でもべと病が発生することがある。気候によっては12月でもトンネル内の温度と湿度が上昇し、狭い空間で病害が一気に広がってしまう。
それを防ぐためには、生育具合のチェックと出荷の調整も兼ねて、トンネルを開け閉めするときに病害の発生を確認する必要がある。ただ「ビニールを上げて確認するのは手間。それが病害の発見の遅れにもつながります。ですから生育期の散布だけでは心配で、は種前にしっかり粒剤を散布しておく必要があると考えています」と斉藤さんは話す。
一方、ネキリムシ類に対しては「フォース粒剤」の処理で十分に防除できているという。そのほかハスモンヨトウなど病害虫対策にはアファーム乳剤などを使用する。
斉藤さんは2つの粒剤について「は種前の処理のポイントは隅々まで均一にしっかり処理すること。病害虫を抑え収量も安定していく」と評価、両剤の使用でほうれん草の後作で栽培するにんじんとさといもにも、いい影響を感じているという。敦史さんとともに「量より質を追求します。これからも手間をかけていいものを作っていきたい」と話している。
みず菜で地域農業活性化
一方、みず菜は20年ほど前から管内での生産が始まった。部会員は現在42人。露地とハウス栽培による周年供給が特徴だ。JAは数年前に部会員の栽培管理を調査し、それを表に集約し部会で共有、新しく必要な作業や注意点などが加われば更新し部会員の栽培技術向上に役立てている。
狭山市堀兼の塩﨑農園の塩﨑稔さん(46)の主栽培品目はさといも(1ha)とみず菜(1.5ha)。ほかにニンニクやにんじん、ブロッコリーなども栽培している。両親と妻と経営し、パートタイマーを4人ほど雇っている。
みず菜を生産する塩﨑稔さん
みず菜の露地栽培は6月から10月まで。は種から1か月後に収穫できるため5回出荷する。
一方、ハウス栽培は9月から翌年の4月まで。露地栽培と違って苗を作って定植する。そのため生育期間は露地より長い2か月、冬になれば栽培期間はやや長くなるが、ハウスからは6回出荷する。
苗で育てるのは連作障害を防ぐため。苗を定植すると側根だけで土から養分を吸収、「主根が土に入らず畑が疲れない。連作に向く方法です」と塩﨑さんは話す。
周年供給し市場からも信頼を得ている
露地栽培では1m幅で高さ10cmのベッドにマルチを被せ太陽光で消毒、その後、マルチを剥がして「ユニフォーム粒剤」と「フォース粒剤」を土壌に混和してから、クリーンシーダーでは種する。
「ユニフォーム粒剤」は白さび病対策、「フォース粒剤」はネキリムシ類とキスジノミハムシ防除のために使用している。
その後、発芽するまではネットで覆わず、最低3日間、1日3時間灌水する。ネットで覆うと水が均等に散布されないからだといい、塩﨑さんはこの方法で発芽率9割以上を誇っている。
は種前のフォース粒剤、ユニフォーム粒剤の土壌混和により高い発芽率と良品生産を実現
白さび病対策には、「ユニフォーム粒剤」に加えて、アミスター20フロアブルも使用する。使用のポイントは、みず菜が成長し葉と葉が重なり合う時期で「よく効く」という。
常に一番の品質めざす
一方、「フォース粒剤」については、ネキリムシ類やキスジノミハムシの幼虫を「みず菜の根っこが食べられないよう、しっかり土壌中で防除しておくことが重要」で、塩﨑さんは「とくにキスジノミハムシの幼虫を残すと、生育期にどんなに殺虫剤で防除しても被害が出る」と話し、は種前の土壌処理の重要性を強調する。「フォース粒剤」は今年で発売から30年。就農から26年の塩﨑さんは就農時から使用しており、防除技術のスタンダードになっている。
ハウス栽培では「ユニフォーム粒剤」は必ず使用すると言っている。「広く均一に薬剤を撒くようにしています」。
こうした栽培管理でみず菜は市場から高い評価を得ており、塩﨑さんは「クレームを出したことがない」と胸を張る。
「撒いた種はすべて収穫する、と父から教えられ、これがわが農園の経営理念です。直売所にも野菜を出荷していますが、いいものであれば消費者は高くても買ってくれることが分かりました。常に一番の品質をめざし、薬剤を適切に使ってしっかり栽培していきたいと考えています」と語る。
粒粒マイスター キャンペーン2023を実施
発売から今年で30年の殺虫剤「フォース粒剤」はガス効果で土壌中の隠れた害虫にも速効的に効果を発揮し、処理後約1か月の長い残効を示す。
また、殺菌剤「ユニフォーム粒剤」は浸透移行し病害を待ち伏せする。べと病、疫病、白さび病防除が得意な薬剤だ。両剤とも粒剤で散布しやすい。
シンジェンタ ジャパンではフォース粒剤とユニフォーム粒剤の2つの製品について意外と知らない効果の仕組みや、登録内容の詳細など、すぐに活用できる知識を学べる検定「めざせ!粒粒マイスターキャンペーン2023」を9月30日まで実施している。中級検定合格者には抽選で粒粒マイスターの証として「ゴールデンショベル」が進呈される。
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