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農協改革は亡国の思想 崩壊する日本の食料安保  農協改革とTPP2015年12月22日

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・最大の危機は一極集中に
・地域から暮し奪う「改革」
・農協の黒字事業だけが欲しい
・全農は食料安保の「キモ」
・進む農地の不動産ビジネス化
・後戻りさせない「制度変更」が狙い
・国の安全保障は「掛け算」

 今年もさまざまな出来事があった。その中でも、農業者やJAグループにとってもっとも大きな出来事は、農協改革とTPP問題ではないだろうか。この問題について、これは「亡国」の思想だと鋭い警告を発している三橋貴明氏に取材した。

◆最大の危機は一極集中に

三橋貴明氏 「日本の『地域を消滅』させたいなら、その方法はとても簡単だ。農協を潰せばいい。/協同組合として、利益を追求する株式会社とは異なる理念に基づき、地元コミュニティにサービスを提供している農協の存在なしに、日本の地域社会は維持不可能だ」。氏の著書「亡国の農協改革―日本の食料安保の解体を許すな」の冒頭の言葉だ。
 そして、農協改革やTPP問題を考えるときに、「日本最大の危機は東京一極集中にあることから始めなければいけない」と指摘する。なぜか。
 日本は自然災害大国で、自然災害は、いつ、どこで起こるか分からない。防災安全保障の観点からは、国民が分散して住まなくてはいけない。だが現実は、地域からどんどん人が流出し、一極集中になっている。東京圏の人口が7000万人や8000万人になり、首都圏直下型地震が起きれば「国家存亡の危機」になるからだ。
 なぜ「一極集中」するのか? 経済合理性つまりビジネスで儲けることを考えたら、人が集中している方がやりやすい。そうした論理で日本のさまざまな政策は進められ、農協改革やTPPなどさまざまな規制緩和もその一環だという。


◆地域から暮し奪う「改革」

 住んでいる地域で買い物ができ、歯医者にも行けるという生活の基本であるインフラがなければ暮らせないが、いま、地方で小売業とか必要なサービスを提供しても赤字になる。赤字でも必要だが株式会社の論理ではできない。だが、農協は協同組合として地域を維持するために、赤字でも地域のくらしに必要な事業を行い、他の事業と合わせて総合的に黒字を維持することで、くらしを守っている。農協が撤退したら、その地域には住めなくなり、都市部に移住するしかない。
 郵政民営化も株式会社の論理・利益優先で考えれば、へき地の郵便局は潰した方がいい。かつての国鉄民営化では地域住民が足を奪われ、住むことができなくなり都市部に移住。地域は潰された。
 だが、「農業は国防という安全保障上きわめて重要」だと三橋氏は指摘。ヨーロッパでは、農業は国境地帯で営まれており、そのことで国境が守られているという認識が国民にあるので、「農家所得の9割以上が税金から支払われ農家はまるで公務員のようだ」。砂糖の関税がTPPで実質的に撤廃されれば、沖縄の離島を含めたサトウキビ農家が廃業し、その島に住むことで国防的な安全保障を提供してくれていた人たちがいなくなり「数年後には中国の漁民が住み着いているという話になるかもしれません」とも。
 こうした「改革」が次々と行われるのは、「いまの日本人は経済力・お金の問題ばかり考えている」からだ。しかし「経済力」とは「モノやサービスを生産する人材の力」だと三橋氏は定義する。そして「誰かがその地域でモノやサービスを提供し続けないと、失われてしまう」。


◆農協の黒字事業だけが欲しい

 その典型が農業だ。
 「耕作放棄地で明日から耕作できますか? 生産法人でもできません。なぜなら、土地があっても人材がいない」からだ。「経済力」とは、モノやサービスを「生産できる力(技術)を蓄積した人材だ。技術は企業や組織に蓄積されるのではなく、人材に蓄積される」。その人材が一極集中するのではなく全国各地に「バラバラに住み、それぞれが真の意味で経済力をつけ、いざというときに助け合うという発想がなければ、この国では生き延びることはできない」。だが、「金になるから」と、そうした考えに逆行する政策ばかりが行われている。
 そういう視点から農協改革をみると「全部、ビジネスであり、JA共済や農林中金、全農を切り離して株式会社化して一般企業と同様に投資をして配当金で儲けようという発想」だ。そして農協は経営を支える信用・共済事業を失い、「あこぎな利益追求をするか、潰れていくことになる」。
 准組合員も同じだ。
 「米国商工会議所は、以前から准組合員比率を下げろと要求し、規制改革会議のワーキンググループの農協改革案では、正組合員を半分にという。そんなことをしたら、信用・共済事業という農協の柱がなくなり、農協が潰れていく」。それをチャンスに「そのビジネスに参入したい」。農協の「黒字の事業だけが欲しいのだ」と分析する。


◆全農は食料安保の「キモ」

 もう一つの大きな柱が「全農の株式会社化」だ。なぜこれが柱かというと「全農という存在が、日本の食料安保のキモだからだ」と指摘する。
 米国からの穀物輸入で、全農は「IPハンドリング」し、遺伝子組換え作物と非遺伝子組換え作物が混入しないようにしている。穀物メジャーも全農と同じようにしなければ日本進出は難しい。しかも全農は協同組合だから利益優先ではなく適正利益に基づいて米国から飼料原料を輸入している。「これが穀物メジャーは気に入らない。もっと利益を出したいが、あまり利益を追求すると全農との競争に勝てない」。全農を買収してしまえばいいのだが、全農は協同組合だから、株式買収はできない。「さあ、どうする?」という、穀物メジャーの意向を反映し「全農は株式会社化してもいい」という農協法改正になったと三橋氏は分析する。
 規制改革会議のメンバーは「全農は株式会社になって、グローバルにビジネス展開を」とかいうが、「全農は飼料原料の多くを輸入し、さらに購買力を高めて買い負けないように、中国に穀物を売るなど、グローバルに事業を展開している」という事実を見ない。
 さらに、三橋氏は「一番バカバカしいレトリック」は「全農は肥料や農薬を高く売っているからけしからん。だから改革だ」という。だが「安くダンピングして競合店を全部潰そうというなら批判されてもしたがないが、高く売っていることの何が問題なのか」。全農の方が高ければよそから買えばいいだけの話だからだ。事実を無視し「全農が100%シェアをもっていると誤解させ、高く売りつけて、農家や農協を苦しめている」というイメージ戦略が展開されているというわけだ。


◆進む農地の不動産ビジネス化

 もう一つの大きな問題は農地の問題だ。
 三橋氏は、農協法と同時に改正された農地法や農業委員会法によって「農地の不動産ビジネス化が進む」と指摘する。規制が緩和され、50%未満なら農業と無関係な企業でも農業法人に出資できるようになった。「半分以下だから大丈夫」という人もいるが、34%以上持っていると拒否権があり「資本支配できる」。つまり、農業と関係ない企業が事実上、農地を持てる。しかも「事実上、外資規制はない」。さらに農業委員が公選制から首長の任命制になり、「首長は実質的に農業委員を配下にして、自由に農地転用ができる」ようになる。
 農地を住宅や商業地や太陽光発電用地に転用すると「自給力が落ちるだけではなく食料不足問題が起きて、もとに戻そうとしても10年単位の時間がかかる。しかも耕作できる人材がいない」という取り返しのつかない状況になる。「グローバリストの人たちは外国から買えば」というが、それは平時のことで「この世には非常事態があり、本当に輸入を続けられるのか誰も保証はできない」。そうした事態を避けるためには「とりあえず自給力を高め、輸入先を多様化する。これは国として当然のことではないか」と三橋氏。にもかかわらず「農地や農業委員会の規制を緩和するということは、政府が、食料自給力については『どうでもいい』という方向に舵をきったといわざるを得ない」とみている。


◆後戻りさせない「制度変更」が狙い

 TPPについてはどう見ているのか。
 「TPPは難しく考えないで欲しい」という。なぜか? これは「米国の要求で進めている構造改革」で、重要なことは「後戻りさせない」ということだと指摘する。つまり、TPP協定によって、関税だけではなく、知的財産権とか、医療サービスなどの制度を変えても国際協定だから、後で「失敗でしたからといって、戻すことはできない」ということだ。医療では国民皆保険はなくならないだろうが、「間違いなく薬価は上がり、自由診療で医療サービスの価格が上がり、保険適用外が増えてくる」。そして最終的には「わが社の医療サービス保険に入れば」と米国の保険会社が日本に入ってくるのは「見え見えでしょう」。「アフラックの利益の7割は日本市場です。農協の准組合員比率を半分にすれば数兆円の市場ができます。それを狙うに決まっている」ということだ。


◆国の安全保障は「掛け算」

 農協改革や農業委員会・農地の規制緩和そしてTPPは米国の要求にそった「グローバリズムによる『改革』であり、それは『亡国』の改革だ」と三橋氏は強調する。氏のいう「亡国」は、「日本国民の主権に基づいて状況を変えられないこと」だ。そして三橋氏は、国の安全保障には、国土を外国から守る「防衛安全保障」だけではなく、防災安保、防犯安保、エネルギー安保、医療安保、非常時でも物資の流通を実現する「物流安保」、そして国民を飢えから守る「食料安全保障」があり、これは「国民が豊かに、安全に暮らしていくための政治」を実現する基盤であるとする。
 これらの安全保障は「足し算ではなく、掛け算」だ。どれか一つでも「ゼロ」になれば、日本国民の安全保障が崩壊することになる。農協改革は、食料安全保障を解体し、日本国民の暮らしを危うくさせるものだ。
 そうしたことを進めるグローバリズムは、「限界を迎え、ヨーロッパなどいろいろなところで火を噴いている。そうした終焉への流れに逆らって、安倍政権は構造改革だ、グローバル化だという」。それは日本国にとって危険なことだと三橋氏は警告を発し続けている。
 その声に改めて耳を傾けてみてもいいのではないだろうか。

(写真)三橋貴明氏
(みつはし・たかあき)経世論研究所所長。1969年生まれ。東京都立大学(現:首都大学東京)経済学部卒。2007年「本当はヤバイ! 韓国経済」(彩図社)がベストセラーに。以後、多くの著作を発表し、データに基づいた経済理論が高い評価を受け、デフレ脱却のための公共投資推進、反増税、反TPPの論客として注目されている。2015年9月に「亡国の農協改革―日本の食料安保の解体を許すな」(飛鳥新社)を出版した。

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