JAの活動:新世紀JA研究会 課題別セミナー
生産部会を一本化 注文に応えられる体制へ【兵藤健一・JA栗っこ営農部販売促進課長】2018年6月13日
政府の「農林水産業・地域の活力創造プラン」に対してJA全農を中心にJAグループはどのように対応しているか。5月23日に開催された新世紀JA研究会の課題別セミナーで兵藤健一・JA栗っこ営農部販売促進課長が報告した。
宮城県栗原市の水田面積は1万5480haで、主食用米の作付けが9183ha、大豆893ha、発酵粗飼料用稲664ha、飼料用米438ha、備蓄米377ha、加工用米206haとなっており、主食用米の品種構成は「ひとめぼれ」が78.6%、「つや姫」が8.8%、「萌えみのり」が7.8%となっています。
栗原市農業再生協議会が設定した2018年産の主食用米の生産の目安は17年産より140ha増加したものの、17年産は宮城県による「地域間調整とも補償事業」により260ha借り受けています。この被災地支援としていた「地域間調整とも補償」が18年産から廃止となり、17年産と比較すると実際の主食用作付面積は120haの減少となっています。
また、18年産から「米の直接支払交付金」10aあたり7500円の交付が廃止となったことから稲作生産農家の所得確保に向けた取り組みが必要となっています。
米産地の販売戦略が多様化している中、より高品質な家庭用を意識したブランド米、低価格ながらも品質の安定した業務用米の生産を行い、「マーケットに対応した米作り」が求められており、関係機関、生産者一体となった取り組みを行う必要が出てきました。
「栗原の米は地域によってばらつきが他の産地より大きい」と米卸から指摘があり、米粒の「はり・つや」を出すために稲作の原点に立ち戻った栽培管理を行うために「ぽっちゃり栗原米作付け推進大会」を開催し、生産者の意識改革を行いました。また、地区ごとに活動を行っていた稲作生産部会を一本化し、新たに3部会(米戦略部会、ブランド米生産部会、多収穫米生産部会)を設立し、目的ごとの活動を行い実需者に求められる栗っこ米の生産を開始しました。
▽米戦略部会=次世代品種栽培・資材試験を行い各部会への助言や情報の提供、▽ブランド米生産部会=高品質・良食味米を生産し、地域ブランド米を推進、▽多収穫生産部会=多収穫米生産販売、省力・生産コスト低減の試験。
この第1段として業務用米の作付けを推進。10年産から13人の生産者20haで栽培開始したが、品種の知名度、業務用米のイメージが悪く生産の拡大が進みませんでした。そこで生産者の意識改革が必要となりました
生産者の業務用米イメージは次の通りです。
▽「安かろう悪かろう」→低価格の安定した品質のお米、▽「表に出ない米」→エンドユーザーの情報を共有、▽「生産農家のプライドを崩す」→ブランド米ではなく求められている米を作る。
そこで、使用しているエンドユーザーから、低価格で安定した品質の米が必要とされ、産地に求められていることを伝えました。また、低価格は収量でカバー。「生産者の技術=腕の見せ所」→やる気を起こさせる。さらに、多収穫米を生産するうえで「1俵いくら」から「10aいくら」を合い言葉に推進しました。
一方、JAの取り組みとしては、(1)多収穫品種の平均収量を上げるための技術研鑽、(2)生産コスト低減技術の研鑽、(3)お客様のオーダーに応えるための普及活動、(4)新たな品種探し、生産者からの問題点指摘に対してはJAと部会が一体となって改善に努めました。
▽種子が高い→種子を自前で生産し、価格を下げる、▽ひとめぼれとの作り方の違い→栽培ごよみ作成、生産講習会の開催▽肥料代が高くなる→専用肥料を作り、価格を下げる、▽1俵の単価が安い→収量増で10a手取り価格のアップ、▽カントリーエレベーターが使えない→カントリーエレベータの利用開始。
問題点を生産者と部会、JAが一体となって解決することにより、生産者からの信頼を受けることとなります。
◆業務用の品質安定
こうした問題点を解決し、新たな提案を発信し始めると面積が拡大しました。今後、中食・外食の市場規模が拡大する中、今後の展開としては、品質の安定化は業務用米を生産するうえでのさらなる生産者の意識統一が必要です。
また、米を生産するうえで稲作農業の再生産価格の確保と継続が必要。よりよい品種の選定が必要となって、オーダーに応えられる生産組織作りが急務だと考えています。
※このページ「紙上セミナー」は新世紀JA研究会の責任で編集しています。
新世紀JA研究会のこれまでの活動をテーマごとにまとめています。ぜひご覧下さい。
(関連記事)
・【インタビュー・立石幸一JA全農参事】GAPに取り組み選ばれる産地に(18.04.09)
・「山形セルリー」を地理的表示(GI)登録 JA山形市(18.04.10)
・「水戸の柔甘ねぎ」GI登録 生産部会が栽培・品質管理 JA水戸(18.02.08)
・【JA水戸 組合長・女性部部長 対談】青年部と二人三脚で運営参画(17.01.25)
・【農業と地域守り抜くJA自己改革着実に】姉妹3JAトップが意見交換(前半)(17.12.07)
・【JA人事】JA栗っこ(宮城県)新組合長に吉尾三郎氏(15.07.06)
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(146)-改正食料・農業・農村基本法(32)-2025年6月14日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(63)【防除学習帖】第302回2025年6月14日
-
農薬の正しい使い方(36)【今さら聞けない営農情報】第302回2025年6月14日
-
群馬県の嬬恋村との国際交流(姉妹)都市ポンペイ市【イタリア通信】2025年6月14日
-
【特殊報】水稲に特定外来生物のナガエツルノゲイトウ 尾張地域のほ場で確認 愛知県2025年6月13日
-
【注意報】りんごに果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 岩手県2025年6月13日
-
SBS輸入 3万t 6月27日に前倒し入札2025年6月13日
-
米の転売 備蓄米以外もすべて規制 小泉農相 23日から2025年6月13日
-
46都道府県で販売 随意契約の備蓄米2025年6月13日
-
価格釣り上げや売り惜しみ、一切ない 木徳神糧が声明 小泉農相「利益500%」発言や米流通めぐる議論受け2025年6月13日
-
担い手への農地集積 61.5% 1.1ポイント増2025年6月13日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】生産者米価2万円との差額補填制度を急ぐべき2025年6月13日
-
井関農機 国内草刈り機市場を本格拡大、電動化も推進 農機は「密播」仕様追加の乗用田植え機「RPQ5」投入2025年6月13日
-
【JA人事】JA高岡(富山県)松田博成組合長を新任(5月24日)2025年6月13日
-
【JA人事】JAけねべつ(北海道)北村篤組合長を再任(6月1日)2025年6月13日
-
(439)国家と個人の『食』の決定権【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年6月13日
-
「麦とろの日」でプレゼント 東京のららぽーと豊洲でイベントも実施 JA全農あおもり2025年6月13日
-
大学でサツイマイモ 創生大学と畑プロジェクト始動 JA全農福島2025年6月13日
-
JA農機の成約でプレゼントキャペーン JA全農長野2025年6月13日
-
第1回JA生活指導員研修会を開催 JA熊本中央会2025年6月13日