米国産牛肉 輸入量拡大も SG発動基準厳しく 日米合意2022年3月25日
農林水産省は3月24日、日本政府と米国政府との間で継続されてきた日米貿易協定に基づく牛肉セーフガードに関する協議が実質合意に至ったと発表した。セーフガード(SG)の発動条件を厳しくしたことで米国産牛肉の輸入量が拡大する可能性がある。
日本政府は昨年3月18日、米国からの輸入牛肉が日米貿易協定に基づく輸入基準量を超えたために30日間のセーフガードを発動し関税を引き上げた。
日米貿易協定ではSG発動を米国に通知するとともに、「発動水準を一層高いものにするために協議を開始する」ことがサイドレターに盛り込まれている。SGを発動しにくくするよう基準数量の引き上げなどを協議するもので、日米両政府は昨年3月25日から協議を開始した。
今回の合意内容は、米国へのSG発動は米国と豪州などTPP11締約国との合計輸入量がTPP11の発動水準を超えた場合に発動する仕組みを導入すること。その場合、米国からの輸入量が日米協定で決めた米国単独の発動水準を超えることを条件とする。
一方、米国単独の発動水準は現行水準(TPP11発動水準の約39%)を維持する。TPP11と米国を合わせた牛肉輸入量に占める米国の割合は2018年41%、19年40%、20年44%で発動基準を超えているため、政府は米国単独の発動水準を変更しなかったことが歯止めになるとみる。
ただ、このルールでは、米国単独の発動水準を超えても、TPP11の発動水準を超えなければSGが発動されない場合もある。この場合は翌年度に限り、その輸入数量を発動水準として引き上げる。この措置は2026年度までだが、米国産牛肉の輸入量の増加につながる可能性があるともいえる。
また、この仕組みは2028~32年度での四半期ごとのセーフガード発動にも適用される。発動基準量は4分の1として季節変動を勘案して決める。
日米貿易協定では協議期間は90日間とされており、その期限は昨年の6月16日だった。しかし、米国が米国単独の発動水準の引き上げを求めたのに対して、日本は牛肉輸入量はTPPの範囲内が前提。米国は相当な難色を示し、「立場に大きな隔たりがあった」(農水省)がために協議に時間がかかった。
結果的に米国とTPP11を合わせた発動水準を超えなければ発動されないため、「米国の立場では、SGを発動しにくくなったと捉えることができる」(外務省)とする。日本にとっては米国を含めたTPP水準を維持することができたことから、国内の牛肉生産への影響をTPPの範囲内で収めることができるとの立場だ。
日米貿易協定で合意した関税削減やSGを発動する場合の期間などは変わらない。今回の合意内容を日米貿易協定の改正議定書として政府は国会に提出、国会承認を経て発効することになる。
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