食品偽装はなぜ起きた? 業者間取引に規制を2013年12月13日
10月下旬、阪急阪神ホテルズが食材を偽装していたことが発覚すると、すぐにほかの大手飲食店やホテルなどでも同様の問題が相次いで明るみに出た。これら一連の偽装問題の本質はどこにあるのか。JA全農食品品質・表示管理部長の立石幸一氏は「産地から食卓までの情報伝達の仕組みに問題がある。新しいルールを即刻つくるべき」と提言している。
立石部長は11月29日、衆議院「消費者問題に関する特別委員会」に参考人として出席し、意見陳述を行った。その内容について12月6日、食品表示を考える市民ネットワークが主催するメディア懇談会で解説した。
(写真)
報告する立石部長
◆新食品表示法、27年に施行
いま、生産や流通の現場に求められているのは「農場から食卓までの正確な情報伝達」だ。
平成25年4月に成立した新食品表示法は、それを実現するための法律ともいえる。
これまで食品表示のルールは厚労省の食品衛生法、農水省のJAS法などが混在していたため、「現場で混乱」があると同時に、「本当に情報が必要な消費者には、何も知らされていなかった」のが実情だった。しかし、食品表示法によりそれらの諸制度・基準が一本化されるため、「これまでできなかった制度もできるようになる」。
現在、2年後の27年の施行に向けて準備がすすめられているが「必要な情報がすべて消費者の元に届くよう、全食品のトレーサビリティを法制化することが必要だ」と提言している。
◆業者間取引に抜け道
相次ぐ食品偽装は、このような新しい法律の成立をうけ、業界全体でルールの再構築に向けて動き出しているとき、現行の制度・基準にある抜け道を悪用する形で行われた。
外食やインストア加工で、食品の虚偽表示が行われていたのは、「流通が複雑化し、信用取引が限界になった」にもかかわらず、「(現行の)JAS法では、これらの業者間取引には原材料表示などの情報伝達の義務がない」ことが要因だと指摘する。そのため、「消費者にわからなければいい、という心理がモラルの低下を引き起こした。もはや性善説は通用しない」。
生鮮品や加工品の業者間取引は、20年4月のJAS法改正で、一般消費者に直接販売されるものについてはその表示が義務化された。しかし、業務用や外食・インストア加工向けの販売、業務用製造業者と卸売業者との原材料取引には表示義務はなく、“努力義務”が課されただけだった。
新しい法律では、こうした抜け道を改正し、「(業務用にも)表示義務の適用範囲を拡大」することが、再発を防ぐ有効な手段となる。
例えば、生鮮品では名称と原産地、加工食品では名称と原材料名、製造業者の氏名・住所、などの情報伝達義務を課すべきだというのが立石部長の主張だ。「(こうした情報伝達は)今でも当たり前にやっている業者も多い。やる気になればすぐできる。しかし、ルールがないせいで、それを逆手に取る人間が出てくる。食品表示法の施行は2年後だが、今すぐ基準を改正しても何も問題はない」。
◆農場から食卓まで 正確な情報を
立石部長が、さらに改正を要すると強調するのが、加工食品の原料原産地表示だ。
JAS法では、平成15年に加工食品の原料原産地表示について、「原産地に由来する原料の品質の差異が加工食品としての品質に大きく反映されると一般に認識されている品目」で、さらに、その原材料のうち「単一の農畜水産物の重量の割合が、50%以上」というルールがつくられた。
このルールのせいで、現在、加工食品で表示が義務化されているのは乾燥キノコ、茶、豆、コンニャク、塩蔵魚介・海藻類など「加工度が低く生鮮品に近い」22食品群のみ。つまり、このルールをクリアした多くの加工食品は表示義務を免れており、「国産原料が使われていないにもかかわらず、国産原料で製造したと消費者に誤認させているのが実態」だ。「このルールがある限り、加工食品の原材料表示は拡大しない。これをすぐにでも廃止すべきだ」と強調した。
(関連記事)
・インタビュー立石幸一・JA全農食品品質・表示管理部部長(2013.09.20)
・米国でGM食品表示法制定の動き(2013.04.25)
・なぜできない? 原料原産地表示の拡大 食品表示一元化問題(2012.09.20)
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